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東方異譚録〜万の神人紡ぐ糸〜  作者: 金柑太郎
第一章 変わらない毎日【幻想郷の日常】
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二十四話 春雪異変・壱

久しぶりだ・・。やっとだ。

「おかしい。」


 時は4月。もうすでにウグイスの鳴く声が聞こえてきてもいい頃合いなはずなのに、その兆しは全くない。むしろ、体を刺すような冷たい空気が蔓延しており、真冬といった感じである。外は未ださんさんと雪が降りしきっていてとても外に出れる状況ではない。結果、こたつにくるまりながら過ごす日々に少し飽き飽きしながらも結局こたつの中にいるそんな毎日が過ぎていた。


「幻想郷にも異常気象ってあるのか?地球温暖化の影響かもな。」


「こんなこと今までなかったわよ。まったく寒いったらありゃしないわ。って、私のスペース取らないでよ。」


「はぁ?お前が無駄にでかいからだろうが。そのセリフはもっと痩せてから言いな。」


「はぁ?大妖怪の威厳見せたろか。二度とその口をきけなくしてやる。」


 いつものように煽られてキレているのは紫である。この紫の屋敷に住んでいる5人が、いつも小さいこたつに皆入ろうとするので大体いざこざが起きる、とは言ってもだいたい揉めてるのは犬斗と紫だが。


「大妖怪が何だか知らねぇが、最近俺も成長してきてるからな。慢心していると足元掬われるぞ。」


「あら、昨日同じこと言って負けたのはどこの誰かしら。」


「うるせぇ。BBAはさっさと隠居しな。」


「殺す・・・。」


 勢いよく、犬斗と紫がこたつから飛び出していったため、ようやく伸び伸びとくつろぐことができる。向かいで、やれやれといった表情をしている藍はミカンを片手に茶をすすっている。


「まったく毎日毎日、疲れないんですかね。」


「いつも、あの二人だもんな。まぁこっちのスペースが増えるから万々歳なんだけど。」

 

 でも犬斗の成長スピードは意外と侮れないのかもしれない。最初の何もわからなかった頃より犬斗は成長している。紫にはかなわないにしろ、ようやくこの世界の戦い方がわかってきたようだ。未だ弾幕を打つことができていないが、その他の体の使い方や立ち回りはかなり良くなっている。


「犬斗さんは別に良いかもしれないけれど、紫様には賢者としての威厳というのがないんですかね。もっと、落ち着いていてほしいものです。」


 藍は、はぁと溜息をつきながら後ろにバタッと後ろに倒れる。


「そろそろ、私ご飯作ってきます。」


 右手で頬杖をつきながら欠伸をした命は、ご飯を作りにこたつから立ち上がると、台所へと向かっていく。


「命、今日の夕飯は何だ?」


「いつも、そんな感じでこたつにいるんじゃなくて、兄ちゃんも手伝ってくれてもいいんだけどね。」


 皮肉ったらしい顔を浮かべながら命は出て行ってしまった。ここまで言われたら、手伝いに行きたい気持ちでいっぱいだが、いかんせん寒すぎる。マジでここから一歩も動きたくない。


