表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/71

訓練

あの人の剣技は美しかった。

一切の動きに無駄がない。

シュッと空気を切り裂く小さな音がしたかと思うと、

目の前の敵は薙ぎ払われていた。


風を舞うようなボイドの闘い方は、都の誰も真似ることができず、

それゆえ彼はもっとも人気の高い剣士であった。


「あいつは、狼州の砦からやってきたからな」

と誰かが話しているのを聞いたことがある。


「ロウシュウ?」カゲが問うと


「狼の住む砦だ。狼州の部族は、幼い頃から狼と走り

狼と戯れ生きている。ゆえに、風のように舞うことができ

獣のように音もたてず人を襲うことができる」


ボイドの動き方をマスターするために、カゲは徹底した

基礎訓練を受けた。

始めの半年は、剣を握ることも許されず、ひたすら

体幹を鍛えるトレーニングが続いた。

毎朝、陽が昇るより早く起床し、ボイドとともに

数十キロを走った。

速さについていけず、膝を落としてうずくまると、

短い竹の棒で立ち上がるまで叩かれた。

走り終えると、身体を作るために、大量の肉を食べさせられた。

疲労のあまり胃が受けつけず、何度となく吐き戻したが、

ボイドが同情を寄せることはなかった。


「君はできる子だよ」

相も変わらず陽だまりのような穏やかな瞳で、

彼は地獄のようなトレーニングを次々と課した。


筋力トレーニング、スクワット、柔軟性を高めるためのストレッチ。


あまりにも短期間で過酷な訓練が行われたため

カゲの身体は時折、悲鳴をあげた。

意識を失ったカゲの身体をボイドは軽々とかかえあげ、

治療をほどこした。


半年がたった頃、カゲは初めて己の剣を手渡された。

ずしりと重い鉄の剣は不思議なほど手にしっくりとなじんだ。


「よく頑張ったね。途中で逃げ出したり、死んでしまう子もいたけれど、

君は最後まで生き残った。これで君は一人前の大人だ」


その日、カゲは12歳の誕生日を迎えた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