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東方異譚録〜万の神人紡ぐ糸〜  作者: 金柑太郎
第一章 変わらない毎日【幻想郷の日常】
17/27

十七話 脇道にGO

今回は切りの良いところで終わりにしたかったので短いです。そこんところよろしく。

「キュッとしてドカーン。」


その言葉が紡がれた瞬間、俺のもともといた場所の地面が大きな音を立てて破裂する。跡形もなくエグられた地面は俺がここにいたら間違いなく爆散していたということを表しており、だくだくと冷や汗が頬を伝ってボロボロの地面にシミを作る。


「おい今のなんだよ!?」


「さぁな、俺にもわかんないけどおそらくあの女の子が出したんじゃないのか?」


なんかこいつ冷静すぎだろ。前から思っていたが犬斗は普通の人がガチガチに緊張してもいいはずの場面でどことなく冷静だ。人間味があまり無いといえば良いのかもしれない。

「それはそうだけど・・・、そうか多分これは能力だ。なんて能力なのかはわからないけど弾幕じゃないならそれしか無いだろ。」


「でも流石に攻撃に全フリしすぎだろ!絶対あそこにいたら俺ミンチだったって。」


 二人で走りながら半壊した屋敷を走り回る。あの少女は自分の見てるところを爆発させることができるのかもしれない。こうして走っている間でもあちこちドッカーン、ドッカーンと爆発が起こり瓦礫の雨を降らせてくる。


「こりゃ見てるわけにもいかないな。そろそろここから脱出しようぜ。俺たちは空を飛べないから屋敷が崩れたら普通に死ねる。」


「でもなぁ、何かちょっとかっこいいこと言った気がしたから今から変えるのなんか恥ずいんだけど。」


「いや、自分の命には変えられないだろ。」


そんな会話をしながら二人で瓦礫を超えては走りやっとのことで部屋の端までくる。はぁはぁと呼吸を荒らげながらも無事に部屋の隅についたことに安堵を覚え、一刻も早く扉から出たいという衝動に駆られる。半開きになった玄関の大きな扉に手をかけ外に出ようとすると、何か聞き覚えのある音がした。


「キャンッ、キャンッ!!!」


 響き渡る轟音の中、耳を澄ましてみるとどこからか犬の鳴き声らしきものが聞こえてきた。慌てて振り返り山のように降り積もった瓦礫の方を見ると少し奥の方に犬がいるのがわかった。下半身が瓦礫に巻き込まれてしまっているのか動くことができないようだ。


「おいどうしたんだ?」


犬斗は気づいていないのか突然止まったこちらに顔を向け、返答を求める。


「あそこに犬がいるんだけど・・。」


「犬?!」


犬斗はびっくりしたように瓦礫に向けて目を細め犬を探す。そして見つけたのか「あっ!?」と声を上げる。


「あの犬、現世で見たことあったよな?!」


そう、そうなのだ。あの犬は紫にこちらに連れてこられる直前にいたあの神社にいた犬なのだ。どこか既視感があると思ったらあのときの犬だったのだ。でもなぜここにいるのだろう?近くにいたから一緒に落ちてしまったのだろうか?

しかし、今は考えている時間はない。弾幕ごっこをやっている少女たちはそちらに熱中してしまっていて気づくことはなさそうである。て言うか気づけないだろう。


「行く?」


正直言って良心は痛むが、自分とあの犬の命を天秤にかけたら自分の命のほうが圧倒的に重たい。しかし、知ってしまって犬が苦しんでいる姿を尻目にこの現場からノコノコ帰る選択をしてしまった場合、多分後悔することになるだろう。社は顔をうつむけたままであったが、突然ブンッと顔をあげる。その目には明確な決意が宿っていた。


「実は俺、犬派なんだよね・・・・・。」


「「よし行くか!!!!」」


とは言いつつも、考えなしに二人で突っ込んで助けに行っても崩壊に巻き込まれて犬と一緒にお陀仏する未来が見えている、主に俺が。考えなしに助けに行こうとする犬斗を腕をガシッとつかみ告げる、


