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三章~8話 帰還と訓練

用語説明w

この施設:ラーズが収容された謎の変異体研究施設、通称「上」とダンジョンアタック用の地下施設、通称「下」がある。変異体のお肉も出荷しているらしい


サードハンド:手を離した武器を、一つだけ落とさずに自分の体の側に保持して瞬時に持ち替えることができる補助型のテレキネシス


タルヤ:エスパータイプの変異体。ノーマンの女性で、何かに依存することで精神の平衡を保っていた。雷属性魔法を使う


ダンジョンの出口を出てエントランスへ


結局、地下一階層をウロウロして戻っただけだが、もう懐かしく感じる

俺達が乗って来たポッドが四機置かれており、その横には別のポッドが三機置かれていた


「別のパーティが来ているんだな」

フアンが言う


「三人パーティの場合もあるのね」

セリーヌがポッドを見る


パーティの編成は教官が決めている

人数も増減するのか


「さっさと戻ろうぜ。セリーヌとフアンは怪我もしているんだ」

そう言って、エドはポッドに乗り込み始めた


回復薬を使ったと言っても、フアンとセリーヌの肩の傷はまだ完全には治っていない

俺は頷いて、情報端末で帰還を報告した



「よし、乗り込めば帰還できるはずだ」

ポッドの電源が入り、システムが起動する


俺達は、それぞれの番号のポッドに乗り込んだ


このポッドは、外の景色が一切見えない

そして内装は同じなため、ポッドの外装に書かれた番号を確認しないと間違える可能性があるな


ポッドのハッチを閉めると…



ゴゴン…


振動と共に、ポッドが動き始める

レールを使って、上へと動いていくのだろう



ゴトゴトと振動に揺られていると、疲労で意識が遠のいていく

気が付くと、俺は眠り込んでしまった…




………




……







プシュー…


ポッドのハッチが開く音で目が覚めた


外に出ると、出発したエントランスだ

どうやら、無事に「上」へと戻って来たようだ


エントランスは人が多かった


ポッドが傷がついていて、禿げた塗装を塗り直している作業員がいる

そして、ちょうど他の被検体達がポッドに乗り込んで「下」へと向かうところだった



トレビス教官が、俺達の所にやって来た

「最初のアタックは一番致死率が高い。よく生還した」


「戻りました」

俺は代表して答える


地下一階層で、危なく全滅しそうになったとは言えないな


「次のダンジョンアタックの日程はまた伝える。メンバーも毎回変わると思え」


「それまでは何をしていればいいですか?」


「お前達の基礎訓練は終わっている。自由に過ごしていい」


「俺達が使える訓練場はあるんですか?」


「基礎訓練の終了者用の訓練場がある。後で係員に聞け」


「分かりました」


さすがに疲れた

部屋で休んで、明日から訓練をしよう


「ラーズ、お前訓練をする気なのか…」

「真面目ねー」

「何でそんなに頑張れるんだ…」


フアン、セリーヌ、エドが言う


…お前ら、今回のダンジョンアタックで思う所がなかったのか?

こんなこと繰り返していたら、いつか絶対に死ぬぞ?

