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娼婦ルキア 4

カゲは、ゆっくりと身体を起こした。


煙草の煙をくゆらせているルキアの顔を真正面から見つめると


「なぜ、分かった?」と尋ねた。


ルキアは、唇を細く開けてふう~っと煙を吹きだして


「見えるんだよ、あたしには。なんていうか人の生命力の色みたいなものがね。

意識のない人間は、透明に近い水色みたいな色をまとっている。

あんたは、そんな色じゃなかった」


カゲの眼が一瞬、訝し気に光った。


ルキアは手元の煙草をぽとりと地面に投げ落とし、つま先で軽く踏み消した。


「さてと、あたしは森の奥に白蜜茸を採りに行くけど、あんたたちはどうする?

そのずぶ濡れの格好じゃ、バニティには入れないよ。

まあ、どちらにせよ、あんたらじゃ入れそうにないけどね」


「バニティ?そんな国ありましたか?」カイトが不思議そうな声を出した。

「僕の記憶だと、バースに隣接していたのは確か……科学の国フロンティア……」

アークにいた時に学んだ知識をたぐりよせる。


ルキアは片方の眉を軽くあげ、興味深そうな表情でカイトを見た。


「へえ。よく知ってるね。その通りだよ。あの国は、最先端の技術を持つ

科学立国フロンティア。でも10年ほど前、ある遺伝子工学の研究者があの国に

招聘された。彼の研究テーマは、人間の寿命をつかさどる遺伝子。

時間遺伝子の存在はずい分前から知られていたけれど、彼はそれを

コントロールする方法を見つけ出した。

簡単に言えば、人間を限りなく不老不死の状態に近づけることに成功したってわけ。

まだ、完璧じゃないけどね。

それからだよ。あの国に、バニティと呼ばれる立ち入り禁止区域が出来たのは。

今では、あの男はバニティの王とも呼ばれている。お偉くなったものよ」


ルキアは男を侮蔑するように鼻で嗤った。

そして、その話を身を乗り出して聞いているカイトの様子を見て


「少年は、ずい分と興味があるみたいね。良かったら、うちで泊まっていく?」と尋ねた。


「いいんですか?ぜひ、泊めてください。その話、もっと詳しく知りたいです」


カゲは腕組みをして、少し渋い表情をしている。


ルキアは、面白そうに軽く口角を上げると、


「それじゃ、決まり。あんたたち二人も白蜜茸を採るのを手伝ってもらうよ。

夕食は、熟成ベーコンと白蜜茸のスープにしよう」

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