「俺が行ってもどうせ死ぬだけだ。俺はお前を信用する、だから頼んだ。」


「あぁ、任せとけ。」

羽織の袖をグイッとめくりニヤッと不敵な笑みを浮かべ犬斗は走り出した。主人公みたいやな。それに対して俺は見てるだけか。俺にもあんな身体のスペックがあったらな、ここ数日特にそんなことを考えている。でもここで先に一人だけ安全圏に逃げるなんてことは絶対にしない。身体はついてはいけないが今俺の心は、心だけはあいつと共にある。だから俺は逃げない。あいつが犬を連れてここに無事で帰ってくるまでここであいつを見守るそれが今の俺の役割だ。

 あいつはウサギのように、ぴょんぴょん軽やかに向こう側へと行き着く。走っている時は気づかなかったがあいつは走るペースを合わせてくれていたのかもしれない。嬉しい気持ちと不甲斐ない気持ちがごちゃまぜになって自分の今の気持ちがよくわからないが、どうやら無事で帰ってこれそうである。良かった、良かった。

 ふと気になり、頭上を見上げる。さっきまでドッカンドッカンいっていた音がふと消えたのだ。少女たちはみな上を見上げており何かが起こっているのがわかる。


「霊符 夢想封印。」


スペルカードだ。誰のものかはわからない。博麗の巫女?あの吸血鬼?魔法使い?いや、今は関係ない。あのヤバいのが打ち込まれる前にここにあいつと犬を呼び戻さないと。


「速くしろ!!巻き込まれるぞ!」


この声が届いていないのか、よしよしとご機嫌そうにあいつは犬を撫でている。いよいよまずいぞ。


「死ぬぞぉぉぉ!!!!!!!」


ここまで言ってあいつは今の現状に気づいたようだ。慌てて犬の瓦礫を持ち上げ犬を抱えてこちらへと向かってくる。その時、膨れ上がった虹色の弾幕が声の主から放たれたのだろうか?下へと落ちてくる。バクバクと心臓がものすごい速さで脈打っているのが絶体絶命の状況なのにわかる。ドッカーンと爆弾を連想させるような爆音が頭上で響き、弾幕が建物へと衝突する。耐えきれなくなった洋館はガラガラという悲鳴を上げ下にいる2つの命を道連れにしようと落下してくる。

 また気絶するかもしれない。でも後先を考えている場合でもない。俺は覚悟を決めた。あいつがさっきのタイミングで覚悟を決めたのなら次は俺が覚悟を決める番だ。

 目をつむり身体に感覚をみなぎらせる。思い出せ、想像しろ。ゾワゾワと感覚がみなぎり目の前に一本の矢が顕現する。


「まだだ。まだ足りない・・。」


 段々と力が抜けていく身体に活を入れその場で踏みとどまる。手を前に突き出し拳を握り身体の線が解けないように力いっぱい握りしめる。二本めの矢が顕現した。


「ま・・だ、まだ・・だ。」


二本じゃ無理だ。とてもとてもあの質量を防ぎきることができない。・・・十本、十本だ。せめて十本。ふと全部の霊力を出し切ってだらしなく地面で伸びていた、犬斗の姿が頭に浮かんできた。


「ははっ、どうやら俺も中二病だったみたいだ。」


膝を付き今にも身体は地面に崩れ落ちそうだ。でも最後まで身体から意識を手放さないように歯を噛み締め、手を握り続ける。今まで汚い現世で頑張って生きて生きたんだ。溜まったもんを全部放出するとするか。


「俺の全部をくれてやらぁぁぁぁあああ!!!!」


叫び最後に力を振り絞る。絞りすぎてもう力なんてほとんど無かったはずなのに自然と身体が動いた。10本の矢が顕現する。矢なんて3本あれば折れないんだ。だったら10本もあれば折れないどころかあの質量を砕くこともできるはずだ。10本の青い閃光が放たれた。俺の全部が飛んでいく。すると身体の線がほどけ、ガクッと倒れ伏せる。自分があいつを救うところが見れないのが少し残念だった。意識が薄れまぶたが閉じる。あの叫び少女達に聞こえてないと良いな、そんなことを思いながら俺は眠りについた。

次回もよろ

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