「そんなこと言っているあいだにも隣はドンドンうるさいわけだが、いい加減やめい!!」


 とは言ってもあの二人には聞こえていないようで、じゃれあいが終わることはない。


「何言っても無駄ですよ。今までずっとそうだったんで。」


「寝ようにもうるさくて寝れないんだが。」


「こたつで寝ると風邪ひきますよ。」


 そんなことをダラダラとしゃべっていると、ひときわ大きい衝撃音と共に犬斗がゴロゴロと地面を転がり縁側に身体を打ち付けだらりと脱力してしまった。


「やっと終わったか。ったく見てるこっちの気持ちになってくれよ。おーい、起きろー。」


 声をかけるも犬斗は目を覚ます様子はない。


「ったく、毎日毎日しつこいわね。私には勝てないってわかりきっているくせに。」


 眉間に皺をよせながら苛立ちを隠せない紫は、再びこたつに入ろうとこっちに向かってきたが、


「毎日挑発にのってしまう紫さまも紫さまだと思いますけどね。」


 と、藍が紫にぐさりと刺さる一言を告げ、


「そもそも紫がそんなボリュームのある服を着なかったら普通に全員がこたつに入れるんだが、そこのところはどうお考えですか。」


 と俺がさらに追い打ちをかける。二人の言葉に、ここには自分の味方はいないと気づいたのか決まりの悪そうな顔でそのまま体を反転させ、


「私ちょっと行くとこできたから。」


 と、隙間の中へと消えていった。


「これで本当に静かになったな。」


「はい・・。」


 ズゾゾと藍が茶をすする音のみがまったりとした空間に響き、なんだか眠気が強くなってきた。小一時間ほどこたつに入ると否が応でも眠くなってくるものだ。こたつで寝ると風邪ひくんだっけ。まぁ、めんどくさいからいいや。そのまま、自分の意識は泥沼に嵌ったかのようにずぶずぶと眠りへと向かっていく。


「事件よ!!」


 ガタンッと勢いよく開け放たれた障子によって、自分の意識は再び覚醒へと引き戻される。この声は紫か。一時間ほど前に出ていったのに、こんなでかい声で何なのだろうか。


「What's wrong?」

 

 そう聞き返すと、


「はぁ?よくわからない言葉でしゃべりかけないで頂戴。そんなことより、異変よ異変。さっさと出かける準備をしなさい。」


「異変?それで、あの時みたいにまた見に行かなきゃいけないってこと?寒いから外に出たくないんだけど。」


「そう、じゃあこの寒さの原因が今回の異変だって言ったらどうする?」


「は?この春が来ないのが異変なのか?まあ確かにおかしいけど、そんな大規模なことが・・・、いや前回も大規模だったか。」


 春が来ない、考えただけでも寒気が止まらない。俺はこのまま、炬燵にとらわれて生きることになるのかと考えると既に寒いのに余計背筋が冷たくなってきた。


「でも、博麗の巫女が何とかしてくれるんじゃないの。」


「それを超えるのがあんた達の仕事でしょう。」


 目が裂けんばかりに目を見開きながらしゃべる紫を見ていると、普段はあまり感じない大妖怪としての圧を感じた気がして俺は自分の重い腰を上げることにした。


「はいはい、わかりました。行けばいいんでしょ行けば。で、場所はどこなんだ?」


「冥界よ。」


「冥・・・界?」


 これでも幻想郷入りしてから経ってかなりの年月が経っている。外に出ることはなくても話を聞いたり、資料で見たりしてたいていの場所は知っているはずだ。冥界?エジプト神話で冥界の神オシリスなどがいた気がするが、そのたぐいだろうか?」


「まあ、幽霊がいるところよ。」


「幽霊・・・。」


 幻想郷に来てから、この手のものに慣れてしまったのかあまり驚くことはなかったが、幽霊・・・ちょっと見てみたい気もする。


「まあ、とにかく詳しくは現場で話すことにして、さっさとそこで寝てるバカを起こしなさい。」


 先ほど外で伸びていた犬斗は・・・、外に放置したままだった。まだ伸びている犬斗の身体には雪が積もり始めていて、寒さで青白くなってしまっている。やっべ、と思いつつも揉めたのはこいつが原因なので自業自得だと思うことにした。


