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東方異譚録〜万の神人紡ぐ糸〜  作者: 金柑太郎
第一章 変わらない毎日【幻想郷の日常】
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二十話 人里にて

いやー、忙しかった。しばらく書けなくてすまん。

「藍さん、今日は何を買うんですか?」

今は私は藍さんに連れられて、人里に買い物に来ていた。以前に一度ここに来たことがあったがなんだか落ち着かない。その原因の一つとしては、この町並みだ。幻想郷は現世で忘れ去られたものが行き着く場所。そのせいかわからないが、町並みが昔なのだ。茅葺屋根の家や住んでいる人の格好。なんだか日本昔ばなしの世界に来てしまったような感覚だ。 


「今日と明日の食事分の食材と、その他もろもろだけど、今日は命にここのことをもっと知ってもらうために来たんだよ。」


「そうだったんですか!嬉しいです。ここにきてからあまり外に出れてなかったのでいい気分転換になりそうです。・・でもちょっと気になるんですけど、なんで兄ちゃんたちはここに来ちゃいけないんですか?」


「さぁ?ゆかり様がねぇどうしても駄目って言うんですよ。正直なところあの人たちもずっとあそこにいるのは辛いでしょうけどね・・。」


そんな事を話していると市場らしきものが見えていた。社会の教科書にのっていた定期市を思い出す。


「たしか荘園とかの近くであったんだっけ?」


 中学の頃の記憶だ、あまり覚えていない。そんなこんなで道を歩いていくと、街の建物の密度や人の賑わいが大きくなってきた。おそらくこのあたりが里の中心部なのだろう。


「この辺で一旦別れましょうか。二人でいても緊張するだけだと思いますし自由に羽を伸ばして来てください。甘味処とか、本屋とか色々ありますよ。ここには人間に危害を加える妖怪はいないから安心して楽しんできてね。」


 そう言うと、私の頭をポンポンと撫で、ある程度のお金を渡して藍さんは買い物行くべく人混みの中へと消えていった。


「どうしようかな?最近甘い物とかあんまり食べてないし、藍さんの言ってた甘味処にでも行こうかな?」

 

 そう思いあたり、近くの人に道を聞こうと歩き出す。


「おーう、そこの珍しい服を着た嬢ちゃん!今日新鮮なもんが入ったんだよ!ひとついらんかい?」


気の良さそうな農家のおじいさんがこちらに採れたてのほうれん草を勧めてくる。


「あ、ごめんなさい。ちょっと今は大丈夫です。でも後で私の連れの方が来ると思うのでその時にお願いします。」


「お!そうかい。こんなに美人さんの連れなんだから割引しちゃおうかな?」


「ちょっと、やめてくださいよ〜。」


 とても愉快なおじいさんだ。商店街の愉快なおっちゃんみたいな感じでこちらの心まで温まってくる。


「あ!そういえば甘味処って何処にあるかわかります?」


「甘味処ね・・。何処だったかなぁ?ちょっと待ってくれよ。」


おじいさんはボリボリと頭をかいて何かを考えている。そして何かに思い当たったのかしかめていた顔をパッと持ち上げ言った。


「思い出したよ。久しく行ってないが、ここから通りを真っすぐ行って右に行くとたしか甘味処があったはずだが・・。あそこらへんは酔っ払いが多い。こんな時間から飲んでいる人も少ないだろうが、一応気をつけて行きなよ。」


「本当ですか、わざわざありがとうございます!」


「良いってことよ。嬢ちゃんの頼みを無視するほどワシも老いとらんよ。」


そのおじいさんのニカっとした笑みを背にそこから離れると再び歩を進める。幸い時間はたくさんあるし、いつもうるさい兄ちゃんに邪魔されることも無い。色々見て回るかと、近くにあった服屋さんに足を運んだ。


「やっぱ着物っていいなぁ。」


 中に入るとやはり置いてあるのは殆ど和服で、他には華人服や外国の服など物珍しいものが少しだけ置かれている。服屋の特有のこのムワッとした雰囲気がとても良い心地で、小さい頃に母と買い物行ったのを思い出す。


