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東方異譚録〜万の神人紡ぐ糸〜  作者: 金柑太郎
序章〜物事の始まり〜【オリキャラの導入】
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五話 こんなはずじゃ無かったのにぃ!

どうもこんにちは、金柑太郎です。やっと幻想入りですね。もともとノートに書いてたのですなくして全て消えました。後今回駄文が多いです。

「はぁ、はぁ。」


 暑いそして痛い、苦しい。さっき車から飛び降りた後、俺は来た方向へと戻り、田園の横を走っていた。


「痛っ。」


 慣れない革靴での運動なので当然犬斗の足は靴ずれを起こしていた。鉛のように重くなった身体を引きずるように必死に足を踏みしめ前へ前へと進んでいる。

 こんな所で捕まるわけにはいかない。ここで捕まったら俺のしたことはなんなんだ。いよいよ世の中の警察も腐ってきている。

 後ろに振り向くとさっきのパトカーは工事車両を追いかけていったようだ。


「とりあえずあそこの住宅街までいくか。」


 そしてまるで高校生の持久走ようなスピードで走り出す。俺はどうしたら良いんだよ。






 ふっ、と視界が暗転するとそこに青年の姿は無かった。何も知らない小塚は何事もなかったかのような澄まし顔で前を見ている。一方俺はといえば、あんぐりと口を開けた間抜け面で近づいては離れていく街路樹のスダジイただただ見つめているだけだ。数秒間が空く。


「ちょっと行ってくるわ。」


 手を車のドアにかけシートベルトを反対の手で外す。カチッと外したときの音が耳に入ったのだろう、小塚がふっとこちらを振り向く。


「ちょっ、ちょっと!先輩なにやってんすか!」


 小塚は慌てて片手をハンドルから離し俺の袖を掴む。バランスを崩しながらの片手運転なため車が不安定になりユラユラと揺れる。それはかの有名な、藤◯ゾーンではなくただの運転ミス。超絶な運転で速くなるということもなく、サスの柔い軽自動車はグラグラと揺れる。


「先輩いい加減にしてください!」

「まじで危ないんスよ、スピンして下手したら死にますよ。」


 それにも構わず片手でドアのレバーを引く。バンっ、ドア開示時のみ光る車内ライトがオレンジ色に輝く。


「まさか先輩外に飛び降りようとしてんすか⁉運悪かったら骨数本いきますよ!」


 小塚が袖を引く力を強めるがもう引くわけにはいかない。


「離せよ‥。」


 ギンっと目を見開き小塚を睨みつける。小塚には悪いが離してもらわなければならない。

 小塚はひっ、と小さい悲鳴をあげ袖を離す。

 なんで俺は後に引けなくなっているんだろう。自問自答してみる。あんなおちょくられた逃げ方をされてムカついてるていうのもあるだろうし、警察官としてのプライドもあるだろう。熱くなって周りが見えなくなっているってことは自分でもわかっている。

「ぜってぇ逃さない。」

 怖い。けど逃げていられない。グッと足に力を込め身体を外へと放り出す。当然そのままスタっと着地できるわけも無く、慣性の法則によりそのまま歩道をゴロゴロ転がる。転がりながら身体のあちこちから痛みを感じる。10メートル程転がると、やっと勢いが止まりヨロヨロと起き上がる。

 

「痛てぇ‥‥。」


 身体のあちこちに打撲や擦り傷があるが骨が折れなかったのは不幸中の幸いだったのだろう。小塚には悪いことをしてしまったが今は追いつくのが先決だ。


「指くわえてまってな。」


 警官は走り出す。傷だらけの身体を背負って。しかし警官の目はランランと輝いている。警官は走る、いや走るしか無かった。両手に青年を捕まえるという希望を大事に抱えて‥‥。






 「きちぃ‥‥。」

 あれから10分程走ってやっと住宅街の角に着いた。ここまでくれば大丈夫だろうと田んぼの端にある石に腰掛ける。


「足痛てぇ‥‥。」


 いったん革靴と靴下を脱ぐと、足首あたりにあるピンク色の傷口があらわになる。靴ずれだ。慣れない革靴で激しい運動をすればそりゃ靴ずれになるだろう。

 

「これからどこに行けば良いんだ‥‥。」


 少なくともここにはもういることは無いだろう。地元に戻るにしても、もう親はいないから行く宛も無い。田舎だな、田舎に行くに限る。どうせもう都市にはいられないだろう。そんな風に今後のことを肌寒い風に吹かれながら思案していると視界の隅に何か青いものが映り込む。疲れていたのだろう、最初は気にもとめなかったがだんだんとその物体が大きくなってくる。

