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東方異譚録〜万の神人紡ぐ糸〜  作者: 金柑太郎
第一章 変わらない毎日【幻想郷の日常】
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十五話 紅魔異変・肆

久しぶりの投稿です。

 ドアを開けた瞬間、ボンッと土煙が吹き抜けていく。煙に混じってとんでくる小さな瓦礫が身体中にぶつかって点々と痛みが走る。そしていまもドンッという振動は続いており、立っているので精一杯だ。煙が収まり、視界がひらけるとそこにはぬいぐるみや、木馬のおもちゃなどが置いてある広大な子供部屋が広がっていた。地下に広がっているとは思えないほどその部屋は精巧に作られており、陽の光が入るわけもないのにご丁寧にも窓枠が設置されていて、真っ赤なカーテンがかけられている。

 そして上を見てみれば、やはり弾幕ごっこだ。博麗の巫女かと思って目を凝らしたがなんだか少し違和感を感じる。


「博麗の巫女ってあんな弾幕撃つのか?」


少なくともさっきの中華女の時は、赤色に輝くお札の形をした弾幕だった。なのに、いまさら黄色の星型の弾幕なんて撃つだろうか?

 そう考えつつも吹き荒れる防風の中で、羽織をはためかせながら部屋の隅へと向かう。本人たちの姿は見えないがこの部屋の中を二人の人物が高速で移動しているのは気配と弾幕でわかる。


「魔符 スターダストレヴァリエ!」


 不意に元気な女の子の叫びが、広い部屋いっぱいに響いた。スペルカード?なんとなく響き的に必殺ワザ的なものかと仮定するが、よくわからない。戻ったら紫に教えてもらおうと思ったが、そもそも死ぬかもしれないこの状況でこんなことを考えているより瓦礫を避けることに専念したほうがいいのでは?と思ったので細かいことを考えるのはやめた。


 そこで、いきなり空中に赤、青、緑の大きな星型の弾幕が出現して地下の壁を砕き、ドゴーンっと大きな破裂音が地下中に響き渡る。

 地面が割れんばかりに揺れ、大きな岩の塊が落下してきた。


「何が起こってんだ!?」


 弾幕はこの世界でいわゆる銃的な立場だと思っていたのだが、今のは何だ!?


「銃どころかバズーカじゃねぇか?」


 これがスペルカードってやつの力なのか。落ちてくる瓦礫から逃げながらスケールの大きさに圧倒されているとさっきとは違う声が聞こえた。どこか幼気なその声は、狂ったように笑いながら何かを叫んでいる。


「禁忌 レーヴァテイン!」


 すると砂煙でモウモウとした部屋の中央から、轟々と炎が湧き上がりそれと同時に風圧で砂煙が吹き飛んだ。現れた炎はだんだんとなにかの形を型どっていき、やがて真紅のそれが現れた。剣だ。真紅に燃え上がる剣だった。

 さらに視界が晴れたおかげで相対する二人の少女の姿があらわになる。右側にいるのは箒に乗って長い黄色の髪の上に黒い帽子をのせた、まるで魔法使いのような見た目の少女だ。左にいるのは、さっきの少女より小さく、赤色のドレスに白いモブキャップを被った少女で背中には謎の色とりどりの何かがぶら下がっている翼らしき物が付いている。そして手にはさっきの燃え上がる剣が握られており、その小さい体のどこにその大きなものを持つ力があるのかと思わず目を見張ってしまう。


「モットアソボウ!」


 口角をニヤッと吊り上げ、光の灯っていない濁った目で魔法使いの方を見ゆると、乱雑にさっきの剣を振り回す。

 見ているだけで背筋がゾクっとしたのにも関わらず、元気に笑っていられる魔法使いはどうかしているとしか思えない。


「おっとこりゃ危なかったぜ。吸血鬼ってのはみんなこうなのか?」


箒の上の魔法使いは灼熱の攻撃を素早い動作で避けると、すぐさま弾幕を放ちながら再び攻勢に出ようとしている。

 しかし向こうの少女の方も飛び抜けた身体能力を持っているようで、魔法使いから目を離した時にはもうさっきの場所から消えていた。


「禁忌 クランベリートラップ!」


と、どこからか叫ぶ声が聞こえて大量の弾幕が天から降り注いできた。

 魔法使いは多少もたつきながらもその弾幕を躱しきると何やらよくわからない、箱のようなものを手に取って上空へと登っていく。


「なぁ知ってるか?」


 金髪の魔法使いは幼女にそう言うと、箱を前に突き出しいった。


「弾幕はパワーだぜ。」


その言葉に反応するように幼女は沢山の弾幕を生成して放つ。まるで雨のような弾幕の集団は真下の魔法使いをすり潰してしまうのではないかと思うほどの速さと密度で放たれた。しかし、魔法使いは叫ぶ。


