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闘い 1

カゲは微動だにせずヒグマの眼を見返した。


グルルルルル フウッ 

低いうなり声だけが静まり返った闘技場に響いていた。


観客は、食い散らかされた兵士の死体と空腹で猛り狂ったヒグマを

固唾を呑んで眺めている。


その中で、カゲだけがいつもと変わらぬ涼しい目で

まるで他人事のようにヒグマの様子を眺めていた。

そして静かに、ひどく無感動にカゲは腰の大剣を抜くと

両手で構えた。


照りつける太陽のもと、一人と一匹は対峙していた。

それは一瞬にも永遠にも感じられるような時間だった。


先に動いたのはヒグマの方だった。

自らの大きさによほどの自信があったのか、立ち上がると

両腕を大きく広げ、カゲの上から飛びかかった。


カゲは、ヒグマの動きを目で追うと、静かに

一分の無駄もない動きで、真下からヒグマの心臓を突き刺した。


グエェェェェ 

この世のものとも思えぬ断末魔の叫び声を上げた。

ヒグマが悪魔のような形相で、心臓に刺さった剣をふり払おうとした。


観客席で観覧していた主が

「外したか?」とつぶやくと、隣にいた従者が

「いえ、恐らくヒグマの厚い脂肪にはばまれて届かなかったのかと」

と進言した。


カゲは剣を構え直すと、大きく右足で地面を蹴った。


「なるほど。不自由な左足を使わず右足だけでジャンプしたか。

愉快、愉快」主は水差しに口をつけて上機嫌に嗤った。


カゲは、血を流しながら逃げ惑うヒグマを素早い跳躍で壁際に追い詰めていく。


追いつめられたヒグマが壁のところで振り返った。

血走った眼が、覚悟を決めたように座っている。

グオオオオオー 天高く咆哮すると一目散にカゲへ突進し

剣を持つカゲの右腕に噛みつこうとした。




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