フアンとセリーヌだって負傷したんだし


…二人の怪我を見ると、ポッドに乗る前に比べて怪我がかなり治っているように見える

さすが、変異体の治癒力だ


「…とりあえず、生還できてよかった。また、一緒になったらよろしくな」

俺は三人に言う


「ああ、またラーズと組みたいな」

「ラーズ、頼りになったわ」

「次もよろしく」


こうして、挨拶を交わして俺達は個室に戻ったのだった




・・・・・・




ベッドに横になる


疲れた…

俺の左腕が、カリカリとまた壁の漆喰を食べている音がする


いつの間にか、俺は眠りに落ちていた




目が覚めると、俺は空腹を感じて食堂に向かった

すると、見知った顔があった


「ラーズ!」

タルヤだった


「タルヤ、基礎訓練は終わったんだね」


「ええ、何とか」


「基礎訓練の終了試験、よく通ったね。部隊との戦闘だっただろ?」


「ええ、危なかったんだけど…。ヘルマンに教わった戦闘術と、テレパスの探知が役に立ったの」


「テレパスの探知?」


「ええ、そうなの。私、テレパスの力が上がったみたいで、敵の感情を読めるというか、動きを感じられるようになって…。それで、先読みして攻撃できたの」


「テレパスって、そんなことができるんだ」


相手の思考を感じ取れるなら、それはかなり有利な状況だ

どっちに動くとか、動き始めるタイミングとかが分かるだけで、かなりの危険を回避できる


「今まではできなかったんだけど、ステージ3になってからテレパスの感度が上がったみたい。ラーズと離れて、甘えが消えたのかもしれないわね」

タルヤが微笑む


「タルヤ、強くなったね」


「そうかな? ラーズと…、そしてヘルマンのおかげ。私、ここを出るために、やれることは全部するって決めたから」


「うん、いいね」


俺達は、話しながら食事を取る

暫くタルヤと離れていただけで、積話はたくさんあった


エスパーの訓練はどうだったとか

ダンジョンアタックはどうだったとか


「え、タルヤは地下二階まで行ったんだ」


「でも、最初の戦闘でギガントが負傷しちゃって撤退よ。ラーズは?」


「…一階をさまよっている間に二人が負傷してさ。しかも、役割分担でもめて戻ることになったんだ」


「そっか、パーティの当たり外れもありそうね」


タルヤは笑うが、俺はため息をつく


「普通に陣形取って戦えば問題ないはずなのに、一人で突っ込んで囲まれて、索敵怠って後ろから襲われて…。しかも内輪揉めに発展して最悪だった」


しかも、恐怖に駆られて銃弾を撃ち尽くす前衛

新兵がよくやるミスを、まさかダンジョンで見ることになるとは…


「でも、私はちょっと気持ちが分かるわ。選別で襲撃者と戦うのと、虫やゾンビに噛みつかれるのは恐さの質が違ったから」


「…まぁ、それは確かにね。ね、タルヤ。この後暇なら、訓練に付き合ってくれない?」


「ええ、もちろんよ。行きましょう」


久しぶりにタルヤと訓練

ちょうどいい、タルヤにサイキックを指導してもらいたい



訓練場に移動する

ここの訓練場は、ステージ2と内装は変わらず道場のようになっている


ヘルマンがいた時と変わらず、組手と反復練習を行う


「あれ、タルヤは杖を使ってるんじゃなかったの?」

俺は、タルヤがナイフを使った素振りを始めたのを見て尋ねる


「基本的には後衛から魔法を使うんだけど、敵に接近された時用にナイフの訓練は続けようと思って」


ダンジョンはステージ2の選別と違って敵が多く、乱戦になりやすい

確かに、後衛も自衛手段を持たないと危険だ


「ラーズは何の訓練をするの?」


「俺は飛行能力をマスターしたいと思ってさ。サードハンドは完全に使えるようになったから」


ステージ2でタルヤにサイキックを習ったおかげで、かなり自信はついた

実際にサードハンドは、ダンジョン内でもイメージ通りに使えている


「へー、ついにラーズも飛行能力を…。使ってみてよ、アドバイスしてあげる」


「分かった」


俺は精神を集中する


まずは、俺の脳みそから精力(じんりょく)の腕を発生させる

それを、俺の背中の触手に入れていく


普通の物質は、精力(じんりょく)を入れようと思っても一定量以上は入らなくなる

だが、物質の中には、この精力(じんりょく)が多く入れやすいものが存在する


有名な物が、精神感応物質と言われる希少素材で、サイキッカーが使う飛行ユニットなどに使われている

この物質は、通常よりも多くの精力(じんりょく)を込めることができ、その分テレキネシスの力を強く発現できるのだ


そして、ドラゴンの背中の触手もこの精神感応性が高い

精力(じんりょく)を多く込めることで、体を浮かせるほどのテレキネシスを発生させることができるのだ


「ラーズ、まだよ。もっと精力(じんりょく)を込めて」


「う、うん…」


精力(じんりょく)を触手にできるだけ詰め込み、テレキネシスを発生させる



ブワッ…!


「うおわっ!?」



触手が真上に引っ張られるような力が働き、バランスを崩して顔から床にダイブする


「やったじゃない、浮いたわ!」


「これ、難しくね…?」


「何度もやればバランスは覚えるわよ。重要なのは、ラーズは体を浮かせるほどの浮力を作り出せるようになっているってことでしょ?」


「まぁ、そうか…」


俺は、ひたすら浮力を作り出す練習をする


…空を飛ぶって楽しい


軍時代の、サイキッカーの先輩が使っていた飛行ユニット

こんな感じだったのかな



「ね、次は私の訓練に付き合ってよ」

暫くすると、タルヤが口を尖らす


「あ、そうだね。ごめん、何をする?」


「武器術、やっぱり対人練習しないとね」


俺は、練習相手がいることに感謝して、タルヤと訓練を続けるのだった





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― 新着の感想 ―
[一言] タルヤも無事に生き残って欲しいな…このダンジョンの最下層目指そうとしたら良いチームメンバーが来るように祈るしかないなwwそれか教官が融通してくれるならいけるだろうけど、 ギガント達はもしま…
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