表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方異譚録〜万の神人紡ぐ糸〜  作者: 金柑太郎
第一章 変わらない毎日【幻想郷の日常】
21/27

二十一話 お留守番

なんとか書けた。一回気持ち入ると書けるんだよなぁ。

 藍の部屋の中は思ったよりもたくさんのものが雑多に置いてあり、よくわからない書物で溢れかえっていた。普段の様子を見るに几帳面な性格だと思っていたが意外と自室は汚かったらしい。かといって食べかけの物が置かれていたりゴミが放置されているわけではなくて、色々な資料などが散らばっている感じなので不潔な感じはしない。


「こりゃ、調べるの大変だな。」


 机に乗せられた山積みの仕事を思い出し吐き気を覚えるが、なんとかこらえ足元にあった資料に手を伸ばし内容を見てみる。タイトルは油揚げの黄金比と書かれていた。内容を見てみれば、どの切り方や調理の方法が

一番美味しく食べれるのかと言う内容が事細かに書かれており、最終的にはそのまま食べるのが一番美味しいと記されていた。


「しょうもない内容だったな。」


 わぜわざまとめるものだろうかと疑問に思いながらも次の資料に手を伸ばす。


「なになに、油揚げはどのようにできてどのような影響を体に及ばすのか・・・。」


油揚げ好きすぎだろ。確かに狐が油揚げを好むというのは昔から物語などで伝わっているが、まさか本当だったのか。そのことに多少驚きながらも俺は呆れて大きな溜息を付いた。


「こんなことやってたら日が暮れちまうよ。」


 一枚一枚見てたら一生終わらないと思った俺は、近くにおいてあった紙の資料をガバっと一気にとり流し見していく。パラパラとめくっていくのだが、どれもこれもこの世界や俺たちに関係するような情報は書いておらず藍が趣味でまとめているようなものであった。


「やめだやめ。こんなとこ見てても何も出でこないだろ。」


俺は積んであった資料を諦め、机の上へと視線を移した。


「机の上だったらもっとマシな情報があるかもな。」


 そう誰もいない部屋の中でポツリと呟くと、資料をかき分け机の前へとやってきた。机の上は割と片付いていて普段ここで生活してるということがひと目でわかった。すると中央においてある一際厚い本に目がいく。表紙の角がくたびれていることから、この本がよく読まれているのがわかる。表紙には日記と書いていた。


「仮にも女性の日記なんだよな。」


 見るべきか見ないべきか、頭の中で二人の自分が喧嘩していたが、結局中を開くことにした。よくゲームとかでも情報を得るのはだいたい日記だったりするし。本を手にとって見るとずっしりとした重みが指にのしかかり、ゴクリとつばを飲み込む。

 表紙をめくり1ページ目を見ると、日付は俺たちがここに来る1ヶ月ほど前から書かれておりその日の飯のメニューや、仕事の確認事項など当たり障りのない内容が記されている。そのままペラペラとめくっていくと、ふとした内容に目が止まった。


「最近、4人の現代人を紫様が連れてきた。毎回紫様の自由奔放さにはとても飽きれるが、仲良く過ごせるといいな?」


「4人?」


 ここに来た現代人は俺と真弓、そして真弓の妹の三人だけのはずだが?ここに隠れているとしても俺たちはここに来てもう3週間が立つ。それに俺たちはずっとここにいるのだから隠れていたら流石にわかるだろう。


「わっかんねぇなぁ。」


そんなモヤモヤした気持ちを抱えつつそのままページをめくっていくもそれらしいことは書いておらず、自分も知っている日常の出来事や、他の人のエピソードが綴られていた。


「あとで真弓に言ってみるか。」


自分より紫や藍と話している真弓のほうがなにか知っているのかもしれない。そう思って俺は踵と返し部屋から出ようとすると、机に小指をぶつけてしまった。


「痛っ!」


半端じゃないほどの痛みが小指を襲う。足の指を見てみると、少し赤くなっており頭の中では骨折していないとわかっていても骨折を疑ってしまう。ひいひいと声を上げながらもなんとか立ち上がり片足立ちになって足を擦る。やっと痛みが収まってくるころに頭を上げると、ふと手をついていた本棚に目がいった。小難しい事が書かれていそうな本がさされている中、どこかで見たような言葉を見かけ、一冊の背表紙に目がいく。


