第1話ダンジョンもの
うん。私が使うわけではないから素体のままで。
とは言え後でいじられても困るから、最低限の機能を入れて固定完了と。
まぁこんな物だろう。
さて、念の為確認しておこうどれどれ?。
うん。文明レベル5物質文明世界の魂か。
賞罰は特になし、まぁまぁ善良な平凡な魂を持ってこれたな。
うん?。適当に引っ張ったからかなり記憶が壊れたか?
まぁでもこれならいきなり暴走して死ぬこともないだろう。
一応自殺は禁止にしてあるし、能力は最低限にしてあるから、ダンジョンの外に行くこともあるまい。
お前。さっさとマスター登録をしろ。
そうだそれで良い。
ついでにダンジョンも起動するんだ。
うん。これでどこかに行くこともないだろう。
一応言っておくが、ここは魔獣の森のほぼ真ん中だから、助けを外に求めることは出来ないからな。
出た所でどこにも行けやしないだろう。
取り敢えず最低1ヶ月は生き残れよ。
あまり早いと調査が入るかもしれんからな。
うん。後は好きすれば良い。ではな。
起きたら真っ白な部屋で寝ていた。
なんか声が聞こえていた気がするが、何だったのだろう?
ふと体を起こしあたりを見ると、白い無地のワンピースを着た10代後半位の女の子がひとりいるだけで、他にはなにもない部屋だった。
何も無いと言うのは物がないだけではなく、窓はおろか出入り口さえないようだ。
「ここは一体・・・君は?
「ごめっめんなざいぃぃぃぃ。わだじがわるいんでずぅぅぅぅごんなおぢごぼれなわだじどいっじょにじぬだあんでぇぇぇぇ」
「あ、待ってちょっと落ち着い
「もうだめなんでずぅぅぅだべられでじぬがびがらびでじぬじがないんでずぅぅぅ」
何がなんだか意味がわからないけど、女の子は土下座の様な格好で泣き続けているだけで、全く話ができない状態だった。
取り敢えず時間をかけ優しい言葉をかけながら、少しづつ話を聞いてみたところ、確かに泣きたくなる気持ちもわかってきた。
「落ち着いたかな?一応現状をある程度理解したけど、間違っていると困るから確認していっても良いかな?」
「はい大丈夫です。よろしくお願いします。」
私は女の子も落ち着いてきたので、改めて確認しながら現状の把握をしてみることにした。
何故か向かい合って正座して話しているが、もうなんでこうなったとか考えている場合ではなさそうだ。
「ここは文明レベル3で魔法文明世界って言うのかな?つまり私がいた世界とは違う世界なんだね?」
「はい。マスターはダンジョンマスターをして貰うために、正義と支配を司る神様に作られました。一からダンジョンマスターを作ると時間がかかるため、他の世界でお亡くなりになられましたマスターの魂をこちらに持ってきたそうです。
それとこの世界は神様方の実験・練習用の世界になります。」
実験?練習?では、私の居た世界は本番なのだろうか?物質世界というのはある程度理解できるけど、魔法世界か・・・ファンタジーな世界で魔法あり?それでいて文明レベルが低いって事がわかる。
私の居た世界が文明レベル5なら、文明レベル3というのは中世位ってことかな?
その辺はおいおいって感じかな?
「ん〜実験練習用の世界というのが良くわからないけど、取り敢えず次に行くね。
私はダンジョンマスターって言うのになっているみたいだけど、それはダンジョンを作成して運営していくって事でいいのかな?」
「はい。この世界は簡易的に作られている為、資源にとぼしいだけでなくエネルギーの循環も悪いため、その両方を解決するためにダンジョンシステムが採用されています。
具体的には、地脈・水脈・風脈・天脈それと生物から得られるエネルギーを、物質や生物に変換して、この世界の人に資源の回収をさせるとともに、エネルギーの消費による循環を促してもらいます。本当ならなのですが。」
「本来ならダンジョンを運営するのが仕事だけど、今回は神様の依怙贔屓でこんな自体になってしまったと?」
「はい。本当なら正義と支配を司る神様の眷属がここに来るはずでした。」
「それがさっき説明してくれたダンジョン専門学校?の卒業生なんだよね?」
「私もそうなのですが、マスターに馴染みのある言い方をしますと、ダンジョン専門学校のダンジョンマスター科の卒業生になります。ちなみに私はダンジョンコア科の卒業生になります。」
「あ、ちょっと脱線するけど、さっき言ってた記憶の共有って言うので、私の記憶を君も共有しているんだね?」
「はいそうです。マスターをダンジョンマスターに登録したときに、今後のダンジョン運営に支障がないように、記憶の共有がされています。なので、マスターとこうして話すことが出来ますし、ある程度そちらよりの言い方が出来ます。」
「なるほどねそれでさっきの話に戻るけど、ダンジョンマスターとコアはくじ引きで、ペアとダンジョンの場所が決定されるんだよね?」
「はい。ですが引いたコアは私と言う卒業ギリギリの落ちこぼれで、場所は有史以来誰もダンジョンを維持できなかった、この世界でも最強の魔獣があふれる魔獣の森だった為に、親である正義と支配を司る神様に相談して、私だけここにダンジョンを作り代わりのマスターを作られました。」
「しかもその際に困難地を引いた者に対するボーナスも持っていかれてしまったと?」
「はい。ここのようなダンジョン維持の難しい困難地は、ダンジョン作成の為に最初に貰うエネルギーの他にボーナスが貰えるのですが、どうせすぐ潰れるだろうからと持っていかれてしまいました。」
「ん〜ここまで聞いただけでもかなりひどい話だね。しかも代わりのマスターである私は、ダンジョン専門学校に行っていないから、ダンジョン運営に必要ないろいろな知識や技能が全く無いと。」
「はい。本来マスターはダンジョン運営の基本知識や技能を習得していますし、ダンジョン専門学校時代に培った人脈や神様方にコネがあったりします。知識や技能が無くてもコアである私が居ますので、作成運営には問題がありませんが、マスターの技能には他のマスターや神様と連絡を取ったり、エネルギーを交換したりするものがあります。これがあれば現状を訴えて助けを求めることが出来たのですが・・・。」
「なるほどね。神様にとってはここで死んでくれれば、自分の悪事がばれないって事か。」
外部との連絡手段は無いし、助けも来ないってことか。
どうしたもんだろうか?
なんとなくお互いにうつむいてしまい、話が途切れてしまった。