表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/71

不条理 4 

「ボイドさん、ボイドさん!死なないでください。

ボイドさん」


止血を終えても、なお腕に巻き付けた布からボイドの血液は

染みだしてきた。

その唇は血の気を失って、紫色に変わっている。


「うわああああああああああ」カゲは、天を仰いで咆哮すると

足元に転がっていた剣を取り、ボイドに致命傷を与えた剣士のもとに

跳躍した。


「殺してやる、殺してやる、殺してやる」

我を忘れて大声で叫ぶと、苦しみにのたうち回る剣士に

致命傷を与えようと、剣を高く振り上げた。


その時、

「やめろ」と低い声が空気を切り裂いた。


ボイドが半身を起こして、カゲを制した。


「やめろ、カゲ。もう、いいんだ」


もう一度、低くはっきりした声で言うと、ボイドは力尽きたように

意識を失った。

白い服を着た人が数人やってきて、無言のままボイドを担架に乗せ

運び出した。


誰かがカゲの横にやってきて


「立ちなさい。いずれにせよ、ボイドは明日、殺される」と言った。


「嘘だ」


「嘘じゃない。ボイドは、もう31だ。剣士としての寿命は長くなかった」


「どうして?ボイドさんは、きっと治る。あれぐらいのケガ、すぐに治して

また闘いに出られる!」


「だが、これがこの都の掟だ。致命傷を負った剣士は屠殺される。

売られてきた瞬間から、君たちはヒトだけど、人間ではないんだ」


ヒトだけど、人間ではない


その言葉に虚を突かれた。


ジャア、オレタチハ、ナンナンダ


不条理


ボイドの言葉が頭をよぎった。


「いいかい。いつだってこの世界は不条理なんだ」


チメイショウヲオッタケンシハ、トサツサレル


「人は、誰しも何らかの天命を受けて生きている」


ボイドハ、モウサンジュウイチダ


カゲの頭の中で、様々な言葉がよぎり、煮えたぎる感情で

ぐちゃぐちゃになりそうだった。


不条理! 不条理だ!


声をかけた誰かがカゲの肩に手を置いた。


「さあ、もう帰りなさい。今宵がボイドと過ごす最期の夕べとなるだろう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