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東方異譚録〜万の神人紡ぐ糸〜  作者: 金柑太郎
第一章 変わらない毎日【幻想郷の日常】
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二十六話 春雪異変・参

今回は早く投稿できたぞ。あと、スぺルカードなんですけど、この異変時点で登場していないものが存在しますが許してください。

 トンットンッとリズムよく石を踏む音が響く。上空から桜の花びらがひらひらと自分たちをよけるようにゆっくりと舞い落ちていく。おぶっている犬斗は先ほどよりも少し苦しそうな表情になっているが、息が上がっているわけではない。


「おい。そろそろ疲れたか。」


「いや、まだ大丈夫だ。ぶっちゃけ、疲れっていうより精神の方がきてるな。同じ景色ばっかでなんも代り映えしないし、なにより本当に目的地がこの上であってるのかわからなくなってきた。」


「紫が目的地を間違えるってことはさすがにないと思うが・・・。ゼロとは言い切れないのがなぁ。」


「あいつ、できるように見せてポンコツなところあるからな。」


 すると、さっきとは違いすぐ近くで大きな衝撃音がした。何かが地面に打ち付けられ地面がズズンッと地面がぐらつき、石段から小さな砂がパラパラと落ちる。この近くで戦闘が行われているのは明白だ。


「どうやら、紫の連れてきた場所はここであってたみたいだな。」


「じゃ、さっさと行きますか。」


 犬斗は腕まくりをすると、さらに階段を上るスピードを早める。そして数秒がたつと、俺たちの視界は大きく開けた。急に広がるこのだだっ広い空間に戸惑いながらも、俺たちの視界はその地面に広がる土煙に奪われる。さっきの衝撃によってできた土煙と思考が追いついたとき、土煙を割くように一人の少女が姿を現した。


「ちっ、すばしっこいやつめ。」


 そうその白髪の少女は、つぶやくと上空へと飛び上がる。その少女の手には二本の刀が握られており、彼女が戦闘中であることは明白であった。


「あいつが異変の元凶なのか?」


 犬斗はそんなことを聞いてくるが、俺にはどうもあいつが異変の元凶だと思うことができない。紅霧異変の時の異変の首謀は吸血鬼であった。なんて言ったらいいのかわからないが、異変の首謀者には圧があるのだ。周りを凌駕するような圧倒的オーラとでもいえばいいだろうか。しかし、彼女からはそのようなオーラを感じ取ることはできない。もちろん自分らが戦ったらボコボコにされることは分かっているのだが、どうにも余裕が無いように見える。


「あいつは、おそらく首謀者ではないんじゃないか。こういうのって首謀者は最奥で待ってるもんだろ。」


「たしかに。異変の首謀者がわざわざここで待っている意味なんてないしな。もしかしたら、異変の協力者とかか?」


 では、博麗の巫女はこの白髪の少女を倒した後に異変の首謀者をたたきにいくのだろうか。だったら、先に前に進んでいた方がいいか、とそんなことを考えていると大きな衝撃と共に、舞い散っていた土煙が晴れる。

 そこに居たのは二人の少女であった。白髪の少女と黄色髪の少女。その二人が一方は刀を、もう一方は

箒を手に、真ん中でぶつかり合っている。飛び上がり、星の弾幕と白い斬撃がぶつかり合う。何回もの小さな揺れが自分たちを襲い、そのたびに圧倒的迫力に押され、目を白黒させてしまう。ナマケモノも飛び上がるほどの弾幕ごっこが目の前で行われていたのだ。


「あそこにいるの博麗の巫女じゃないよな。」


 横から犬斗に声をかけられ我に返ると、再び黄色い少女の方に目を凝らす。どこかで見たことがあると思っていたら、紫に連れていかれた神社での弾幕ごっこで、博麗の巫女の相手をしていた少女であった。バナナのような黄色のロングヘアーで魔女の格好をしていたため印象深く心に残っている。


