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三章~3話 基礎訓練2

用語説明w

ナノマシン集積統合システム:人体内でナノマシン群を運用・活用するシステム。ラーズの身体導入されているが、現在は停止措置を施されている


相変わらず基礎訓練が続いている

戦闘訓練、そしてBランク相手の鬼ごっこ、拷問訓練…


被験体全員が精神的に追い詰められている


戦闘訓練では、必死に技術を高め合う

Bランクが襲ってくる地獄の鬼ごっこで、少しでも被弾を減らすためだ


「Bランク相手に正面から戦うな! 逃走経路を確保しろ!」


襲ってくるBランク戦闘員の教官


移動速度がそもそも違う

どうしても追い詰められてしまう


最後の抵抗で武器による攻撃

闘氣(オーラ)の防御力は破れないが、隙を作れる可能性はある



ドシュッ…


「ぎゃあぁぁぁぁぁっ」



響く悲鳴


砕ける骨の音


吹き飛び、叩きつけられる音



鬼ごっこはギガントとドラゴン

サイキック訓練はエスパーとドラゴンが合同で行われる


タルヤの姿がチラッと見えたが、目の下に濃い隈ができていた

少し心配になったが、タルヤは気丈にも俺に手を振ってきた


…タルヤは強くなった

俺も頑張らなきゃ



「ぎゃーー!」


「があぁぁぁぁぁっ!」



悲鳴が続く、拷問訓練


何も感じなくなってくる…、なんてことはない

痛いものは痛い、ただ、その痛みを知っているだけだ



「痛みに慣れろ。自分で呼吸を止めれば意識を失うこともできる、習得しろ」


「ぐあっ、や、やめてくれーーーーー!」



苦痛、痛みが繰り返される



「人間が得られる幸せとは、自由であることだ。そして、その幸せを感じるためには理解する必要がある」


「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!」


「拘束、それは本能的に恐怖を感じる行為だ。一方的に暴力を受ける恐怖、これをしっかり感じて慣れろ」


「た、た、助け…、があぁぁぁぁぁぁっ!」


「そうすれば、普通の訓練など天国だ。そして、()()()()()()()()()()()()()()


「がぁぁっ…ぐあぁぁっ…あぁぁぁぁぁっ…!」



訓練は続く


さすがにステージ2まで生き残っただけあって、脱落者は少ない

だが、心が壊れた少数は、容赦なく肉として出荷されていった




………




……







繰り返される訓練に、やっと変化が訪れた


戦闘訓練が一段階進んだのだ



「今日から、新しい訓練に入る!」

トラビス教官に言われて訓練場に入る


敵が何人か散開していた


「敵は本物の銃や杖を持ってお前達を殺しに来る。攻撃を受ければ致命傷となりうる、きっちりと止めを刺せ!」



被験体が、順番に一人づつ訓練場に入っていく



ドガガガガ!


ボボォォォン…


ドッガァァァァァァン!


ゴオォォォォォッ!



銃弾や爆弾、魔法の音がする



「ぎゃあぁぁっ……!」


「や、やめ…!」


「た、た、助けて!」



戦っている敵の悲鳴や命乞いが聞こえる


さすがは、訓練を受けた変異体の強化兵士だ

武器を持った相手を、近接武器でどんどん倒していく


「へっ、見たかよ!」


「簡単だったぜ。教官相手に比べればよ!」


笑いながら被検体達が出て来る

難易度は低いのかもしれない



「D03、お前の番だ」


「…」



俺は、呼ばれて訓練場に入った

匂いと音、七人ほどの敵の存在を確認する


「武器は自分のもの、敵のもの、何を使っていい。全滅させたら終わりだ」


教官の言葉で訓練が始まる



心を落ち着ける

冷静に


ゆっくりと静かに移動しながら敵の存在を探る


…一人、近くにいる

壁のように積み重なった土嚢の影から一人が姿を表した



ゴキャッ!


流星錘が頭を一撃で叩き割る



こいつが持っていた銃を取り上げる

サブマシンガンだった


続いて索敵

また一人近くにいる


障害物を使って後ろから忍び寄る



「ぐむっ…!?」


口を塞ぎながら、ナイフで喉をかっ切る



また銃が手に入った



ザシュッ…


ゴガッ!


ドシュッ…



一人づつ、落ち着いて処理していく


ドラゴンタイプの五感があれば敵の位置が分かる

更に、俺には軍時代の経験もある


音の出る銃を使うよりも、近接武器で仕留めた方がリスクは少ない



最後の一人


ゆっくり近づくと…



「なっ…!?」



最後の一人は女だった

そして、明らかに重傷を負っている


頭には包帯

足にはギブスか?