 は?まさかそんなわけ無いだろう。車から飛び降りたんだぞ‥‥。ありえない。なんで、そこまでできる。何が根源なんだ。あの警官の絶望的なしつこさに半分呆れながらも焦って靴を履き走り出す。

 この時、犬斗の心情と警官の心情はまさに対になっていただろう。


「住宅街に入っちまえばこっちのもんだ。」


 住宅街の角を勢い良く曲がろうとしたその時、‥‥ドンっと何かにぶつかる。


「キャっ!」


 キャっ?どうやらぶつかってしまったのは人のようだ。続いて何かがドスドスと落ちる音が聞こえる。反射的に目を瞑ってしまったが目を開けると、そこには一人の倒れている学生らしき少女ともうひとり側でその少女を心配する金髪の少女がいた。

 あたりに散乱しているノートを見ると名前には宇佐見蓮子と書かれている。たしか大分県に似た名前の寺があった気がする。それにしても珍しい名字だ。他の開いているノートに目をやると、超弦理論【紐について】と書かれている。だいぶ難しい研究をしているようだ。

 ていうかこんなことをしている場合ではない、慌てて駆け出そうとしてふと足を止める。今ここで立ち去っては逆に怪しまれるだろう。ここはノートを全部拾ってから行くとしよう。


「すみません。」


 それだけ言いぱぱっとノートを拾って渡し、駆け出す。今のでだいぶ時間を使ってしまっただろうから、警官は確実に近づいて来ているだろう。このまま逃げ続けるのは得策では無いだろう。灯台もと暗しで隠れた方が見つからないかもしれない。

 あたりをキョロキョロとみまわすと、少し先にある神社が目に入る。なんとなくだが神社ってなにか入りづらそうだし、まさかここで隠れてるとは思わないだろう。


「今度こそさらばだ。」


 最後の余力を振り絞り全力ダッシュで神社に駆け込む。ここで犬斗は気づくべきであった、神社の鳥居に妙な御札が貼られているのに。中に入ると何だか身体がズシリと重くなった気がする。それが疲れなのか、はたまた別のものかわからないが今はそんなことはどうでもいい。


「念には念を入れとこう。」


 そして神社の脇を通り、奥の母屋の庭に駆け込む。はぁ〜、と安堵の溜息をはく。人の庭に無断に入り込むという罪悪感は多少あったが今はシャッターがしまっていて誰もいなそうなので今だけ居させてもらおうと思う。

 カチリ‥‥。そんな音が聞こえた気がした。




 ‥‥錆びついて噛み合わなかったはずの2つの運命の歯車がガチりと音を立てて噛み合う。ここに駆け込むのを最後まで見送っていた少女たちによって。

 



「よっこらせっと。」


 荒ぶった呼吸をおちつけると縁側に腰掛ける。ギシィという木のきしむ音と共に腰を後ろに倒し、伸びをする。


「それにしても何も無いな。」


 そうこの庭、余りにも何も無いのだ。まるで昨日即席で作ったみたいな花壇一つ無い庭でまるで人が住んでいる気配がない。そしてそのまま仰向けで目をつむり時がすぎるのを待とうとした時、まぶたの内側がふっと暗くなる。何かいるのか?と思い。目を恐る恐る開けると‥‥そこには、柴犬の顔がドアップで映し出されていた。


「うぉっ‼」


 まったく気配を感じなかったので驚き、1・2歩あとずさりする。


「いきなり現れると心臓に悪いなぁ。」


と呟きつつも、その柴犬の艷やかな毛並みに思わず息を呑む。そのモフモフした毛を触りたい衝動にかられ思わずゆっくり手をのばす。噛まれるかなと心配したが、犬は自分の指先をスンスンと嗅ぐといきなり膝に足をかけじゃれついてきた。


「ちょっお前、やめろってぇ〜。」


 表面だけは嫌がっているていを装いつつも口元はニヤけており、声は嬉々としていて喜んでいることは明白だ。両手で柴犬を羽交い締めにして優しくフワリと抱きしめるとモフモフが体中に押し当てられ天国に昇ってしまそうな心地だ。


「なんかおばあちゃんみたいな雰囲気だなぁ〜。」


 近くにいるだけで何だか安心する、まるでおばあちゃんだ。

 

「眠くなってきたわぁ〜。」


 色んなことがありすぎて忘れていたが、今日俺は土の上で寝ていたんだ。昨日のしごとの疲れが取れているわけもなく、眠くなるのは必然だろう。一眠りするか‥と柴犬を抱きながら再び目を閉じようとした時、自分の上にいる柴犬がけたたましく吠えだす。

