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二章~16話 流星錘

用語説明w

ナノマシン集積統合システム:人体内でナノマシン群を運用・活用するシステム。ラーズの身体導入されているが、現在は停止措置を施されている


ヘルマン:ドラゴンタイプの変異体。魚人のおっさんで元忍者、過去に神らしきものの教団に所属していた

タルヤ:エスパータイプの変異体。ノーマンの女性で、何かに依存することで精神の平衡を保っている


ヘルマンとタルヤに担がれ、診療室に運び込まれた


「あら、左肩の脱臼、肩甲骨骨折、肋骨もかなり折れてるわね…」

セクシーな赤髪のナースさんが、回復魔法をかけて回復薬を処方してくれた


「今日の選別の相手はかなりの強敵だったみたいね?」


「そうね…」

タルヤがヘルマンをチラッと見る


「ラーズ、すまなかった」

ヘルマンが頭をかいている


俺は我を忘れていたため覚えていないが、ヘルマンの発勁を全力で喰らった

今回の発勁は氣力を使うものではなく、純粋な身体操作による打撃だ

変異体の筋力と相まって、とんでもない威力だった


普通に死ねるぞ…



「あなた、D03のラーズよね。そろそろ定期健診をしなきゃいけないんだけど、毎回怪我してきてるわね?」


「ええ…、最近、怪我が多すぎて…って、ちょっと! ナースさん!?」


「それじゃあー、怪我が治ったらー、すぐにお姉さんの所に来てくれるー…?」


「ちょっ、ダメだって! ズボン脱がさないで、痛いんだって手が!」


ナースさんに、ズボンの中に手を突っ込まれる


まずい! まずい! まずい!

触られただけでまずいって!

ほら、元気になってるから!


…俺は中学生か!?



「…はい、怪我が治ったら定期健診ね。私が連れて来るからもういいでしょ?」

タルヤが、ナースさんの腕を引き抜く


「あら、もしかして邪魔しちゃったかな? 怪我が治ってなくても、気持ちよくなりに来ていいからね?」


女性の魅力というエネルギーは、数値にするとどのくらいなのだろうか

時に、ギガントのパンチよりも脳がゆれるぞ?


「…ラーズ、行くわよ!」

ちょっと不機嫌なタルヤとヘルマンに連れられて、俺は診療室を後にしたのだった


タルヤ…

不機嫌になってるけど、ちょっと前までナースさんと同じ立ち位置だったかならな?