肩が小刻みに揺れている

呼吸をするたびに痛みが体を走っているのだろう

重傷を負った時に、俺も何度か経験がある


そんな状況で、女はサブマシンガンを持っていた


…こんな状況で、よく殺し合いに参加したな



「あっ…!」


ドガッ!



女が振り向いた瞬間、サブマシンを蹴り飛ばす

女が尻餅をついて、苦痛のうめき声を漏らした


武器を回収して終わりだ

俺が出口に向かおうとすると…



「D03、ラーズ。止めを刺すまでやれ」

トラビス教官がやって来た


「え? 勝負は…」



バキッ!


「がっ…!?」



トラビス教官の拳が俺の頬にめり込む


「お前は戦闘訓練を舐めてるのか? 私は止めを刺せと言ったはずだ」


「…」


俺は女に視線を向ける

重傷の痛みで動けなくなっている


こいつを殺せって言うのか?


「強化兵に情けはいらない。女だろうが子供だろうが、姿を見られたら殺せ。必要なら略奪しろ。余計な感情に脳みそを使うな」


「ですが、この女はもう…」


「こいつはステージ1の選別で負傷した死刑囚だ。お前達に止めを刺させるために、わざわざステージ3で再利用したんだぞ?」


「…っ!!」


「その女は、自分の子供を殺したらしい。弱いものは親にさえも殺されるんだ。弱肉強食と食物連鎖が世の中の心理だ。さぁ、やれ!」

トラビス教官の口調が、だんだん熱を帯びて来た


「…」


俺は今まで、散々殺してきた


ステージ1でも、ステージ2でも、そして、戦場でも

何度も手を汚してきた


だが、殺す理由のない相手を殺す

自分に言い訳の出来ない殺しをする


嫌だ



「くっ…!」


その時、女が動いた



隠し持っていた拳銃を抜いて俺に向ける

その顔は、必死だった


弱肉強食


殺されないために、相手を殺す


それは、社会の中の弱肉強食とは比べ物にならない()()()()()()



ゴキッ!


「あ…」



女の喉に膝を突き刺す

一発で首が折れ、命を刈り取った



「よし、よくやった。お前は強化兵だ、任務のためには躊躇なく殺し、奪って、喰らえ。勝手に殺されるという自由も、お前達にはないのだからな」


「…」



トラビス教官が闘氣(オーラ)を発動する



「なっ…!?」


ドゴォッ!



闘氣(オーラ)の乗った拳が俺を吹き飛ばす

訓練場で、血反吐を吐いて転げ回る


「ぐはっ…」


内臓が破裂したような音がした


「二度と私の手を煩わせるなよ」

そう言って、トラビス教官は訓練場を出て行った



そう言えば、俺の前に訓練場に入って行った被検体達


笑いながら訓練場から出てきたが…

ここで戦わされた奴らを皆殺しにして、あの笑顔をしていたのか


結果的に、やったことは俺も変わらない

倫理観なんてものが消し飛んでいく


生きるために仕方ない、この理由が全ての行動を肯定してしまう



被検体達は、戦闘訓練、鬼ごっこ、拷問訓練、そしてこの虐殺訓練…

終わらない訓練を延々と続けて行く


そして、精神を作り変えられていった




「いいか、お前達は家畜だ! 畜産されているただの肉候補だ! 死にたくなければ自我を捨てろ! 目的のために最高効率で動くマシンになれ!」


「動けなくなったら言え! 死にたくなったら言え! すぐに精肉して出荷してやる!」


「お前達はただの資源だ! 資源は価値を証明しなければゴミに成り下がる! 動け! 殺せ! 自分の価値を証明しろ!」



俺達被検体に共通で芽生える感情


…この野郎共を絶対に殺す

この施設を出たら、拷問訓練を受けさせた後に殺してやる



だが、Bランクは強い

我慢しきれずに襲い掛かった被検体が、一瞬で切り刻まれた


闘氣(オーラ)が強すぎる…


俺達はどうなるんだ

いつまでこんな訓練が続くんだ


そんな悩みに、貴重な睡眠時間を削られていると…



カリカリカリ…



個室の壁を、俺の左肩のナノマシンシステムが削っている


ナノマシンシステムは相変わらず反応が無い

唯一存在を感じるのは、壁を削って取り込んでいるときだけだ



「はぁ…」


先が見えない



タルヤは元気だろうか…






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― 新着の感想 ―
[一言] タルヤも変わらずに居てくれるといいなぁ……それとナノマシンが可愛く思えてきたwwカリカリってのがなんか動物みたいでw
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