「陰陽?」


 陰陽といえば平安時代などの昔にいた陰陽師などが思い浮かべられる。小さい頃にかっこいいなと目を輝かせたのを思い出す。興味が湧いたので突発的にその本を手に取り中身を見てみると、中は昔の仮名遣いでヘニョヘニョの文字で書かれている。読める部分はあるも、全てを読むことはできず何よりあまり自分に学がないので読める部分は少なかった。


「何か読んでみたいな。」


 昔想像した陰陽師のことを考えながらその本を手にとると、一冊分できた空きスペースにそこら変に置きっぱなしになっていた本を差し込む。藍の部屋にある本なんだから何かしら幻想郷で強くなるのに役に立つかもしれない。弾幕がなかなか打てない自分を強くしてくれるのではないか。そんな小さな希望を胸にいだきながら部屋をでた。するとちょうど玄関から紫の声がしてホッと胸をなでおろした。


「真弓早くしろ。」


そんなことを静かに言って、時間を稼ぐために玄関に向かった。


「紫。昨日は迷惑をかけたな。」


「まったく、調子に乗るからよ。」


「いやこっちとしては調子に乗っているつもりはなかったんだけどな・・・。」


「そう・・。それにしてもあなたから私に顔を出すなんて珍しいわね。普段だったらこっちから声をかけないとろくに返事もしないのに。」


「まぁ、それはなんとなく?」


「よくわからないけど、私をがっかりさせないで頂戴ね。これでも私数千年生きている妖怪なの。ただのその辺のお姉さんみたいに思わないで頂戴ね。」


 ジロッとこちらを見た紫の瞳をみて久しぶりに紫の妖怪の片鱗を見たような気がする。ゾワッと鳥肌がたつも自分の負けん気の強さのせいか


「BBAだろ。」


と言い返すことができた。


「誰がババアよ!!」


紫がキィーーと叫んだことでその場の空気が緩んだ気がしてようやく肩の力が抜ける。まったく勘弁してもらいたい。紫が勝手に連れてきたくせに使えないとわかったら切り捨てられるのか・・。なんか使い捨ての道具みたいでやだな。プンプン怒っている紫の言葉を適当に流しながらそんなことを思っていると、後ろから真弓がやってきた。おそらく自室に戻ってからここに来たのだろう、何食わぬ顔でここへとやってきた。


「おう紫、何してたんだ?」


「博麗大結界の管理よ。ったく最近あんた達がこの世界に来たせいで調整が難しくなってるのよ。」


「ふ~ん。俺にはわからない話だな。まぁ頑張ってとしか言えんわ。」


「それよりもあなたは久しぶりの休みを有意義に過ごせたのかしら?」


「いや有意義に過ごそうにもここにずっといるんだからすることもないし暇すぎて死にそうだわ。」


 こいつよくなんの動揺もなくスラスラしゃべれるよな。俺だったらもっと言いよどんで周りから疑いの目線が飛んでくる気がする。


「そろそろ俺たちも人里に連れてってくれよ。買い物ぐらいいいだろ?」


真弓がそう聞くと紫は眉にシワを寄せ頭の中で何かを考えているようだったが、自らの意思は硬いのか今までと変わらず紫の返事はNoだった。


「いや、それは認めないわ。あなた達を外に出すことはできない。買ってきてほしいものがあったらあなたの妹にでも頼みなさい。」


「こんなのただの軟禁じゃねぇか!」


「弾幕も打てないヒモ野郎は黙っていなさい!!!」


 グサリ、とナイーブな俺の心に言葉のナイフが突き刺さる。そりゃ打てるんなら打てるようになりてぇよ。でも、今の俺じゃ無理だ。霊力を制御するって言われてもあんな勢いで溢れてくるものを制御なんかできるのか?


