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闘技場 2 

カゲは、右腕を高くかかげると、ヒグマの顎を肘で受け止めた。

聴衆のどよめく声が響きわたった。


カゲの腕から血がほとばしり食いちぎられたかと見えたその瞬間、

噛みついたヒグマの動きが止まった。


闘技場の誰もがカゲとヒグマの動きを凝視していた。

カゲは、ゆっくりとヒグマの口の中に剣をつっこむと

そのまま一気に剣を引き下げた。


口から喉、体躯にかけ真っ二つに切り裂かれたヒグマは

うめき声ひとつあげることなく、崩れ落ちた。


血だらけの右腕を軽く振ると、何ごともなかったかのように

カゲは剣を鞘におさめた。


「俺の勝ちだ」


くるりと踵をかえすと、カゲはざんばらの前髪の奥から

死神のような瞳で聴衆を見上げた。

そして主に向かい

「おい。カマキリの化け物。約束通りだ。俺はゲームに勝った。

自由にさせてもらう」


肘から滴りおちる血をなめようと集まってきた鼠たちが

血だまりの周囲でバタバタ亡骸と化していた。


「おお。おお」

カゲの様子を見ていた主が、恍惚に震えていた。


そばにいた兵士が

「主さま。これはどういう」


「死神だ。やつは本物の死神だ」


「あのヒグマはなぜ、あんなにあっさりと?」


「分からぬのか。毒だ。あやつの血は猛毒そのものなのだ。カゲよ。愉快だ。愉快だぞ」

主は両手のカマを高くかかげ、興奮して叫んでいた。


カゲはくるりと踵を返すと闘技場から立ち去ろうとした。

まるで、散歩でも行くように、いつものなんてことない日常だと言わんばかりの

風体でゆったりと立ち去っていく。


「待て」「止まれ」

行く手を遮ろうと兵士たちが鋭いカマで威嚇したが、

カゲは、当たり前のように、ゆったりと剣を振るい彼らを胴の部分から

真っ二つに切り離していく。


ざんばらの前髪の奥にある双眸の光にカマキリたちは潮が引くように

道を開けていった。


その時、カゲは自分を呼ぶ小さな声に気づいた。

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