「流石に高いなぁ。」


 おいてある値札を見てみるとどれも手にはとても届かなそうな値段だ。しかし、女子たるものこのまま現世の服装でいるよりも着物とか、かわいいものを着ておしゃれをしたい。


「何か小さい奴ないかな?」


 店内を奥へ奥へと進んでいき、自分の持っているお金で足りるものを探すことにした。


「かんざしとかでも良いから何かないかな?」


 売り物は段々と小物ゾーンとなってきてようやく買えそうなものが出てきた。そのまま数分がたちこれにしようかあれにしようか、と考えあぐねていると、グーっと自分の腹の虫がないた。


「迷っている時は買わないに越したことないって言うしね。お腹すいたし、また今度でいいや。」


 私は気が変わりやすい性格なのかもしれない。服屋を諦め店の外に出ると、眩しい日差しに手を被せる。


「だいぶ暑くなってきたなぁ。」


少しずつ日が昇ってきて気温が高くなっているのを肌で感じる。上を見上げていると、ドンっと私を押し退けるように不思議な格好した子どもたちが通り過ぎていった。後ろを振り返ってみれば青髪と緑髪の女の子たちだ。緑髪の女の子は後ろを振り返り、ペコペコと頭を下げてもう1人を追いかけていった。背中に翼を付け飛んでいる所を見たところ妖精だろうか?藍さんから聞いたが実際に見たのは初めてだった。やっぱり妖精は現世の物語みたいに愛らしい見た目をしているらしい。


「かわいいなぁ。」


子供って良いよね。純粋無垢で無邪気だし自分に正直だからそして何よりかわいいからだ。


「人里は見たところ人間の人しかいなそうだったけど、他に妖精もいたんだな。」


周囲の人々が彼女達をみてもなんにも驚かなかったことから特に珍しいことでも無いのだろう。今度また機会があったら喋ってみたいな。


「じゃあさっさと甘味処行きますか。本場の和菓子、早く食べたいなぁ〜。」


 そうして私は再び道を歩き出した。前回は緊張しすぎてあまり周囲を確認していなかったのだが、自分1人で歩いてみると色んな人がいると言うことがわかる。野菜を売ってる農家の人から、いかにも商人って感じのおじさんに杖をつきながら歩くお爺さん。さらには友達と遊んでいる子供達に気持ちよさそうに日向ぼっこする犬。

 現世ではあまり見るのことのできない活気がそこにはあった。


「やぁ、見かけない顔だね?ここに来たばかりなのかい?」


だらだらと道を歩いていると声をかけられた。凛と住んだ声音に背を伸ばしながら後ろを振り返ると、空みたいな青髪に青のワンピースを着た美人の女の人が立っていた。頭にはこれまた青の小さい博士帽のようなものを被っており、見るからに知性的な女性なのだとわかる。


「あっそうなんです。今から甘味処にでも行こうと思って。」


「そうか。やはり生きるためには糖分は不可欠だからな。ちなみにそこの甘味処は私のお墨付きだから期待しておくといい。まるで頬が落ちてしまったのかと勘違いするぐらい美味しいからな。」


「そうなんですか!?来てよかったなぁ。」


「じゃあ、私は生徒たちの面倒を見なくちゃいけないからね。慣れないこともあるだろうが頑張ってな。」


「はい!ありがとうございました。」


「ふふっ。」


そう笑って女の人はくるりと背を向けて近くの寺子屋と書いてある建物の中に入っていった。


「寺子屋の先生だったんだ・・。道理で賢そうだと思った。」


それにしても美人な先生だったな。名前だけでも聞いたほうが良かったかな?青髪ってだけでも他の人より目立つのに性格もきちんとしてるんだからさぞかしモテるに違いない。そんな人のお墨付き・・・。想像しただけでよだれが滝のように出て止まらない。