「恋符 マスタースパーク!」


 箱の先端が回転して、黄色い光が集まっていく。そして弾幕が彼女の手に触れようという時だった。ドウンッ言う轟音と共に極太のレーザーが放たれた。

 目を塞ぎたくなるような威力のレーザーは、上空にいた狂った少女を巻き込みながら地下の天井にぶつかった。それが5秒ほど続いたのちブスッっと音を立ててレーザーは萎んだのだが、ひとつわかった事がある。


「天井無くなっちまったじゃねぇか?!」


 魔法使いはにやけながら、


「ちょっとやりすぎちまったか?」


と笑っている。笑っている場合じゃないだろ、と突っ込みたくなったが心の中で留めると、煙の合間から上を見上げてみた。極太レーザーによってぶっ壊されてしまった天井はポッカリと穴が空いてしまい、紅色の空が丸出しになっている。

 さっきの幼女は無事なのだろうか?そんな疑問を抱きつつも自分が上に行って確認する術を持たないので今は放って置くことにした。


「一旦上に戻るか。」


 そう思い、扉が吹っ飛んでしまった入口の方にまで歩いていくと魔法使いの女は箒に乗って上へと飛んでいってしまった。


「あいつ怒ってるかな?」


 思い返してみれば、真弓はずっと外で俺が開けるのを待っているのだ。かれこれ30分はたっていてあいつも暇を持て余しているだろう。戻ったあと遅いぞと、どやされなければいいが。


「またこの道を戻るのか‥。」


 気が遠くなるような気がしたが、結局ここからでなければならないのには変わらないので萎える気持ちを押さえつけながら石の階段を登った。コツコツコツと自分の足音が木霊し、薄暗い通路を一人で歩いていると、再びズズンッと地面が揺れた。思わず階段を踏み外しそうになり壁にもたれかかる。カラカラと小さな小石が天井から落ちてきて、ここも崩れるのではないかという焦りにも似た恐怖を感じ駆け足で階段を登った。


「はぁはぁ。」


 まったく、ここに来てからというもの休まる時間が全くと言っていいほどない。これもあそこで神社の中に入ってしまった自分の運のなさを呪うしかない。

 階段を出ると、ムワッと立ち込めた大気に身体を舐められるような不快感を感じてゾワッと鳥肌が立つ。博麗の巫女がさっさと解決してくれることを願いながら、豪華そうなカーペットをトコトコ歩きながら俺は再びもと来た道を戻るのであった。






 


 流石に遅くないか?かれこれ犬斗が中に入ってから20分以上立つ。いくらなんでもそんな時間はかからないか。頭をポリポリと書きながらそんなことを考えていると入り口での振動が止んだことにふと気づいた。さっきまでおそらく博麗の巫女が中で誰かと戦っていたっぽいが、もう振動は止んでおり扉に耳を当てて見るも何の音も聞こえない。


「開けてもバレないかな?」


 少しくらい大丈夫だろうと、扉の取手に手をかけ少しだけ中を覗いてみる。そこには散らかった広間ばかりがあるばかりでシンっと静まり返っている。


「どうせ歩いてたら、会うよな。」


 広いとは言えど、屋敷の中だし歩いていればいつか会えるだろ、と軽い気持ちでスッと屋敷の中に忍び込んだ。中は絨毯が破れ壁にはヒビが入りここで何らかの戦闘があったということを物語っている。あたりを見回って博麗の巫女がどちらに行ったのか考えながら階段を登ると、一人の女性が倒れていることに気づいた。

 

「うおっ!」


 二階との高低差で見えなかったその人を見て驚いてしまう。ここに倒れているということは博麗の巫女にやられてしまったのだろうか?死んでいるわけではなさそうなので放って置いてそのままその先に進むことにしたのだが、なにぶん顔が美人なもんでどうしても視線がそちらにいってしまう。


