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半日がたった。

泉の水を口に含ませながら、様子を見ていたが

少年の熱は下がらず、まだ峠を越してはいないように思えた。


水だけではダメだ。

何かもっと栄養のあるものをとらせなければ。


キーッと鳴き声をあげて、鼠らしき小動物が走る気配は感じたが、

恐らく今の少年の身体では、それらの肉を受け付けないだろう。


地上でいうならば果物のようなものがいいのだろうが

ほとんど陽のささぬこの場所で手に入るあてもない。

洞窟の外に生えているコケやシダの中に代替するものが

あるだろうか。

だが、失敗して消化できぬものを与えてしまえば、

容態は悪化する一方だ。


八方ふさがりだ。


カゲ自身も空腹を感じ、手足を投げ出して冷たい地下に寝転がった。


もう、どうだっていい。

どうせ酔狂で救った命だ。

ほうっておけば、あのカマキリの餌食になり死ぬだけだったもの。

この俺が、こんなに必死になって助ける義理なんてない。

馬鹿馬鹿しい。


そして、瞳を閉じて、少し眠ろうとしたところ、

はるか上方から細かい羽音が聞こえてくることに気づいた。


なんだ?

虫か?


カゲは、息を殺して耳をすました。

細かく羽の擦れ合う音。小さな虫の大群。

この音は以前、どこかで聞いたことがある。


蜂だ。


カゲは目を見開いた。


蜂がどこかにいる。

そうか。この天井には亀裂がいくつもある。

そこから地上の蜂が出入りしているのに違いない。


カゲは薄明かりに照らされた天井に目を凝らした。

左上のくぼみに何か壺のような形の塊が見えた。


あれか。


小ぶりながら蜂の巣のようだ。

蜂の巣があるなら、蜂蜜がとれるはずだ。


カゲは、泉の水をすくい、ごくごくと飲み干すと

すっくと立ちあがった。

そして、刀を抜き、己の身体に細かい傷をつけ、

その血を全身に塗りたくった。


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