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一章~1話 最初の選別

用語説明w

変異体:遺伝子工学をメインとした人体強化術。極地戦、飢餓、疲労、病気、怪我に耐える強化兵を作り出すが、完成率が著しく低い


突然、俺は壁に囲まれた閉鎖空間の放り込まれた


…ここは床に土が敷かれ、壁と天井は金属製、そして照明が明るく周囲を照らしている



やっと動けるようになってきたとはいえ、俺の体調は最悪だ


体は重く、頭痛が響き、内臓が暴れ回り、関節も痛む

俺の体で何かが起こっているのが分かる



…そんな俺の前には一人の男が立っている

顔にタトゥーを入れた、明らかに悪そうな男だ


手には、先端が太くなった大きめのナイフを持っている

マチェットナイフというやつだ


体格は華奢で痩せている

体が若干震えており、ドラッグの禁断症状のようにも見える



「おらぁぁぁっ!」


男がナイフで斬りかかってくる



ブンッ!


「うあっ!?」



俺はなんとかナイフを避ける


い、いったい、何でこんなことに………!?




・・・・・・




…やっと、ベッドから起き上がれるようになった


「明日からステージ1だ」


そんなある日、突然研究者から言い渡された


「…ステージ1?」


「お前が、商品としてやっとスタートラインに立てるということだ。ステージ1で自分の体の価値を高め、ステージ2を目指せ」


「商品…? 何を…」


口が上手く動かない

そんな俺の言葉を、研究員が無関心に遮る


「お前はただ言われたことをしていればいい。疑問など持つな」


「…」


「お前は元軍人なんだろう? 変異体の商品としては優良物件だ、期待しているぞ」

そう、一方的に言放った


そして次の日、今までの個室から別の区画の部屋に移動させられた

ここがステージ1の区画らしい


検査やら点滴やら薬やらは続いているが、気持ちの悪いババアが部屋に来ることはなくなった


…だが、相変わらず、朦朧とする意識、頭痛、吐き気などに悩まされる


更に、あるはずのない、幻覚、幻聴

そして、いやにはっきりとした戦場の臭い…


流動食をすすり、トイレに行き、たまに吐いて、そして寝るだけの生活

だが、それでも起き上がれるというだけで改善の傾向だ


…そして、更に数日経つと、俺はある程度歩けるようになるまで回復した



そして今日、突然研究者達が守衛を連れて部屋にやって来たのだ


俺は、何の説明もなく突然ここに連れてこられた

そして、中に立っていたのが、顔にタトゥーのこの男ってわけだ



「ここは…?」


「ここは選別場だ。そして、あれがお前の初めての相手だ」

俺を連れて来た研究者が言う


「…相手?」


「ステージ1でやることはシンプルだ。()()()()()()()()()()()()、これだけでいい」


「こ、殺す?」


何を言ってるんだ!?


「これは選別であり、殺し合いだ。当然、相手もお前を殺しにくる。負ければ、死ぬのはお前ということだ」


「…な、何で…殺し合い…なんか…?」

呂律の回りづらい舌を何とか動かして、研究者を見る


「初戦は()()()()()()。…だが、相手は殺人経験がある死刑囚だ、気をつけろよ」


そう言って研究者は、この選別場から出て行く



ズズゥゥーーン…



そして、重そうな扉が閉められ、俺とこの死刑囚の男の二人が残されたのだ



「…」


男は、俺をじろじろと値踏みするように見た後、突然大声を上げた


「おーい! 本当に、こいつを殺せば俺は自由になれるのか!?」


すると、天井に設置されたスピーカーから声が響く


「あーあー、聞こえているな。…約束しよう。生き残りをかけて存分に戦え」



だから、何を言ってるんだ!?

何で殺し合いなんかしなくちゃいけないんだ!?


しかも、あいつはマチェットナイフ、俺は素手だぞ!?



「い、意味が分から…」


「へっへっへ…、ついてるぜ。こんなひょろい野郎を殺せばいいんだろ? 楽勝だぜ」

死刑囚の男がニヤリと笑う


こいつは、この異常な状況で、なんの疑問も持たずに殺人を行うつもりらしい


男がナイフを振り上げる

そして、走りながら斬りかかって来た



…完全に素人の動きだ



こいつ、人を殺したって言っていたな

どうやって殺したんだ?


格闘技や武術を学んだ動きではない



俺は軍人だ


軍で格闘技や武術を学び、暗殺術の指導も受けたことがある

この技術で、俺はモンスターやテロリストと戦ってきたのだ


その俺に、ナイフを持ってるとはいえ、こんな素人を相手に…



「…うわぁっ!?」


ブンッ!



ナイフが勢いよく、俺が立っていた場所を通り過ぎた

ぎりぎりで避けたのだが、俺の足が無様にもつれて転びそうになる



「あ…あ……!」


…もつれたのは、体調不良が原因ではない


ある感情が、俺の頭を占領したからだ



()()



斬られるのが怖い


攻撃されることが怖い



俺は、目の前の男に対して凄まじい恐怖を感じている

さっきから俺の体は硬直し、まともに動けない


振り上げられるナイフから、目を背けてしまいたくなる



「おらぁっ! 抵抗すんじゃねー!」


恐怖で動けない俺を見て、男がますます調子付く


何度もマチェットナイフを振るう男

恐怖にかられ、ドタドタと後ろに後ずさるしかできない俺


軍出身の俺が、ナイフ一本に恐怖している

俺はいったいどうしたっていうんだ!?



