バニティ 7
ルキアとカイトはカゲの攻防戦を尻目に地下の食糧庫へ向かった。
途中、ルキアがランプを手に取ると、素早く灯りをともした。
薄暗い食糧庫の片隅の床板をルキアは力任せにひきあげた。
「うわっ」床下に黒々と広がる空間を見てカイトは小さな声をあげた。
「静かに。行くよ」ルキアはカイトの唇に指をあてて黙らせると、
床下に続く階段を降り始めた。
カイトも恐る恐るついていく。
「後ろの床板を閉めて」ルキアが振り返ってカイトにささやく。
「わ、わかりました」カイトが慣れない手つきで床板を元に戻した。
穴の中はしんと静まり返り、暗闇の中、ルキアの持つランプの灯が
ちらちらと揺らめいていた。
「待って」カイトの心細げな声を聞いて、ルキアが手を差し伸べた。
少し冷たい掌を、カイトはぎゅっと握りしめた。
危険な、怖いことばかりだ。
長く続いた緊張感のせいか、不意に涙があふれそうになる。
「少年。大丈夫だよ」ルキアが優しく声をかけた。「私がいるんだから」
息も乱さずルキアは駆け抜けていく。
途中、道が二手に分かれているところが数か所あったが、
迷うことなく、道を選んでいった。
「広いんですね」
「追手をくらますためにね。道をいくつも作っているんだ。
ちょっと狭くなるよ」
そう話すと、横穴に入りこんだ。
ほふく前進でしばらく進んだ後、鉄の梯子を2メートルほど
登った。
「頑張って。もう少しだよ」
「あと、どのくらいですか?」
「このまま東へ二キロくらいだよ」ルキアがにっと笑った。
唇の間から綺麗な白い歯が見えた。
そのとき、遠くの方からガサガサと不穏な音が聞こえてきた。
穴倉いっぱいに広がるような、背筋が寒くなるような嫌な音だ。
「まさか」ルキアが振り返った。
そこには、人の三倍の大きさはあろうかという巨大なムカデの姿があった。




