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三章~16話 ダンジョンアタック三回目2

用語説明w

魔導法学の三大基本作用力:精神の力である精力(じんりょく)、肉体の氣脈の力である氣力、霊体の力である霊力のこと


魔力:精力(じんりょく)と霊力の合力で魔法の源の力

輪力:霊力と氣力の合力で特技スキルの源の力

闘力:氣力と精力(じんりょく)の合力で闘氣(オーラ)の源の力


セフィリア:龍神皇国騎士団の団長心得。B+の戦闘力を持つ。ラーズの遠い親戚で、五歳年上の憧れの竜人女性


目指してた騎士を諦めるほどの理由か


俺は騎士の道を諦めた

そして、チャクラ封印練という賭けをした



…俺には才能が無かった


闘氣(オーラ)も魔法も特技(スキル)も弱い

源となる、闘力、魔力、輪力が低いからだ


この三つの力を増やすためには、肉体の力である氣力、霊体の力である霊力を増やせばいい


その方法として、俺の氣力と霊力の九割を意図的に封印

この封印量は、体に悪影響が出て来るほどだ


すると、体が足りなくなった霊力と氣力を補充しようと、それぞれの総量を上げようとする

この効果を狙ったものがチャクラ封印練だ


もちろん、霊力と氣力の総量がすぐに上がるはずはない

この封印を最低十年以上続けることで、総量を上げられる可能性があるという鍛錬方法だ



「元々、俺が騎士を目指したのは憧れの人がいたからだったんだ」


そんな俺が、騎士を諦めてチャクラ封印練を行った理由

…それは、騎士になるという夢はついでだったからだ


龍神皇国騎士団の最強騎士、セフィリア

俺はセフィリアの遠い親戚で、セフィ姉と呼んで慕っていた


龍神皇国の貴族で、剣の達人で、めっちゃ美人で、騎士学園も首席で卒業した俺の憧れの人

だから、俺も龍神皇国騎士団の騎士を目指した


「へー、凄い人なのね」


「うん。俺はその人と一緒に仕事がしてみたかった。凄いモンスターと一緒に戦ったり、背中を守ったり、…役に立てる男になりたかったのかな」


「うん…」


「でも、現実は甘くなかった。同級生も凄い奴はゴロゴロいるし、俺は全然強くなれないし。そして、決定打はその人の戦いっぷりを見たことだった」


「どうだったの?」


「凄すぎたんだよ、一人でドラゴンを狩っちゃうんだから。あー…、これが才能かって、素直に諦めがついたくらい理解ができた。俺は、この人と同じ場所には立てないなって」


「…」


「そんな時にチャクラ封印練を教わって、どうせ一緒に仕事ができないならやってみようって。自分でも、びっくりするくらい簡単に決断ができたんだ」



このままじゃ、俺はセフィ姉と一緒には働けない

働く資格がない

それだったら、騎士になっても意味がない


…騎士の資格を捨ててでも、霊力と氣力を上げられる可能性に賭けた方がいいと思った

ゲームで言うステータスを上げられる大博打、それがチャクラ封印練だったんだ



「…ラーズって、格好いいね」


「え?」


「夢があって、さ。復讐の話より、その人の話をしているときのラーズの方が私は好きよ」


「ど、どういう…」


「さ、そろそろ準備しましょ?」

そう言って、タルヤは二人を起こし始めた




・・・・・・




ここの洞窟は金属を含んだ鉱石がたくさん落ちている


ナノマシンシステムの餌になるかな?

一応、拾っておこう


すると、タルヤが起こした二人が起き上がった

ギガントのカブスが恐る恐る立ち上がる


「大丈夫だ、足は動く」

カブスの足は、ゴブリンの槍を突き刺された


「…無理をするなよ。防御役(タンク)はパーティの要だ、崩れたら全滅するぞ」


「分かってる。五階の情報端末まで行ったらすぐ帰るし大丈夫だって」



俺達は、地下四階層に入る

俺とタルヤはマッピングが終わっているので、最短距離で階段まで進む


だが…


「いるわ。六匹…」

最初の部屋で、タルヤがモンスターを探知した


「よし、やってやろう」

カブスが元気に言う


「…本当に大丈夫だな?」

俺はカブスに再確認をする


「ああ、問題ない。普通に歩けていただろ?」


「分かった。俺が先に入るから、三人で陣形を取ってくれ」



モンスターは二足歩行の狼、ウェアウルフ

鋭い爪と牙を持つ、動きの早い強敵だ


一匹が四つ足で突っ込んでくる

早い、流星錘は無理だ


ショートソードを抜いて迎え撃つ


前足の爪を振り回し、同時に噛みつきを狙う

腕と牙の両方を活用するスタイル、ウェアウルフの体の構造は格闘向きだ



武の呼吸、膝を抜き、重力を使った推進力

爪を躱し様にショートソードを突く



「ガフッ…!」


ウェアウルフの目にショートソードが刺さる



チラッと見ると、部屋の入り口付近にタルヤ達が陣形を取った


カブスが盾を構え、タルヤの魔法、オルバスがテレキネシスで攻撃をしている



俺は、もう一匹を流星錘で攻撃


「ガァァァァッ!」

ウェアウルフが牙を剥き出して襲いかかってくる


やはり、こいつは動きが早い



爪をバックステップ


半歩踏み込んで膝を斬りつける



「グギャッ…!」


痛みに声を上げるウェアウルフにショートソード投げつける



同時に、突っ込んでくるウェアウルフの左腕に飛び付く

体重をコントロールしながら、腕を極める


飛び付き腕十字



パキンッ!


