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少年とカゲ 

そのとき、一人の若い兵士がカゲの前に立ちふさがった。

他のカマキリよりも一回り大きく、甲殻に毛羽立つ絨毛も

鋼のように尖っている。

全身の細胞が力にみなぎっていて、大きな複眼が光を

宿している。


こいつは俺よりもヒトのような眼をしている。


カゲはふとそう思った。


兵士は

「お前の血が猛毒だというのは本当のようだな。

かかえているヒトの子が、お前の毒にあてられている」


「そうだ。こいつは弱ってるから、特にひどいな」

小脇にかかえた少年の身体が、部分的に軽い火傷を

起こしている。


ここから出るのに、時間がかかれば死ぬかもしれない。

だが、そのときはそのときだ。

どうせ、俺は今まで数えきれないほどの人を殺してきた。

今さら、一人の命が救えなかったからといって、どうということもない。

弱ければ死ぬ。

自然の摂理。ただ、それだけのことだ。


兵士は、不思議そうに触覚をピクピクさせると

「それを分かっていて、なぜそのヒトの子を連れていく。

今すぐ、そこに転がして立ち去れば、なんの面倒もないものを」


そうだ。なぜだろう。

俺は死神だ。いつもならば躊躇なくこんな子ども捨てていくのに。

だが、何かが気になる。

こいつの声が喚起させたあの映像。

それのせいか。


カゲは黙って、剣のつかを握りなおした。


「ほう」

兵士は、足を落とし低く沈み込むと

胸もとに両腕のカマを構え戦闘態勢をとった。

ギチギチという威嚇が口元から響いていた。


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