俺の心の中で何かが起こっている


…男の攻撃が見えた時、()()()()()()()()()()()()


そいつは、影のように真っ黒で輪郭がぼやけている

そして、俺の中で必死に口を動かしている


…まるで何かを叫んでいるようだ


だが、俺まで声は届かない


代わりに届いたのは大きな恐怖だった


そいつは、声ではなく恐怖を巻き散らし始めたのだ



「オラオラ!」


ガッ! ゴッ!


「う…、くっ…」



撒き散らされる恐怖が、俺の心臓を鷲掴みにする


体が動かない

足が震えて歯がカチカチと鳴る


…圧倒的な恐怖


恐怖で固められた俺の顔に、男のパンチが飛んできた

男はいたぶるように、ナイフを使わず拳を振るう



ゴッ!


「うぁっ…!」



必死に両腕で顔を守るが、腕と腕の間に拳が入り顔に被弾

唇が切れて、血の味がする


ダメだ

怖くて目をつぶってしまう



「へっへっへ…」

口をぺろりと舐めて、ニヤリと笑う男



痛い


殴られるとこんなに痛かったか?



怖い


攻撃されるって、こんなに怖かったか?



あれ?


俺は今までどうやって戦ってきたんだ?



男がまた拳を振り上げる

勢いをつけて思いっきり殴って来る



「あ…」


その男の動きを見た瞬間

攻撃されると理解した瞬間


()()()()()()()()()()()()()()


声は聞こえない

その代わり、また心の中で恐怖を巻き散らす



「うぅ…!!」


…怖い



体が硬直し、全身が震え、膝が笑う

ガッチガチに体に力が入り、上手く動けない


まるで何かに取り憑かれたようだ…!



ドゴッ!



フック気味のパンチが頬に当たり、俺は仰け反って尻餅をつく



怖い…!


怖い…!


怖い…!!



ドガッ!


「ぐぁっ…!」



男が俺の顔を蹴り上げる


倒れた俺に平然と追撃


こ、こいつは殺す気だ…

研究者に言われた通り、俺を殺す気なんだ…!



怖い


死にたくない




…何で?


え?




お前だけ生き残っていていいのか?


え…




お前の仲間は全員死んだんだろ?





ドスッ…!


「がっ…!?」



気が付くと、男のマチェットナイフが腹に刺さっていた


「考え事とは余裕だなー、それとも恐怖で現実逃避かぁー?」

男は余裕ぶって俺を見降ろす


「…あ…ぁ……!」



まずい…


ガッツリ刺さっている


一瞬、意識が飛んでいた…!?



「…」


俺は、ナイフが刺さったまま立ち上がる



痛い


怖い


殺される



だが、思い出した


攻撃されると死ぬ


俺の仲間は死んだんだ



ゾワ…



俺も死ぬ?


嫌だ


死にたくない



ゾワ……



怖い


嫌だ



背中で何かがゾワゾワとうごめく…



「嫌だ…」


「あ? 何だって?」



男は大げさに俺に耳を向けて来る



「あ…」


口が動かない



俺は意識しないまま前傾姿勢を取る



こいつは殺す気だ


死にたくない



「あぁ…」



死にたくない!


「ああぁぁぁ…!」



嫌だ!


死にたくない!



ゴッ!


「ぐおっ!?」



殺されるという恐怖が、()()()()()()()()()()()()()()退()()()


体が勝手に動き出す

男に意識が集中、それ以外が意識の外に消える


恐怖も、思考も、何もかもが消えていく…



ドッ!


「ブァッ!?」



突然振るわれた拳に男が驚く

顔面が弾ける



ゴッ!


ドガッ!


ゴシャッ!



ふざけるな…!


殺されてたまるか!



ドスッ!


ボコッ!


ズドッ!



「ひっ…!」


男の悲鳴は俺の耳には入らない



死んでたまるか!


何が何でも…!


お前が死ね…!





………





……









「やめろ!」


「…っ!?」



突然、後ろから羽交い絞めにされる

気が付くと、パワードアーマーを着た守衛が三人、この選別場に入って来ていた



「…あっ……!」


…我に返った俺の目の前には、グチャグチャに殴られ続けた男が転がっていた




別室


選別場のモニターを見ながら白衣の研究者が話している


「よくあのナイフが腹に刺さって動けましたね」


「よく見ろ、先端しか刺さっていない。ケプラー素材並みの皮膚の硬化だ。こいつの強制進化は上手く進んでいるようだな」


「…でも、あの被検体って元軍人なんですよね? 全然戦えないじゃないですか」


「ここに来る奴なんて訳ありばかりだ。どうせあいつもトラウマ抱えてるんだろ。…だがあいつ、殴られるときに急所だけはしっかり守っていたな」




一章開始です


この世界で起こった「大崩壊」をメインとした話


https://ncode.syosetu.com/n5240ga/

ですペア ~平凡な一般兵の苦悩~ 魔法、実弾兵器、スキル、ブレス、オーラ、召喚…即死級攻撃が多すぎる!

も、よろしくお願いします♪

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[一言] ラーズのいままでの経験が生きてない…?新しい体になったからなのかな?それとも何かトラウマでもできてしまったのかな? ラーズは売られるらしいし、いつかセフィリア一味と会えるといいな〜 フィーナ…
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