だが、危なかった…

普通に爆発しそうになってしまった…


くそっ…、俺だって本当は…




・・・・・・




今回の選別の反省として、少し休息を入れることになった


食堂に行き、三人で腹ごしらえ

生き残った後の飯はうまいぜ


「今回は全員のコンデションが悪かった。疲労を適度に抜いて、選別の生き残りに備えるべきだ」

ヘルマンが言う


「でも、早く技を覚えないと…」

タルヤが心配そうに言う


「タルヤは、最低限の自衛方法を覚えた。元々、強力なサイキックを使えるんだから大丈夫だ。俺とラーズと組んで役割分担すれば、選別も戦える」


「う、うん…」


タルヤは自信が無さそうだが、テレキネシスでの戦闘力、そして索敵能力は凄い

エスパータイプの有用性を改めて感じた


結局、ヘルマンの言葉でタルヤも安心したのか納得

三人で飯を食べた後、今日は自由時間となった



個室に戻って少し眠ると、骨折の痛みはかなり引いていた

この施設に来る前に比べて、治癒力が段違いに上がっている


俺が軍時代に受けた強化手術、ナノマシン集積統合システムの回復力にも負けないくらいだ

しかも、完成変異体になったことで食べる量が格段に増えた

栄養を備蓄してガンガン使えるため、長期的な回復力は今の方が上かもしれない



一眠りして目が覚めると、俺は運動場にやって来た


今日の休息日はちょうどいい

一人で試したいことがあった


…武器の選定だ


俺が使っている武器は、

・トンファーとしても使える特殊警棒

・投げナイフ

・ファイティングナイフ

・ハンマー

の構成だ


だが、納得はいっていなかった

この武器で、一番攻撃力があるのは投げナイフだからだ


攻撃力というのは、殺傷能力と当てやすさを総合的に判断したもの

投擲という行為は、長物だろうが、打撃武器だろうが、刃物だろうが、近接武器相手には射程という絶対的なアドバンテージを持つ

だが、当然ながら数が限られているという弱点もある


俺が近接武器での扱いで自信があるのは、ナイフぐらいだ

だが、ナイフの真骨頂は超接近戦

ナイフ同士の間合いならともかく、剣や槍相手にナイフで勝てるとは思えない


そこで投擲武器を使って隙を作り、突っ込んで超接近戦に持ち込むか、ガードの上からハンマーで叩き潰すという戦法でやって来た


「…」


だが、今回理解した


(サイ)使いの攻撃を防げず躱せず、近距離での殴り合いに持っていかれた

刃物相手だったら確実に殺されていた

勝てたのは、変異体の身体能力が有ったからだ


このままだと、間違いなく限界が来る

勝てない敵が出てきてしまう



「…」


そして、一つのアイデアを思い付いたのだ



前回の選別で戦った()()

強力な破壊力と長い射程


そこから得たイメージだ


…紐のついた投擲武器

これならどうだろうか?


投擲武器でありながら、回収が容易

遠心力を利用して、破壊力も高い

ハンマーのように、防具の上からもダメージを与えられる可能性がある


()()()()()()()()()()()()()()()()


つまり、今の俺にピッタリの武器ではないか!?



このアイデアを試してみたくて、一人でやって来たのだ

さっそく、武器の入った箱を探してみる


「これだ」


鎖ではないが、紐の先に細長い重りが付いた武器があった

流星錘(りゅうせいすい)という武器だ



流星錘(りゅうせいすい)


三メートル程度の紐の先に(すい)という金属製の重りが付いた武器

(すい)を投げたり、振り回したりして攻撃する

遠心力を乗せやすく、回収もしやすい武器



この流星錘の重りは、少し尖った円柱のような形をしている

拳で握りやすい形だ

近接時は、握り込んで拳を固くするか、尖ったところで突くなどの使い方をすればいいかな?



さっそく使ってみるか


俺は、ドキドキしている

自分のアイデアを試す時の高揚感は好きだ

特に、解決したい問題があるときはなおさらだ


的に目掛けて、振りかぶって投げる



ゴガッ!



いい音がして的に錘がめり込む

うん、いい威力じゃないか


今度は軽く右腕で錘を回しながら…



ドゴッ!



ぶつかった瞬間に紐を引く


…隙、大きくね?


鎖鎌と戦った時もそうだったが、錘を躱した瞬間に俺なら突っ込む

この時に、どうやって対処するか?


…反対の手で武器を持っておくしかない

つまり、片手で流星錘を扱う練習が必要ということだ


左手にナイフを持ち、右手に流星錘


投げ、打ち、回転させながらの発射…

隠し持った状態での投げ、紐を持っての叩きつけ、錘を握っての突き



うん、まだ慣れていないが、俺に合ってる気がする


俺は軍時代に魔石装填型小型杖という武器を使っていた

使い切りの単発魔法が封印された魔石を装填して使う短い杖で、魔導士用の杖が持つ魔法を強化する機能を削った代わりに持ち運びの利便性を上げたものだ


この小型杖は三つの魔石を装填出来て、魔法を発動するには杖を振る

そうすると、魔法弾が飛んでいき、封印された魔法が発動するのだ


軟化の魔法で対象を柔らかくしたり、睡眠や混乱の魔法で対象に精神作用を与えたり

俺がよく使っていたのは、力学属性引き寄せの魔法弾だ

魔法弾の着弾地点に俺が引き寄せられるという効果で、高速移動を可能としていた



…この流星錘も、小型杖を振って魔法弾を飛ばす感覚に似ている

思ったより、すぐに馴染めそうだ


どうせ最初からはうまくいかない

何度も繰り返す反復練習のみが上達方法だ


諦めずに、地道に続けよう



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― 新着の感想 ―
[一言] そろそろ発散せなヤバくなって来たかなぁ?我慢してるしストレス溜まってそう
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