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三章~12話 ダンジョンアタック二回目3

用語説明w

この施設:ラーズが収容された謎の変異体研究施設、通称「上」とダンジョンアタック用の地下施設、通称「下」がある。変異体のお肉も出荷しているらしい


エイクシュニル


鹿と同じ外見を持つモンスター

枝角から水が滴っており、水属性との親和性を持つ



「そ、そんなモンスターがいるのか…」

フアンが言う


「凄いね、戦う前に階層ボスのモンスターが特定できるなんて。対策が立てられるし、タルヤのお手柄だ」


「えへへ、帰ったらご褒美期待しているわ」

タルヤがウインク


やめろや!


「それで、どうする? 魔法を使ってくるなら厄介だぞ」

ハンクが俺を見て来る


「現状、一番の問題は魔法に対する防御ができないことだ。二人は耐魔力魔法を使えないのか?」

俺は、魔法を使うタルヤとアーリヤを見る



耐魔力魔法


補助魔法の一つで、個人に作用させることで魔力を使った作用、つまり攻撃魔法のダメージを軽減する

銃に対する防御魔法と同様に、戦場では必須の魔法の一つ


戦場では、銃と範囲攻撃魔法による負傷が圧倒的に多いことが理由だ



「…私は、耐魔力の障壁魔法を使える」

アーリヤが答える


「それならパーティの防御はできるな。アーリヤが魔法防御を展開しながら、ギガントが削っていく感じでいこう」


「お前はどうするんだ?」

ハンクが俺に言う


「俺は遊撃に専念するよ。火力に特化しない分、気を散らせて攻撃を分散する」


こんな感じで、大雑把に作戦が決まった



「…後でサイコメトリーを教えて」


「もちろん、いいわよ」


アーリヤがタルヤに小声で頼んでいる声が聞こえる

パーティとして、関係が出来てきたかな




階層ボスの部屋


エイクシュニルが、部屋の真ん中に佇んでいた

見た目は完全に鹿だが、その角からは水が滴っている



「じゃ、作戦通りに」


俺が前に出て牽制、アーリヤが耐魔力用の障壁魔法を展開する

その前にハンクとフアンが陣取った



カチャカチャ…


固いものが擦れ合う音がして、振り向くとハンクの両腕にプロテクターのような手甲が現れた


…あれは装具か?


装具とは技術の一つであり、身に付ければ物質化した武器を自由に出したり消したり出来る


ハンクは装具を使えるんだな


ということは、この施設に来る前から何らかの戦闘職の経験があるということだろう



「ケェェーーーーー!」


甲高い声で、エイクシュニルが鳴く



水が滴る角を振りかざし、水属性投射魔法を発動



バシュッ!


「ぐっ…!」



圧縮された水の発射


躱しながら、流星錘を投げつける



エイクシュニルが角を一閃して錘を弾く

枝分かれした角は、簡易の盾にもなるようだ


エイクシュニルが走って突っ込んでくる


広がった角の攻撃範囲が広い


大きく飛び退き、余裕を持って避ける



バシャーーーー……


「え?」



通り過ぎたエイクシュニルから、水音がする


「ラーズ!」


タルヤの声に振り返ると、エイクシュニルの足元に水が発生、地面との摩擦を無くしてスケートのように反転して迫って来ていた


何だそりゃ!?

水属性で機動力の補助なんて聞いたことないぞ!


予想外の動きで反応が遅れるが、エイクシュニルの動き自体は感じていた


流星錘を投げつける動きから、そのまま前傾に倒れ込む

そして、前に倒れる重力と脚力で一気に跳び出す



ザクッ!


「キィィーーー!」



居合のようにショートソードを抜いて、足を斬りつける


くそっ、角を避けるために大きく避け過ぎて刃が思ったほど届かなかった!



バチバチーーー!


「キィィッ!?」



動きが止まったエイクシュニルに雷属性範囲魔法(小)が直撃

タルヤが狙っていた


水属性の液体は電気を通す

相性はいい



追撃だ、背中の触手に溜めた精力(じんりょく)をテレキネシスとして開放

一気に跳び込む


四本足のエイクシュニルの動きは速いが、直線の飛び込みなら俺の飛行能力の方が上だ


勢いを乗せてショートソードを突き刺す

同時に足で衝撃を受け止める、崩拳の打ち方での突き


この体幹と地面で衝撃を受け止める打ち方、これは発勁だ


ヘルマンのやっていた打ち方はこれだ

俺の身体能力を最大限の攻撃に変える

隙は大きくなるが、人間より大きい対モンスター戦では効果的だ



「キィィェェーーーー!」


傷を受けて暴れるエイクシュニルが、水属性投射魔法を発動



水の大玉を作り出して、俺に叩きつける



ドガァァッ!


