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閑話7 違法変異体研究施設の制圧

用語説明w

龍神皇国:惑星ウルにある大国。二つの自治区が「大崩壊」に見舞われ、現在復興中


MEB:多目的身体拡張機構の略称。二足歩行型乗込み式ロボット


セフィリア:龍神皇国騎士団の団長心得。B+の戦闘力を持つ。ラーズの遠い親戚で、五歳年上の憧れの竜人女性

フィーナ:ラーズの二歳下の恋人。龍神皇国騎士団にBランク騎士として就職している。魔法に特化した大魔導師

ピンク:カイザードラゴンの血を引く龍神皇国の貴族で、騎士見習い。カイザードラゴンのブレスを纏った特技(スキル)の威力は凄まじい


龍神皇国 南東


隣国バティアとの国境付近



ドッガァァァァァァァン………!



ドドーーーーン………



激しい戦闘が繰り広げられている



「状況は?」


「東、西、裏門を制圧して侵入成功、正面入口のみ制圧出来なかったため、時間稼ぎのプランFに移行しました」


話しているのは、金髪の龍神王セフィリアとサイバービーナスのオリハ

それぞれ、Bランクの実力を持つ龍神皇国騎士団の騎士だ


「正面入口の戦況は?」

セフィリアが、煙を上げ始めた施設を眺める


「クレジットクイーンのミィが陽動中です。並行して、オーシャンスライムが扉の機構部に侵入したとのことで、間もなくてコントロールを奪取できます」



オーシャンスライムとは海の力を持つスライム

ミィの使役対象であり、スライムであるため機関部の隙間から侵入してコントロールを奪うことができる


ミィ自身もBランクの騎士だ



ここは、ネット空間と情報の申し子オリハが発見した違法変異体研究施設

現在、龍神皇国騎士団による制圧作戦中だ


龍神皇国騎士団は、世界でもトップレベルの実力を持つ

間もなく施設の制圧は終わりだろう


だが、今回の最終目標は()()()()()()




「…後は、侵入した制圧班に任せるしかないわね」


「フィーナがいれば、部隊の実力は数倍に跳ね上がります。失敗確率は十パーセント未満です」


セフィリアとオリハは施設の観測を続けた




・・・・・・




ゴシャッ!


ゴッ!


ドガァッ!



ハンマーを持った戦士が、高速で動き回りながら敵をなぎ倒していく


この施設の守備は、パワードアーマーとMEBが主だ

主力武器は銃と魔法だが、この戦士の纏う闘氣(オーラ)にダメージを与えることができない

そもそも、動きを捉えられず攻撃がほとんど当たらない


インファイトハンマーのボルドー

ハンマーを使うBランク戦闘員だ


正式な騎士ではないが、セフィリアの要請により応援で作戦に参加している


「MEBが多い! 爆弾や砲撃で証拠隠滅をさせないために機能を停止させろ!」


連れて来ているCランク以下の一般兵に指示を出しながら、ボルドー自身が次々と敵の機能を停止させていく



「前方からガードロボットが向かてきているわ。キミコ、一人で対応して」

黒髪、赤色の目をした女性魔導士が言う


「フィーナ…。あんた、私のこと嫌いなの?」

眼鏡をかけた女性魔導士が、フィーナの冷たい口調に不思議そうな顔をする


「…大崩壊の元凶のくせに、当たり前のこと言わないで。あんたの極大魔法のせいで、私の大切な人が何人も亡くなっているんだから」



黒髪、赤色の目の魔導士はフィーナ

騎士団でも注目をあつめている実力派の魔導師で、攻撃、補助、回復魔法を使うため、パーティの実力を数段引き上げるキーマンだ

漆黒の艶めく髪を持つエキゾチックな美女であり、黒髪の大魔導士と呼ばれている


そしてメガネの魔導師はキミコ、物理学者と呼ばれている

世間には伏せられているが、極大魔法を発動してあの大崩壊を引き起こす原因を作った大罪人である


仮に通常の裁判をした場合、数百回は死刑になる必要がある

しかし、当然ながら死刑は一回しか適用できないため、やむを得ず保留

その条件として、生涯国のために働くという契約を結ぶに至ったという経歴を持つ


セフィリアの監視のもと、極大魔法の発動経験者である、その高い能力を使って各ミッションに臨んでいる



「ふぅ…」


キミコはため息をつきながら、ボーリングのボールのような塊を三つ、土属性魔法で作り出す



普通の魔導師は、土属性投射魔法を発動する場合、魔力を二つの用法に使う


一つは個体の生成で、その強度と質量が威力を決める

もう一つが個体に運動エネルギーを与える作用で、作り出した個体を飛ばすのに使う

この物体の速さと固さ、重さによって、威力が変わる


だが、物理学者キミコは違う

魔力の総てを土属性に使って個体を生成、更に力学属性を使って運動エネルギー与える

そう、キミコの投射魔法はダブルマジックなのだ



ドンッ ゴガッ グシャッ!