「この世界の住人は目に毒だな‥。」


 女性経験のない自分はこういう美人さんがいるとどうしても視線がそちらの方に誘われてしまうのだ。そしていつも、俺の隣で妹が


「恥ずかしいからやめてよ。」


とギンっと睨んでくるのだ。思春期のせいか妹は俺に「ブス、キモい、臭い、バカ、死ね、カス」などの悪口ばっか言ってくるが俺の大事な家族であり、唯一の存命している家族だ。でも今ここにはいない、現代では一人で心寂しい思いをしているだろう。まぁ気の強いアイツのことだから表には出さないと思うが。


「早くしないとな。」


 慌てて女性から視線をはずして歩き出す。そうして5分程歩いた頃であった。ズズンッと地面が揺れた。電車の中でガタガタ揺られているようなこの揺れは先ほどの弾幕ごっこの振動とは何か違う。明らかに地中から揺れが伝わって起こった地震だ。


「あいつも厄介ごとに巻き込まれてないといいがな。」


 地震は尚も止まず、絶えずズズンッという振動を続けている。これは自然の地震ではない何となく雰囲気で感じていたが恐らくそうだろう。地下がこの屋敷にあるかはわからないが、この揺れが人事的ものであると言うことは確かだ。


「この揺れが人によるものって現代では誰も信じないだろうな。」

 

 しかしこれが幻想郷。弾幕ごっこである。


「博麗の巫女がどんだけの力を持っているのかは知らないが、あれを超えるってのは流石に無理だろ。」


 一人そんなことをつぶやく。紫が自分の中でどんなことを考えてるかは分からないが、俺たちに強くなってほしいなんてそんな不自然な理由な訳がない。観察したところあいつはおそらく頭が良く回るタイプだ。何をさせられるかは分からないが、今後とも観察していかなければならない。


 そんなことを考えながら、ロウソクが怪しく照らし出す洋館を一人で歩いていた。妹のことや、紫のこと、犬斗のことで頭がいっぱいだが今は忘れることにする。だって、


「絶対この先だろ‥‥。」


明らかにラスボスっぽい雰囲気の扉が目の前にあるからだ。深黒の装飾に囲まれた絹のように滑らかな大理石の重厚感のある扉。それは道を塞ぐ大きな巨人のようにどっしりとそこに存在していた。扉に耳を当ててみるも中からは何も聞こえずシンっと静まり返っている。ちょっとくらい中を見ても大丈夫だろうと手を取手にかける。


「はぁ〜。やっと見つけたぁ。」


 後ろからの突然の話し声にビクッと肩を震わす。まさか見つかったのか?首だけを後ろに向けその正体を確認すると、やはりそれは博麗の巫女であり俺ではなく後ろの大きな扉を見据えていた。

 ホッと胸をなでおろすと、そそくさとその場から離れて博麗の巫女のため道を開ける。見つからなくてよかったー。危なかった危なかった。まさか後ろから来るとは思わないよな。この術がどこまでの効果があるのかわからんけどやっぱ人に気づかれないというのはあまり慣れない。まるで世界中のすべての人が俺のことを忘れてしまったような、そんな感覚だ。


「異変の元凶さーん。さっさと出てきてくれると助かるのだけど。」


 巫女が問うと数秒間の静寂が訪れる。その後、返答があった。


「あら、咲夜たちはやられてしまったのかしら?」


 その声は幼気ながらも凄みをもたせた今まで聞いたことのないタイプの声だった。年の功が出せるような威圧感をもつ異変の主はどうやら女性のようで、こんな趣味の屋敷に住む女性とはどんな人物なのか想像が積乱雲のように、もくもくと膨らんでいく。


「あんな奴ら口ほどにもなかったわ。」


それに対して巫女は張り合うように、余裕だったと言い切っている。まぁ博麗の巫女だったらあり得るのか?よくはわからないが、幻想郷の秩序を守る役割があるくらいだ。相当強いと見るべきだろう。


「ったく、客が姿見せてやってんだから主人自らお出迎えするのが礼儀ってもんじゃないのかしら?」


「あら、私にはあなたがとても客には見えないのだけど。強いて言うなら暴れ牛、とでも言ったものかしら?」


「はぁ!?面見せないくせに偉そうなこというわね。出てくる気がないんなら、こっちからいかせてもらうわ。」


 意外と短気なのか簡単に挑発に乗り、ドアの取手に手をかける。そのまま二の腕に力を入れダンッと扉を開け放ったとき、

俺の視界は赤に染まった‥‥。

次はどうなることやら、また遅れるかもしれません。すんません

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