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主という名の化け物

カサ、カサ、カサ。

遠くのほうから、何かをひきずるような、ひっかくような音が聞こえた。

その音は、徐々に近づいてくると、部屋の前で止まった。


キイィ。嫌な音をたてて、扉が開いた。

そこに、あの女よりも、一回り以上、大きなカマキリがいた。

カマキリに似た化け物といったほうがいい。


女と違って、全身は鉛色の硬い殻で覆われている。

鈍色の金属のようにも見える。

おぞましいほど、殻の上にびっしり生えた絨毛。

顔はところどころひび割れ、カマは女のものより大きく鋭かった。


その姿を見て、女が「主様」と小さく叫んで立ち上がった。


その瞬間、化け物は躊躇なく、その鉛色のカマで女の胴体を搔き切った。

「ヒィッ」と笛がなるような音が聞こえて、女の身体が真っ二つになった。

切られたあとも、女の身体は小さく動いていた。その眼は

「なぜ」と問いかけているように見える。


二つに割れた女の身体から緑色の体液が流れ出ていく。

ほんの少し前まで言葉を話し、息をしていた女は

次第にただのモノへと変容していく。


カゲは微動だにせず、その様子を眺めていた。


「なぜ、わしを怖れぬ」

カゲは黙ったまま、主の眼に視線をやった。

「その目、見覚えがある。凪いだ海のような目だ。

ああ、そうか。お前がカゲか。何年も前に死んだと聞いていたが

生きていたとはな。面白い。まさか、こんなところで、

本物の死神に会えるとは思っていなかった」


「なぜ、殺した」カゲが低い声で問うた。なんの感情もこもらない

水が流れるような口調だった。


「理由はない。ここは生命の町、バースだ。生命は円環をなす。

個々の生命に理由などない。いずれ、お前にもその意味が分かるだろう。

ゲームは明日だ。お前に会えて光栄だ」










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