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バニティ 5

カゲは、窓から身を乗り出すと、静かに剣で自分の腕を切りつけた。


部屋の中に侵入しようとしていた兵士のカマに、滴り落ちた血が

わずかにかかった。


じゅっと音をたてて、兵士の硬い甲殻に小さな穴が開いた。


勢いよくカマを振り上げていた兵士が、ぎょっとして動きを止めた。


「ひ、ひええっ。熱い、熱い、熱い」


地面に落下して、のたうち回っている。


その様子を見ていたカマキリたちが息を呑んだ。


「あれが、毒の血か」


カゲは、外に出て暗闇の中に立つと、

滴り落ちる己の血を剣に塗りたくった。

そのまま、ぎろりと兵士たちを睨みつける。


カゲは、一瞬、怯んで後ずさったカマキリたちを見ると

「10……いや15ほどか。藪の中に隠れている連中がいるな」

凄みのある低い声で言った。


「大量に血を浴びないかぎり、すぐに死ぬことはない。

怯むな!奴を討て!」

高らかに声をあげたのは、かつてバースでカゲと対峙し敗れた

兵士だ。


そのかけ声を皮切りに、いっせいにカマキリたちが襲いかかった。


カゲは軽く右足を退くと、身体の正面に剣を構えた。


藪の中から矢が放たれた。それを軽くよけると

右下から斜め上に剣をふるい、一直線に兵士の身体を切り裂いた。


一瞬のことに何が起こったか分からぬように大きく目を見開き、

兵士は崩れ落ちた。


それと同時にカゲは膝を落とし、

背後から首を狙って振り落としてきたカマをよけ、

振り向きざま、兵士の腹に剣を突き立てる。


「懐かしい」

カゲは、ふっと笑うと、舞うように剣を引き抜いた。


飛んでくる弓を剣で薙ぎ払いながら、

「次は誰だ」

ゆらりと兵士たちのほうに振りむいた。


すでに数匹の兵士は戦意を失って、逃走しようとしていた。


その時「俺だ」と前へ出たカマキリがいた。

バースで戦った、あの兵士だ。



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