 まさか警察か⁉と思って背を起こすとその犬は俺の来た方ではなく、家の中にに向かって吠えていた。


「何かあるのか?」


と聞いてみるも犬なので答えは返ってこない。物騒だが中に死体でもあるのか?犬は人間よりも数100倍嗅覚が良いという。自分じゃ気づかない異変に気づいていてもおかしくない。最低だが死体があったら、もし警官が来た場合警官はそっちに行かざる負えないだろう。俺に余罪が一つプラスされるかもしれないが。


「ちょっとぐらいなら大丈夫だよな?」


 そろりと窓に手をかけ中を覗こうとすると、窓の鍵は開いていてカラカラと小さな音を立てて窓がスライドする。中は木材でできた、いかにも和といった造りで木のいい匂いが立ち込めている。


「何か逃走に使えそうなものないかねぇ。」


と忍び足で中に入ろうとすると、犬は俺の足の裾を引っ張り必死に中に入らせないようにしてくる。こいつは何故か俺に忠犬だなぁと思いつつも


「ちょっとだけだから大丈夫だって。」


と家の中に足を踏み入れる。中に入ると奥の方から女の声が聞こえる。小声で喋っているのでなんて言っているかはわからない。何故か無性に気になった俺はそちらの方に歩を進める。部屋は全室畳部屋でマニフェストなのかというほどなにも無い。目の前の部屋からだけ光が漏れておりはっきりと声が聞こえる。誰かと会話しているようだ。


「ちょっと早く帰って来てくださいよ‼仕事が溜まってるんですよ‼」


「待って、これも幻想郷のためなのよぉ〜。なんとか人員を集めれば当たって砕けろでなんとかなるの。」


「そんなこと言ってまた現代で遊んでいるんでしょ‼紫さまの言うことは信用できません!ていうかまだ帰ってこないってことは見つからないってことですよね?ていうかこのこと他に聞かれてたらどうするんですか!」


「うるさいわねぇ。藍は神経質すぎなのよ。ここには人よけの札が貼ってあるし普通の人なら空き地に見えるようにしてあるから大丈夫よ。」


 なんの話をしているかわからないがここは退散したほうがよろしそうだ。そっと後ろに下がろうとすると、カタッと手が触れ音をたててしまった。

 やっべぇ〜。思わず背筋を伸ばして固まってしまう。しかし女は気づかなかったようでそのまま話を続けていた。


「いいから早く帰ってきてくださいっ!人里から新しい塩送ってくれって要望がきてるんですよ。」


「はぁ〜わかったわよ。もう帰るって。」


  ‥・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「‥‥丁度いい人材を見つけたとこだしね‥‥。」


 ぞわぁ、と体全身に鳥肌がたち、こちらを見る視線を背で感じる。自分では見てはいけないとわかっているのに否応なしに身体が勝手に後ろを振り向く。

 そこに立っていたのは金髪の女性で紫色のドレスを身にまとっている。その人から感じるのは‥‥

威圧、威圧、威圧、威圧、威圧。強烈な威圧。無理矢理でも上下の差をわからされてしまう。どうあがいても逃げれる気がしない。そして何よりも感じるのはこいつは人間ではないという確信だった。


「ちょっと協力を願いたいんですがぁ、よろしいですか?」


 断れない、断ることができない、俺はそのまま返事をしてしま‥‥、わなかった。どこからかタッタッタッと足音が聞こえてきてガタンッと窓が開かれた。


「やっと追い詰めたぞ‼」


「あっ。」


 瞬間警官は固まる。


「あらあなたも協力してくださるの?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「は‥はい。」


 声は半分震えていた。


「よかった。それじゃあ藍、二人確保ってことで面倒たのむわね。後、夕飯の準備しといてね。」


「まったく紫様はもう‥早く帰ってくださいよ。」


「ちなみに私は現代で有名な、ケーキ食べて帰るから。」


「え⁉ちょっとずるいですよ、私にも買って‥‥。」


  ブチっと音を立て通信が切られる。


「それじゃあ行ってらっしゃい。」


 にこっとその女は微笑んだ。


 最後に俺は警官に振り向いて言った。


「あのぉ、なんか‥‥どんまい。」


「二名様幻想郷にご案内で〜す!」


 女が指パッチンをすると、ぽっかりと下に穴が空き身体が中に浮きまたたく間に落下していく。その穴は無数の目で囲まれていて気持ち悪い。


 最後に

「だから言ったのに‥。」

と聞こえたのは恐怖からの気のせいだろう。

やっと現代編は終わりましたね。長くなってすみません。

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