「あいつ、あれだよ。あのー、神社の弾幕ごっこで博麗の巫女と戦ってたやつ。」


「そういえばいたな。たしか博麗の巫女が勝ったんだっけか。でも紫の話だと、異変解決の仕事は博麗の巫女が担ってるって言ってたよな。」


「そうだったはず。でも、一人でやるのもきついだろうし協力してもらってるとか、そんなじゃないか?」


 まさか博麗の巫女一人に異変解決をやらせるというわけはないだろう。もし博麗の巫女を揺るがすような存在が現れたときに、一人で戦うというのは難しいに違いない。


「一旦、この戦闘が終わるまで待とう。白髪の少女が異変の元凶だという可能性は捨てきれないしな。」


 犬斗は、黙ってうなずくとそのままその場に胡坐をかく。確かにさっきまで男一人を担ぎながら階段を上っていたのだ。多少のだらけは俺がカバーするとしよう。


「弾幕にもいろんな種類があるんだな。」


 犬斗が膝に頬杖をつきながら、そんなことをつぶやいている。確かに、今まで弾幕というものはレーザー弾のようなものを想像していたが、刀から弾幕を出すことができるのか。なんかかっこいいな。自分も剣道をたしなむものとして少し興味はあるが、剣道は実践向きではない。剣道というルールが決められたうちではもちろん戦いとして成立するが、それが実践となると戦えるかは定かではない。


「あの白髪の方戦いずらそうだな。やっぱ、剣は間合いを取られると戦いにくいんだな。」


 今度はそんなこと独り言ののように呟いているが、普段はあほばっかりするくせにこういうところでは頭が働くんだなと少し見直す。


「普段から、そんぐらい考えて行動してくれると助かるんだがな。」


 そんな一言をくれてやると、だるそうにへいへいと返事をよこして再び頬杖をついてだるそうにしている。こいつ絶対ミュージカルとか楽しめないタイプだな。そのまま、犬斗の方を見たまま一言二言話しかけていると、少女たちの方から凛とした叫び声が聞こえた。


「獄神剣 業風神閃斬!」


 その声と同時に、勢いよく振り返ると白髪の少女がスペルカードを発動していた。少女を中心として色とりどりの弾幕がまき散らされる。その放たれる弾幕の量に目をむくも、俺たちはすぐに回避行動をとっていた。体を上下左右に動かし、ステップで弾幕の隙間に体をねじ込む。犬斗のほうを見ると、跳躍して弾幕を避けたりしゃがんだりすることによって弾幕を避けている。弾幕を躱す間も、犬斗はずっと少女たちの方向を見ており、だいぶ余裕がありそうだ。

しかし、この弾幕は運動神経が犬斗に及ばない自分でも何とか避けることができている。普段の紫との訓練のかいもあってか、四方八方手当たり次第に放たれる弾幕は、意外と避けることができるように思われる。


「おい、犬斗。こんぐらいだったら俺達でも何とかなるかもな。」


 そう犬斗に問いかけると、ちゃんと見てみろと言わんばかりに顎をくいっと前へ出す。こっちは、そんな余裕ないんだよと言ってやりたかったが、何とか首を捻り一瞬だけ白髪の少女の方を見る。しかし、もともといた場所に少女はいなくなっており、どこに行ってしまったのか迫る弾幕のせいで確認することができなかった。


「ちょっと、お前余裕あるならどういう状況なのか説明してくれよ。こちとら、弾幕を避けるのでせいいっぱいなんだよ。」


「はいはい。白髪は弾幕に紛れて魔女を切ろうとしてる。これでいいか。」


 は?自分の弾幕に紛れて刀で切ろうとしてるってことか?そんなことが可能なのか。飛べるとはいっても上下左右360°すべてに気を配りつつ敵に攻撃を仕掛けるって、とんでもないことじゃないか。とてつもないマルチタスクと感性が求められる技に違いない。


