二十三話 不安と期待
遅くなってすまん
「お~い。起きなさーい。起きなさいってば。」
どこからか声が聞こえる。女・・・少女か?
「いい加減起きろ!!」
バシャっという音と共に冷たい感覚を覚え飛び上がる。
「ひえ!?」
来ていた服がべったりと体に張り付き思いっきり顔面に水をかけられたのだと少し経ってから気づいた。しかし、いかにして私は水をかけられることになったのだろう?ふとそう思い辺りを見回すと、自分の真後ろに立っている少女に目が釘付けになる。
赤と白の巫女服に赤色の髪飾りをつけた私より少し小さいぐらいの少女が立っていた。その現実離れした姿に私は呆けてしまう。
「あなた名前は?」
いきなりそう聞かれたことによってはっと我に返り、
「コスプレイヤーか・・なんかですか?」
と質問に質問で返してしまった。
「コスプレイヤー?何よそれ。ていうか私の質問に答えなさいよ。」
「す、すみません。寝ぼけてたので・・。」
高圧的な彼女の態度に怯み、おどおどしながら自己紹介をする。
「私は言楽鮮華です。学生です。」
こんないかにも怪しい人に情報を与えすぎるのは良くないと思ったので詳しい学校名や個人情報は教えなかった。だって明らかにおかしい。目が覚めたら変な格好をした人間が話しかけてくるなんてバラエティー番組のドッキリでもない限り明らかになんらかの他意があることは間違いないだろう。
「私は博麗霊夢、この神社の巫女をやってるわ。言楽鮮華‥‥ねぇ。あんた現世の住人でしょ。」
「は?現世って日本のこと?」
「いや、現世は現世よ。」
この女の子は何を言っているのだろう。私は死んだのだろうか?死後の世界をあの世、生きている世界のことをこの世ということは知っている。しかし、なんで私は死んだのだろう。私が目覚める前の記憶を必死に思い出そうとすると、ズキッと頭に痛みが走る。ありがちなやつかよ・・。
「なんで私は死んだんだろう。」
思わず口にだすと少女はやりにくそうに手をひらひらとさせながら、はぁとため息をつきこういった。
「いやいや、あんたが死んだわけじゃないわよ。」
「じゃあ現世って何ですか?」
「現世っていうのはあなたがもともと住んできた世界とでもいえばいいかしら。人々に忘れられたものが流れ着く幻想郷それがここよ。」
…意味としては分かるのだが、いまいち理解することができない。つまりここは異世界?てきなところってことか?そもそも今の話で行くと私は忘れられてしまったということになるが、本当なのだろうか。
「なんかパワーワードばっかでよくわかりませんでした。」
「あー、私ってこういうの苦手なのよねぇ。」
とぼりぼり頭をかきながらぶつぶつとつぶやいている。
「あんた、紫色のドレスを着た女を覚えてない?なんか見た目はナイスバディーのくせに中身はおばさんの奴。あと傘持ってる。」
紫色のドレス。そう聞くとなんだか見たことがある気がしてきた。私はたしか…じいちゃんと地鎮祭にいって森の中で女の人に・・・。
「やっと思い出した。私、帰らないと。」
早く帰らないと、じいちゃんを心配させてしまう。じいちゃんの面倒を見られるのは私だけ、あの年で日常生活をすべて自分でこなすのは難しいだろう。おそらくここは異世界的なものだ。にわかにも信じ難いが、今自分が夢でも見ていない限りこれは現実のことだ。
「そう帰りたいのね。じゃあ紫じゃなくても私が戻してあげるわよ。」
私よりも小さそうなこの少女にそんなことができるのだろうかと一瞬考えたが、世の中生まれ持って生まれた才能だと散々学校で学んできたので口に出そうとした言葉は引っ込んだ。
「ったく、紫の奴は何を考えてるのかしら。こんな忘れられてもいない少女をさらってきて。」
「私は忘れられてここにきたわけじゃないんですか。」
「たぶんね。おそらく紫の仕業だと思うわ。こちとら昨日異変で疲れてるのに面倒な仕事を増やしてくれたわね。」
紫?その名に心当たりはないが、流れ的にあの紫の女だろうか。金髪で、見たときは異彩を放っていたが気づいたら地面に穴が開いて、気づいたらここだった。確信犯だろう。
「異変って何なんですか?」
ふと気になったので聞いてみると、
「紅魔館のバカ吸血鬼どもがね、空に真っ赤化にしてくれやがったのよ。ったく、めんどくさいったらありゃしないわ。おまけに妹まで大暴れしてくれちゃって。まぁ簡単に言えば反乱?と言ったらいいのかしら。」