三つの塊は、とんでもない勢いでガードロボットを貫通、粉砕、叩き潰した



その間に、フィーナが範囲魔法で守備隊を殲滅

倒した守備隊の人間から、テレパスハックでコントロールルームの場所を聞き出した


「ピンク? コントロールルームの場所が分かったわ、ルートを確認してね」


「分かった、フィー姉、任せて!」


赤髪の竜人女性が、剣を振るいながら守備隊やガードロボットを倒していく

こちらも、闘氣(オーラ)を使っているBランク戦闘員だ



ピンク・カエサリル


龍神皇国の有力貴族、カイザードラゴンの血筋を引く騎士見習いだ

見習いながらドラゴンブレスを習得しており、火属性を纏って戦う姿は小さなドラゴンのようだ



「…敵だ、気を付けて!」


一般兵である、Cランク戦闘員のボッシュがピンクに声をかける



コントロールルームの前には机や建築資材を積み重ねたバリケードが築かれ、守備隊が籠城している


そして、そのバリケードの前に一人の男が立って待ち構えていた


「Bランク…」

ピンクが呟く


闘氣(オーラ)特有のプレッシャーを感じる

新人騎士であるピンクの、初めてのBランクとの実戦だ


男が魔法を発動

周囲に立体的な魔法陣が展開される


「…召喚魔法!?」

ピンクが叫ぶ


男の周囲の空間が歪む

その歪みから巨大な腕が現れた


「まさか、ヘカントケイル?」

ボッシュが目を見開いた


ヘカントケイルとは、百の腕を持つという伝説の巨人

個体名ではなく、異界に住む多数の腕を持つ巨人の総称だ


四本の太い腕が、男の周囲に現れて固定される


召喚魔法にも種類があり、

・契約した対象を呼び出して使役する

・無作為に呼び出す

・エネルギーを引き出す

・体の一部を呼び出して使役する

などの方法がある


今回は、召喚対象の体の一部を借り受ける召喚魔法のようだ

どうやら、巨人の四本の腕を同時に扱うらしい


「強敵だ…。ボッシュさん、下がって下さい」

ピンクは大きく息を吸い込むと、前に出る


闘氣(オーラ)を纏うピンクでなければ、一般兵はあの腕に簡単に殺されるだろう


「お気をつけて…!」

ボッシュが悔しそうに、でも邪魔をしないように後ろに下がった


「行くよ…!」

ピンクが剣を構えて、力を込める



その時…


「…ピンク、何をやってるの?」

物理学者キミコが、土属性の楔を浮かせながら廊下を歩いてきた


「制圧は終わったぜ。被検体達も確保済みだ」

インファイトハンマーのボルドーも散歩でもするように歩いて来る


「ピンク、最後の見せ場じゃない、頑張って!」

クレジットクイーンのミィが、オーシャンスライムのスーラを肩に乗せて合流


「後はコントロールセンターを制圧すれば終わりね」

黒髪の大魔導士、フィーナも姿を現す


「あ、じゃあ後は…」

ピンクがみんなの顔を見回す


「ええ、後はピンクがあいつをやっつけるだけ」

ミィがニカッと笑う


「えー! 私一人でなんて…!」


「ピンクなら大丈夫だ。思いっきりやってみろ」

ボルドーが力づける


「フィーナの補助があれば一撃で終わるんじゃない?」

キミコが興味無さそうに言う


「はい、身体強化魔法(中)、属性強化魔法(中)…、自信を持って?」

フィーナが補助魔法をピンクにかける


「う、うん…」

ピンクは、言われるがままに剣を構える


属性を強化、更に身体強化魔法で攻撃力を上げる


ちなみに、精霊魔法の使い手がいれば特定の属性を強化できるため、ピンクの火属性を更に威力増し増しにできる

属性強化魔法と特定属性強化を合わせてW属性強化と呼ぶ


ぺちゃくちゃとしゃべりながら、一番弱そうな年下の女に攻撃を任せる

そんな騎士団の面々の態度に、男がバカにされたと思ったようだ



「な、舐めるなーーー!」


ブチ切れて四本の腕で攻撃に入る男



対して、輪力を練って高熱のドラゴンブレスを剣に纏わせるピンクの一撃




「カイザーブレス…、竜皇剣(りゅうおうけん)!」


ドッーーーーーーーーーー………!




………




……







…後には、バリケードごと高熱で融解した男の死体が転がっていた



「…ピンクって、自分の攻撃力が異常だって気が付いてないわよね」

「フィーナの補助魔法、いらなかったんじゃない?」

「有望な若い新人が入って喜ばしいことだな」

「…私達はもう若くないって言いたいの?」

「いや、そういう意味じゃ…」

「男って、すぐ若い子に目が行くから」

「だー、めんどくさい! 俺から見ればお前らなんか全員新人だ!」



ボルドーが女性陣にいじられている頃…


「ラーズは…?」


「発見できなかったそうです」


セフィリアとオリハが報告を受けた


この施設から変異体の貴重な研究資料、被検体、サンプルが手に入った

しかし、残念ながらここはラーズが拉致された施設ではなかった



「…そう、残念だわ。みんなお疲れ様」

セフィリアが残念そうに言う


「まだ三か所ほど、変異体の研究施設と思われる場所を把握しています」


オリハが、自身と接続する量子コンピューター、コスモから受け取ったデータを見ながら言う



ラーズはまだ見つかっていない






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[一言] オリハ見つけてくれよぉ…!
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