「おーい、起きろー。」


 頬を軽くたたいてみるが起きる様子はないので、井戸で水を汲んでぶっかけると


「おぶすっ!」


 と大きな声を出しながら目を覚ました。


「俺は何をして・・?」


 犬斗は突然の状況に困惑いるようだったが、少しでも寒い外気に触れる時間を少なくしたいので


「はい、いきますよー。」


 と、引きずって紫のもとへと連れていく。


「紫、連れてきたぞー。」


「やっとね。はぁ、じゃあ準備はいい?」


「ああ、バッチ来いって感じだ。」


 目の前の空間が裂け、その場所へと向かう隙間が現れた。これまでまでののんびりとした雰囲気が、何も知らない犬斗を残してピリッと張り詰めるのを感じ取る。


「あなた達の姿はもうすでに他人から見えなくなっているわ。前も言ったと思うけど、触れられたらばれるから気をつけなさい。」


「お前は今回もいないのか?」


「私にも色々事情があるのよ。迎えには適当なタイミングで行くから安心して頂戴。」


「なあ、これってどういう状況?」


 犬斗の邪魔が入ったがこれ以上話すことはない。さっさと、行っておわらせるに限る。


「じゃあ、行ってくる。」


「頼むから死なないで頂戴ね。こっちにも色々あるんだから」


 さっきから、色々とうるさいなと思いつつも片手で犬斗を引っ張りながら隙間の中へと入る。フッと地面を踏みしめる感覚がなくなり浮遊感のみを感じるが、もう慣れたもんである。


「いっちょやりますか。」


***


「寒い。」


 そう一人で呟いたのは、博麗の巫女こと博麗霊夢である。いつまでも長ったらしく続く冬の寒さにやられ、隙間風だらけの社務所でこたつにくるまっている日々が続いている。


「この時期に雪なんて、今までなかったのに。」


 寒さのせいか、誰も遊びに来ないので暇で暇で仕方がない。頭ごとこたつに埋めると、はぁと溜息をつきながら今後について考える。正直言って、この寒さでは少しの参拝客すらも来ない。だから生活の頼みであるお賽銭はもらえるわけでもなく、支出のみがかさむばかりだ。このままでは飢え死にしてしまう。自分の干からびて魚の干物みたいになってる姿を想像し、より一層こたつの中で体を丸める。猫はこたつで丸くなる。どうやら人間も猫と同じだったらしい。


「まるで、天変地異。異変みたいね。」


 異変?自分が無意識に発した言葉が妙に引っかかる。いままで私が生きてきて、こんな春があっただろうか。ましてやこんな急激に変化するなんてことがあるのだろうか。


「まさか異変?」


 持ち前のセンサーがビンビンと反応している。これは間違いなく異変に違いない。そんな確信が沸々と沸騰した夜間のように湧き出てくる。正直言って迷惑ったらありゃしないが、久々に大仕事って感じで体がうずいてきた。


「思い立ったらすぐ行動ね。」


 私は勢いよく障子を開け放つ。私の勘はよく当たるのだ。とりあえず適当に辺りを探してみることにする。


「マフラーと手袋をしてと。」


 できる限りの防寒対策をして私は空に飛びあがった。


「いってきます。」


 誰にも聞かれることのない声が、白に染まった空に溶けてゆく。こうして始まった、博麗の巫女の異変解決が。


***


「咲夜。部屋が寒いのだけれど。」


 真紅の玉座に肘をつきながら、母親にものを頼む子どものように足をブラブラさせ、メイドへと声を掛けた。その玉座と態度のギャップが何とも言えない残念な雰囲気を醸し出している


「只今確認してきます。」


 そう右膝をつき、主へと服従を誓うメイドは、銀色の髪にきちっと整えられたメイド服を着ていて、厳粛な雰囲気を醸し出している。そのままメイドは一瞬の内に姿を消した。


「はぁ、どうしたらいいんだか・・。」


 紅魔館のメイド長である十六夜咲夜は、屋敷全体を温めるストーブの前までくると、とんでもない事実に気づいてしまった。もう燃料がないのだ。外はこの時期なのに、相変わらず雪が降り続いている。このまま燃料がなければ屋敷丸ごと凍えてしまうことになる。


「元凶をたたくしかないか。」


 この雪は明らかに何かしら人為的に起きているものに違いない。たった一年でこんなに冬が長くなることなんてあるわけない。


「もしかしたら、もう博麗の巫女も動いているかも。」

 

そのまま自室に向かい自分のナイフを大量に持つと、レミリアに断りをいれて外に出る。赤いマフラーと、白い雪とのコントラストが彼女の凛々しい赤眼をより輝かせる。そのまま紅魔館のメイド、十六夜咲夜は雪の降り積もる木々の中に消えていった。



後半文が少し雑になってしまいましたが、許してください。

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