靭帯が破裂し、肘が曲がる



敵が複数いる場合、寝技は危険だ

すぐに立ち上がって、流星錘を脳天に叩きつける



タルヤ達は四匹を相手にして、三匹倒していた

残り一匹だ


だが、まずい


カブスの足から出血している


「あの野郎、傷がふさがってないじゃねーか!」

足を引きずったカブスが、ウェアウルフに肩を噛みつかれる


まずい!



オルバスのテレキネシスで操ったナイフがウェアウルフを切り裂く

更に、タルヤの雷属性投射魔法がウェアウルフ着弾

ショックでウェアウルフの牙がカブスから外れる



ウェアウルフが、もう一度カブスを襲う


くそっ…!



ガブッ…!


「うあっ…!!」



なんと、タルヤがカブスを庇って割り込んだ

タルヤの右肩にウェアウルフの牙が食い込む


「タルヤ!」

俺は叫ぶ


俺は触手に溜めていた精力(じんりょく)を解放

飛行能力で突っ込む



まずい!

…だが、カブスが攻撃すれば助けられる!


だが…


「うわあぁぁぁぁぁぁっ………!」


カブスは恐怖にかられていた

有ろう事か、足を引きずりながら逃げ出したのだ



バキッ…


タルヤの骨が折れる音がする



オルバスが、焦ってナイフをウェアウルフに突き刺す

続いて、俺がショートソードをウェアウルフの眉間に突き刺した



「…」


ズルズル…



弛緩したウェアウルフの体が崩れ落ちた


「回復薬を!」

俺はオルバスに叫ぶ


俺は、自分の回復薬をタルヤの傷口にかける


まずい、まずい、まずい!

牙の傷よりも、噛み砕かれた骨がまずい!



「肩甲骨と…、くそっ、背骨もか…!」


強靭な顎の力で、タルヤの骨が砕き折れている



回復薬をかけ、口に含ませる


飲め!

ダメだ、無理矢理飲ませる!


俺は自分の口に回復薬を含んで、タルヤの口に吹き込む



ごくっ…


タルヤが回復薬を飲み込んだ


よし、飲んだ!


「ラーズ…キス…しちゃった…」

タルヤがうっすらと目を開ける


「タルヤ、回復薬を飲め! 変異体なら助かる!」


「うん…」


オルバスの回復薬を飲ませ、同時に体にも回復薬をかけていく



タルヤはまだ生きている

だが、俺には懐かしい感覚がある


俺が死にかけた戦場

大崩壊が起こったあの時


これは、あの感覚

…ヴァルキュリアの気配だ!


死の気配をたどって現れる、異世界イグドラシルの騎士

死者の魂を誘う、スカウト部隊だ



…タルヤが死ぬ!

死にかけている!


まずい、死なせない



タルヤは優しすぎる

優しさとは強さだ


ここでは生かせない強さ

戦場では生かせない強さ

多くの人を幸せにする強さだ



「オルバス、服を脱げ! 骨折部分を固定する!」


「わ、分かった!」


背骨を保護するため、ショートソードの鞘を添え木にしてたすき掛けに布で固定する


回復薬をかけ、飲ませ続ける



「あ…」


タルヤが目を開けた



…そして、あの感覚も薄らいでいった


「ふぅ…」



息を吐く

呼吸を忘れていたかのような感覚だ


オルバスも、ホッと息を吐く

よかった…


回復薬は使いきったが、タルヤの一命は取り止めたようだ



俺はステージ1で記憶を取り戻した

やるべきこと、復讐を思い出した


神らしきものの教団を潰す

そのために、この施設を利用して力を得ることにした


そのはずだったのに…


気がついたらどうだ?


へルマンとの約束、タルヤ…

絶対に妥協できないものが増えた


これを諦めたら、俺は歩みを止めてしまう

そう思えるほどの()()()()が増えてしまった


生き残るために、しがらみに助けられた

そして、そのしがらみが俺の自由を束縛している


…俺は、この状況下で絶対に()()()()()()()()()()()



俺は、全てを捨てて生き残ることを優先すべきではないのか?


実際、この施設で俺は割り切った

何度も手を汚してきた


それなのに、どうして絆というしがらみだけは捨てられないんだ…?


絆を捨てない強さ

全てを捨てられる強さ


俺に必要なのはどっちなのだろうか…



チャクラ封印練

二章~30話 チャクラ封印練 参照

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― 新着の感想 ―
[一言] カブスも戻ったらフアン時みたく教官に殴られそうやな。
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