「より一層甘いものが食べたくなってきた〜。」


こうなってきた以上、もう足を止める気はない。何の寄り道もしないで、口の中に菓子を放り込んでやるんだ。


「よーし、ひとっ走りしますか。」









「命楽しんでくれてるかなぁ?」


 行きつけの魚屋さんで店主を待ちながらそんなことを呟く。人里に2回しか来てないのに一人にするのは早かったかなと少し後悔しつつもずっとあそこにいては息が詰まってしまうしかし今更そんな心配しても遅い。もう命は何処かに行ってしまっているだろう。


「優しい人ばっかだから大丈夫だと思うけどなぁ。まぁ慧音とか周りの人達が守ってくれるでしょ。」

そんなこと杞憂だったかと思い直し、店奥の方を見ゆる。


「おーい店長ー!まだ〜、ちょっと長くなーい?」


「大人しく待ってろよ!今ちょうどいろんな魚入ってきて忙しいんだよ!」


「うるせぇジジイ!こっちはかわいこちゃんが一人で待ってるんだよ。」


「はいはいわかったから、せめて黙っててくれ。お前さんが騒ぐと客がみんな帰っちまうだろ。」


そう言って、魚屋のおじさんは新鮮な魚を袋に入れてドカっと机におく。


「待たせたお詫びに一匹多めに入れといたから、これで帰ってくれ。」


「わかってる〜。じゃあまた来るから。」


おじさんにお礼を言って私はその場を去る。今のでわかったと思うが、やっぱりなんだかんだ言ってここの住人は優しい。

何も面倒ごとなく帰ってきてくれるといいんだけどなぁ。厄介ごとおこして紫様に叱られるのも面倒だし。そんなことを思いながら私は次の野菜売り場へと向かった。








 夢を見た。亀と兎がいて丘の上まで競争している。うさぎは当然早くて亀よりも早く飛び出していく。でも、亀は汗水をたらして進んでいるのにもかかわらずうさぎとの差は開いていく。そしてうさぎは立ち止まることもなく丘の上へと登っていった。取り残された亀は寂しそうにこちらに振り向きこう言った。

「おまえだ。」

と。

「はっ!?」と目を覚ましかけられていた布団をバサッと跳ね飛ばす。


「ブワッ!」

と何かが声を上げ悲鳴を上げるのが聞こえる。


「お前、流石に寝相悪すぎだろ。ていうかお前結構うなされてたぞ。」


そう言われて初めて自分がハァハァと荒い息をしているのに気づく。ベタッと嫌な汗をかき、額には脂汗が滲んでいる。


「その声、真弓か?」


「そうだよ。結局あれから修行もなくなっちまってよ。することもなく久しぶりに部屋でゴロゴロしてたんだよ。」


気だるそうに降り掛かった布団をどけると真弓はこちらを見て言った。


「実はさ、この屋敷に俺たち以外いないんだよね。」


しばしの間、二人の間に沈黙が流れ、なんとも言えない時間が過ぎていく。チッチッと廊下から聞こえる掛け時計の秒針がこの屋敷に誰もいないことをものがたっていた。


「まじ?」


「まじ。だから今のうちにあいつらの私室見れるんじゃないかと思ってな。」


 確かに今までこの屋敷には俺たち以外の人物が必ずいた。これはまたとないチャンスなのかもしれない。今まで、紫や藍からは詳しい事情をひた隠しにされてきた。何を企んでいるのか知るにはいい機会だ。


「それならさっさと行こうぜ。あいつらが帰ってきたら見れないだろうし。」


そうして俺達は他に誰かいるわけでもないのにコソコソと廊下を通って、二人の自室へ向かった。


「俺は紫の部屋を見るからお前は藍の方を頼む。普段の様子から俺たちのことは紫のほうが中心となって企んでると考えられる。俺は職業柄こういうのには慣れてるんでな。お前はあまり関与してなさそうな方に行ってくれ。」


「おっけーだ。」


二手に分かれ廊下をそれぞれ曲がる。藍・・か。俺はあまり彼女には不信感は抱いていない。だってご飯美味しいし、怖いときもあるけど優しいし何より顔に結構出るタイプだと思うからだ。


「失礼しまーす。」


障子を開くスルスルとした音が閑散とした屋敷に静かに響いた。

次回はできるだけ早く投稿できるように頑張ります。

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