「うるせぇ!!こっちは当たり前のことを言っただけだ。」


「はぁ、話にならないわね。藍〜、いないの〜?」


「藍は妹と一緒に人里で買い物だ。」


真弓は間髪入れずに答えた。でも俺はまだゆかりの言っていることに納得していない。このまま議論を続けようと、息を吸い込むと真弓が目でこちらを制する。喉まで出かかった汚い言葉を飲み込み、溜まったイライラが落ち着くのを待つ。


「お腹すいたー。」


 こっちは真剣に悩んでいるのに紫は無神経にもそんなことを言っている。あぁムカつく・・。なんで俺こっちに来ちまったんだろう。この前一瞬こっちのほうが良いなんて思ったことがあったが、それはこの軟禁状態を知らない時だ。常にこの軟禁状態でいさせられたら頭が狂っちまう。


「子供みたいな事言われても俺たちは何もできないんだよなぁ。まぁ、このまま立ち話するのも疲れるし俺は自室に戻ってるわ。」


「俺もそうするわ。」


「じゃっ。」


 真弓と俺は片手を上げその場から去る。一方紫は俺たちが背を向けると裂け目の中に消えていった。もしかしたら藍のことを呼びに行ったのかもしれない。紫がここからいなくなると今までピンと張っていた糸が切れたように肩の力が抜ける。


「お前はもうちょっと感情を制御できるようになれよ。紫の性格はここに来てもうわかったろ。」


「あんだけ煽られたら、買われた喧嘩は買わないと気がすまないだろ。」


「いやお前が喧嘩買っても瞬殺されるだけだろ。」


「うるせぇ。」


そんな事言われたってムカつくことはムカつくんだよなぁ。俺の性格上紫みたいなネチネチした性格はどうも苦手だ。何を考えているのかわからないのが怖いのかもしれない。


「まぁ、そんなこと置いといて互いの収穫を自室で共有しようぜ。」


「ぶっちゃけこっちほとんど収穫ないぞ。」


「まぁこっちから言いたいこともあるしな。」


そうして俺たちは二人元々の寝室へと帰っていく。そろそろ藍たちが返ってくることかもしれない。帰ってきたら命に人里やらの様子を聞いてみるか。そんなことを考え、俺は早く外に出たいなという今は叶わぬ願いを思いながら、はぁと大きなため息を吐く。



「で、落ち着いたところで互いの情報交換といこうや。こっちは結構色々あったぞ。」


「じゃあとりあえずほとんど収穫がなかった俺から話すわ。まず藍の部屋がめちゃくちゃ汚いということが一つ。あと、机の上にあった日記に不審な点が一つあってここに来た現代人は3人のはずなのに4人って書いてあった。俺から話せるのはこんぐらいかな?」


「ふーん。やっぱりなんか企んでるんだろうな。」


真弓は心あたりが無さそうに眉間にしわを寄せる。やっぱり紫は何かを隠している。苦手な性格だなと思っていたが、俺たちをここに連れてきた理由も話さないし嘘までついているとなると流石に疑わざるを得ない。


「次はお前の番だぞ。」


「わかってるって。まず、俺たちの存在は他には知られてはいけないらしい、ってことだな。詳しくは書いてなかったが、俺たちの存在は外には秘密にしておくらしい。」


「今までの紫の態度から大体は察してた。案の定って感じだな。」


「あとな、これから起きる異変ってのに毎回姿を隠して調査しに行かなきゃ行けないらしい。」


「まじか、前の空が赤くなるみたいなことが起きるってことか・・。まてよ、その時なら俺たち外に出れるんじゃないか?」


「そうだな。でもイコールそれだけこの前みたいな危険が伴うってことだ。俺たちも自分の身は自分で守れるぐらいに強くなっとかないと行けないってことだ。」


「でもよ、俺弾幕打てないぞ。」


「そこは根性で・・と言いたいところだが、別に弾幕が打てなくても俺はいろんな強さがあってもいいと思う。スペルカードルールがなんだか知らねぇが俺たちはこっちの住人じゃねぇんだから好きなようにやらせてもらおうぜ。」


「拳でってことか?」


 真弓は返事はしなかったが、ニコッと口角を上げた。


「俺に女を殴れってか?」


「実際お前紫殴ろうとしてただろ。」


「それは紫が何かムカついたからって、まぁいいか。できるだけ人と戦わないようにすれば良いや。」


「結局そうなるのか・・。」


これから先どうなるかわからないが、自分は自分らしく頑張れば良いのかもしれない。そんなこと思いつつ俺は布団にどかっと横たわる。


「頑張るしかねぇな。」

次も未定だが、よろしく!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