とまたまた彼女は大きなため息と共に肩をがっくりと落とす。なんて言ったらわからないが、最初は怖そうな人だと思っていたけど案外かわいそうな人なのかもしれない。
「反乱?まぁ、別に知る必要もないか・・。」
でも、ふと考える。このまま帰っていいことなんてあるのだろうか。ただただ保健室に行くだけの毎日、自宅ではじいちゃんとだけ話してあとはやることもなくゴロゴロするだけ。進路について悩んで鬱屈な気分になり、不安になってものにあたってしまうこともある。
「はぁ。」
私からも大きなため息がもれる。私も結局同じかと内心苦笑しながら、それでもじいちゃんの顔を思い浮かべる。学校に行かなくても見限らず面倒を見てくれた、どんなに自分が辛くても自分を励ましてくれた恩はじいちゃんが内心どう思っていようと消えることはない。まぁかっこいい言葉で飾ってはいるが結局寂しいのかもしれない。
「さぁ、おしゃべりはおしまいよ。さっさと目を閉じなさい。」
よし、切り替えよう。さっさと戻ってじいちゃんに会わないと。そして私は目を閉じる。すると、後ろから聞き覚えのある声が凛と響いた。
「その子を帰してはだめよ。」
あの女の声だ。さっきまで周りに人の気配なんてなかったのにどこからやってきたのだろう。
「紫、あなたに聞きたいことがあるの。あなた、最近こそこそやってるみたいだけど何が目的なの?まさか賢者であるあなたが異変を起こそうとしてるんじゃないでしょうね?」
「いいえ、私はかわいそうな人間をこの世界に招待してあげただけ。まぁ今回は結構特殊な例だけどね。」
目を開けていいのかわからず、しばらくじっとしていてもあまり会話が進展する様子はない。このまま何もしないのもばからしいので、目を開け声のしたほうを見る。そこには例の紫の女がゆうゆうとでかい胸を張りながらそこに立っていた。
「なんで私をここに連れてきたの。」
見上げるような形で聞くと彼女はにっこりと笑いながら
「だってあなた現世なんて大嫌いでしょ。ここなら現世とは違って面倒くさい人間関係なんてないし、またりと過ごしていられるわよ。まぁ、仕事はあるかもしれないけど。」
「でも現世で私がいなくなったらいろんな矛盾が出てくるはずだけど?」
だって私がいなくなってしまったら行方不明届けが警察にだされて迷惑がかかってしまうかもしれない。そもそも私をこっちの世界に連れてきて何かメリットがあるのだろうか。
「そこのところは心配しないで頂戴。私にかかればあなたの存在をなかったことにするなんて簡単なことよ。」
「でもじいちゃんはただ一人残されて生活しているってことだよね?」
「それは私からしても謎なのよ。あなたのじいちゃん私たちの存在を知っていたみたい。私があの日あそこにいることもね。」
じいちゃんがこの女を知っていた?たしかに地鎮祭に行く前に意味深なことを言われたが、私が一人で生きていくことができるかってこういうこと?さすがにひどくない?
「ちょっと待ちなさい。紫、私からしたら何もわからないんだけど。」
「まぁ細かいことは気にしないでこの子はここに置いておいて、これは命令よ。」
「だってさ・・。私はあなたがいようがいまいがどうでもいいけどね、面倒くさいことは嫌だからとりあえずここにいてもらうことにするわ。」
「は?でもじいちゃんが・・。」
「それに関しては大丈夫よ、あなたがいなくなった分それに合うようにじいちゃん
のサポートをしてくれているはずだから。」
そんなこと言われたっていきなりここに住めと言われて、何も気にせず過ごすことができるほどおめでたい性格ではない。
「そんな不満げな顔しないで頂戴。住んでみると意外といいものよここでの生活は。」
「じゃ、とりあえずあなたはこの博麗神社にいてもらうことにするわ。でも家事はちゃんと手伝うのよ。」
そうして、私のここ幻想郷での生活が始まったのだった。
「もう、何が何だかわからないよ・・・。」
がっくりと肩を落とし、はぁと肺の空気がぜんぶ無くなるほどのため息を吐く。いったい私の生活はどうなっていくのだろうか。わからないが、とりあえず前に進むしかない。そんな決心と共に私は雲一つない空を見上げるのだった。
勉学が非常に忙しいため投稿ペースが非常に落ちています。今までは5000文字を基準として書き続けてきましたが今回みたいに文字数を減らして投稿することが増えるかもしれません。そこのところよろしくお願いします。




