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深海の都 12

メガロドンだ。

カイトは、息を呑んだ。

確か、メガロドンは鋭い歯を持つ最凶の捕食者と呼ばれていたはず。

頭の中を恐怖がぐるぐると渦巻く中、カイトは懸命に

図鑑で読んだ知識を思い出していた。

そう。だが、メガロドンは絶滅した。

その理由は、確か、ひどい偏食だったからと書いていた。

だから、きっと、人は食べない……はず。


そう言い聞かせながらも、足元から嫌な予感がしんしんと

立ち昇ってくる。

汗が背筋を伝っていくのが分かった。


そうとも限らないじゃないか。


否定したくとも、その思いが泡のように浮かんでくる。


ここは人魚様の作った幻影の海だ。


なぜだろう。


僕は、あいつに噛み千切られグチャグチャされて喰われる


そんな映像が頭の中で繰り返し点滅している


メガロドンが巨大な体躯をわずかに動かしただけで

水はうねり、カイトは衝撃を感じた。


に、逃げなきゃ。


カイトは身を翻し、階段を登りはじめた.


恐怖で足は、がくがくと震えていたが、手すりを掴み

力まかせに進んでいった。


メガロドンは一瞬の静止の後、尾びれを大きくうねらせて

カイトめがけて、一直線に突進してきた。


メガロドンが口を大きく開けるのと、ほぼ同時に

カイトはのけぞって、階段を転げ落ちた。

浮力に支えられ、大きなケガはなかったものの

脛をしたたかに打ちつけた。


転がり落ちてきたカイトを誰かが抱えあげ、

壁の隙間にひっぱりこんだ。


その瞬間、メガロドンの身体が大きく痙攣して

真っ赤な血が海中を染めた。


鮮烈な赤の向こうに剣を持った男の姿が見えた。


ざんばらな髪とゴーグルの向こうに見える冷徹な眼差し。


男は刀を斜めに構えると、目の前で苦しみのたうち回る生き物に、

一切の関心も同情も持たぬ涼しげな瞳のまま、ひと息に切りこんだ。


カゲだ。


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