「確かに、距離を詰めないと戦いづらいなら弾幕で相手の動きを縛って近づくってのは理にかなってはいるが、正気の沙汰じゃないだろ。リスクが大きすぎる。」


「あのレベルになると、リスクで測れる問題じゃないってことよ。あれくらいできて当然、今の俺たちがまだ半人前ってことだろ。」


 未だ余裕な顔でいる犬斗は偉そうにそんなことを言ってる。


「俺たちもあれになれんのかな。」


「さぁ?俺たちの努力次第ってとこじゃねぇか。」


 すると、大きな衝撃音と共に何かが壁に衝突する音が聞こえる。それと同時に白髪のスペルカードが終わり、あたりが急に静まり返る。パチンコ屋から出たときような何とも言えない喪失感と共に、再び少女たちに視線を向ける。見てみると、壁に衝突したのは黄色髪の方で動く様子はない。白い煙が綿あめのようにモワモワと立ち込めている。


「とどめです。」


 そう告げると、白髪の少女は白煙へと二刀を輝かせながら突っ込んでいく。決着か、そう心の中で呟いたとき、俺は少しの違和感を感じ取る。立ち込める煙がおかしな挙動をしたのだ。些細な違和感かもしれないが、なぜか俺はそこが無性に気になる。黄色髪の少女は本当に動けない状態なのだろうか。


「おい、犬斗これ・・・、」


犬斗に尋ねようとしたとき、俺の視界は輝く虹色の閃光に塗りつぶされた。



******


「人符 現世斬。」


 そのスペルカードの宣言を聞き、私は上を見上げる。迫る弾幕に咄嗟に結界を張り、その弾幕を防ぐも、煙で前が見えない。それを利用して、上から少女の刃が重ねて襲い掛かる。バチバチと結界が悲鳴を上げ体が下へと押しつぶされる。落下する重力も加わっているためか、押し戻すことができない。そのまま結界が破られ私に斬撃が直撃した。


「ぐほっ。」


 すさまじい衝撃と共に斬撃が体にめり込み、胃の内容物が出そうになる。慌てて口を押えるとそのまま横へ転がり少女の追撃を避けると、箒を片手にすぐに起き上がる。


「そんなにご飯を食べてこなくて助かったぜ。」


 動いた感じでは、どこかが特別に痛いというわけではなくなんとか動くことができそうだ。見たところ彼女も先ほどのマスタースパークでダメージが蓄積しているらしく、もう一発ダメージを与えることができればおそらく勝つことができるだろう。


「何か策を考えないとダメっぽいな。」


 再び箒に飛び乗ると、弾幕を張りつつ飛んでくる弾幕を打ち落とす。向こうも自分の方が体力的に不利だということをわかっているのか、さっきにもまして激しい攻撃を繰り出してくる。そのままお互いがぶつかり合い、あたりの煙が一瞬で晴れる。そして、再び飛び上がりお互いに攻撃を仕掛けあうもなかなか決着がつかない。


「このまま、弾幕を打ちあってもジリ貧か。」


 だったら、どうすればいいのだろうか。私としてもここで体力を使い切ってしまうのは少し不安がある。この後に伏兵でも来てしまったら、戦うことができない。そのような状況は避けなければならないだろう。


「こんなところで伸びてたら、霊夢に笑いものにされるだろうしな。」


 ここは、一発賭けるしかないだろう。その名も、やられたふり作戦。ただ単に相手の攻撃を受けたふりをして反撃するという実にシンプルな作戦だ。しかし、その攻撃を直に食らってしまうというリスクも存在している。


「まぁ、私なら何とかなるだろ。」


 その一言で、頭の片隅にあるリスクを吹き飛ばすと、そのまま私は飛ぶ速度を落としタイミングを見計らう。彼女が放つ渾身の攻撃でなければ彼女に油断させることは不可能だろう。