「ぐはっ…!!」



弾が大きく、避けられなかった

水の大玉はコンクリートのように硬い、高密度に圧縮した水の塊だ


水属性の扱う液体の特性、密度コントロールか…!


「ラーズ!」


タイミングよく、ギガントの二人が攻撃態勢に入った

高機動の単体モンスターは、パーティ戦闘が難しい

撃たれ弱い者から狙われるからだ


必然的に護衛を出さざるを得ず、パーティとしての火力は下がってしまう



ドスッ!


ドゴッ!



ハンクの装具で強化された拳と、フアンの斧が叩きつけられる

吹き飛び、体を削られていくエイクシュニル



シャキキーーーーン!


バチバチバチーーー!



更に、アーリヤの冷属性、タルヤの雷属性投射魔法が直撃


エイクシュニルが、膝をついた


「やった!」

タルヤとアーリヤが喜ぶ



そう、二人は魔法を直撃させたことで()()()()()



「…油断するな! 特技(スキル)だ!!」


俺は、エイクシュニルの動きを感じていた

こいつは狙っている


水属性の特技(スキル)


それが分かる

分かるのに、水魔法を喰らった衝撃で動くのが遅れた!



そして、俺には一撃でエイクシュニルを仕留める火力が無い!



「ケェェーーーーー!」


エイクシュニルがアーリヤとタルヤに突っ込む



くそっ、間に合え!



ズドォォッ!


「…ごふっ……」



間に合わないと思った瞬間、エイクシュニルの前に巨体が割り込んだ

フアンだった


エイクシュニルの発動した特技(スキル)は、水属性を角に纏う特技(スキル)

液体を纏わせることにより、角の抵抗を無くしてより深く刺さるというものなのだろう


フアンの巨体の腹に、鹿の複雑な形の角が根元まで突き刺さった



その直後、俺の流星錘とハンクの鉄拳がエイクシュニルに叩きつけられ、階層ボスの命を刈り取った




・・・・・・




「フアン…、ありがとう。私たちを助けてくれて…」

タルヤが泣きながら声をかける


「…前衛が後衛を守るのは当たり前……、ラーズに教わったからな…」

フアンがか細い声を出す


フアンの腹の傷は深かった

複雑な形の角が内臓をズタズタに切り裂いており、いくらギガントとはいえ、何の治療施設もないこの場所では助けることができない


「…アーリヤを助けてくれて感謝する」

ハンクがフアンに頭を下げる


「…ありがとう…ごめんなさい……」

アーリヤが謝る


「ラーズ…、前回はすまなかった…、俺…ビビっちまって…、怖かったんだ」

フアンが俺に言う


ずっと気にしていたのか…


「…でも、払拭しただろ? 後衛を守るという役割をしっかり果たした。フアンはもう戦士だよ」


「戦士…?」


「戦う者、勇気をもって守る者。臆病者じゃなくなったってことだよ」


「うん…、そっか…、へへ…戦…士……」


そう呟きながら、静かにフアンは逝った




俺達は、死者が出たこと、エイクシュニルとの戦いでの消耗を考えて撤退を選んだ

全員が同意した


六階への階段にある情報端末でその報告を行った


「撤退か。…ギガントタイプのハンク」


「なんだ?」


情報端末で話していたハンクが呼ばれる


「被検体の死体は必ず持ち帰ることになっている。ギガントの巨体はギガントしか持てない。お前が責任を持って担いで帰れ」


「…な、何だと?」


「こちらからの指示は以上だ」


「…」



フアンの死体を持って帰るだと?

肉として出荷するためか!?


その為には、ハンクという戦力が帰りはほぼ使えなくなる

その状況で入り口まで戻るだと!?


…こうして、地獄の帰還が始まった




装具

閑話2 セフィリアのお仕事 参照

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― 新着の感想 ―
[一言] そうだったなー死んだら持って帰れって言われてたな! フアンはギガントだし体格デカいから余計面倒いな…ハンクがいなかったら引きずりながらの帰りになるとこやな ちなみに今から初めての経験になる…
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