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少年とカゲ 2

少年の身体が熱い。

カゲは、肩に担ぎなおした小さな身体が確実に衰弱してるのを感じた。

いつ、こいつらに捕縛されたのか、どうやって奴らの手から逃げ出したのか

わからないが、そう長い間、収監されていたわけではあるまい。


カゲは目の前の巨大なカマキリを見ながら、右足をじりじりと後ろに退いた。


本来ならこの程度の虫けら、一網打尽にするところだが、

闘いが長引けば、少年の命が尽きるかもしれない。


そんなことを気にするなど、俺らしくもない

だが、なぜだか、この命の灯を消したくないと思った。 


「おおおおおおおおおお」

カゲは低く太い声で咆哮をあげた。


虚を突かれた兵士の一瞬の隙を狙って、血まみれの剣で

その大きな複眼を狙い打つ。


「くっ」

小さな叫び声をあげて、兵士は己の身体をそのカマでかばったが

猛毒の血しぶきが彼の身体のあちこちに飛び散った。

ジュウと音を立てて、固い甲殻が焦げた。


カゲは、少年を担いだまま、二、三歩助走をつけ

右足をバネにして大きく飛びあがった。

自分の1.5倍の身長はある兵士の身体をやすやすと越えていく。


「とらえよ。奴をとらえよ」

甲殻を焼かれ、怒り狂った兵士が叫び散らした。


カゲの前にいたやや小柄な兵士たちが五体ばかり

いっせいにとびかかってきたが、

カゲはしなやかに剣を左から右へ横一直線に振り払うと

彼らの胴体を真っ二つに断ち切った。


そして再び大きく跳躍すると、闘技場の門の外へと

風のように走り抜けた。







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