「次のスペルだな。」


 彼女が放つ渾身の攻撃といえば、やはりスペルカードであろう。彼女がどんなスペルカードを使ってくるかはわからないが、こちらをしとめるための攻撃であることは確かだ。少しずつ動きを遅くし反応を遅らせることで、あえて隙を見せ彼女のスペルカードを誘う。そして、こちらの隙に気付いたのか少女は目を見開きスペルカードを唱えた。


「獄神剣 業風神閃斬!」

 

 あたりに色とりどりの弾幕が咲き乱れる。目がちかちかするほどの弾幕の圧力に圧され、私は一旦回避を優先した。てっきりまた刀での攻撃が来るものであると思っていたが、予想に反して弾幕での攻撃であった。これはまた当たったふりが難しい攻撃が来たもんだ。一つの弾幕に被弾したふりをし吹き飛ばされても、他の弾幕にぶつかる可能性がある。


「そう簡単にはいかないってか。」


 さぁどうする。私の作戦では刀が接する瞬間に結界を張り、衝撃に紛れてわざと壁にぶつかるというものであったが、それは難しい。すると、飛んできた弾幕に紛れて気づかなかったが、白髪の少女がすぐ目前にまで迫っていることに気付く。まさか、この弾幕は私の目を欺くための布石だったのか。

 ここで私の何かが吹っ切れた。


「もうやるしかねぇな。」


 これは賭けだ。もう弾幕にぶつかろうが、知ったこっちゃねぇ。もう私にできることは、目の前の少女を欺くことだけ。どうあがいて、今から逃げ出しても結局結末は変わらない。


「なっ!?」


 精一杯の演技と共に、手を前へと突き出した。

 彼女の動きがスローモーションのようにゆっくり動いているように見える。私めっちゃ集中してるなと頭のどこかで思いつつ、刀が私に触れる瞬間を見極める。


 ドーンッと、大きな衝撃が私を襲い白煙が舞う。彼女の斬撃を防ぐことができたことを確信すると私はそのまま後ろへと吹き飛ばされる。不思議と弾幕にぶつかるとは思わなかった。


「かはっ。」 


 私は背中を打ち付ける大きな衝撃と共に、ぶつかったのが弾幕ではなく壁であることを理解する。どうやら私は賭けに勝ったらしい。あたりにはもうもうと煙が立ち込めており、私が動いていることを見事に隠してくれる。そのまま私は八卦炉に魔力を注ぎ、彼女がこちらへ追撃を仕掛けてくるのを待つ。八卦炉がバチバチと唸り、私はスペルカードの宣言の準備をする。


「あなたの負けです。」


 煙の向こうからそんな声が聞こえた。運のいいことに、少女が近づいてきていることがまるわかりだ。そして煙を切り裂くように彼女が掲げた刀と共に姿を現す。そんな少女は、こちらを見ると目を見開きこちらへと焦ったように刀を伸ばした。しかし、その刀は届かない。


「私の勝ちだ。」


 彼女に勝利宣言を告げて、スペルカードを宣言する。


「魔砲 ファイナルスパーク!」


 極太のレーザーがとんでもない轟音と共に少女の体を飲み込む。あたりが虹色に染まり、貯められた魔力が一気に解放される。マスタースパークよりも大きな衝撃が自分に伝わるも、霊夢よりも先に異変を解決するという思いが私の腕を支える。

 そこから数秒後、そのレーザーは徐々に萎んでいき、再びあたりに静寂が訪れた。吹き飛ばされた彼女の刀を取り落とす金属音のみがあたりに響く。


「お前強かったよ。」


 素直な感想が口から漏れ出てその場に座り込む。上を見上げ、少しの間感傷に浸る。


「星も出てねぇのかよ。寂しいな。」

 

 そんな言葉は静寂へと溶け、彼女の息遣いのみが聞こえている。その息遣いが、この戦いが終わったことを表していた。

次が出るかはわかりませんが、以前よりは早く投稿できると思います。

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