表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/394

二章~5話 二回目の選別

用語説明w

この施設:ラーズが収容された謎の変異体研究施設、通称「上」。変異体のお肉も出荷しているらしい


変異体:遺伝子工学をメインとした人体強化術。極地戦、飢餓、疲労、病気、怪我に耐える強化兵を作り出すが、完成率が著しく低い。三種類のタイプがある


ピーーーーピーーーーピーーーー!!


「只今より、選別が開始されました。活躍を期待します。繰り返します、只今より……」



一斉放送と警報が鳴り響く


俺とヘルマンは朝食を終えて自室に戻るところだった


「ラーズ、武器を取れ!」


「はい!」


俺は自室に戻ると、用意しておいた武器を身につける


ショートソード、ナイフ、小ぶりのハンマーを腰に

たすき掛けのベルトに投げナイフが三本

そして槍だ


廊下に出ると、すでに戦いが始まっていた


「お前達、奥から食堂方向に行け!」


「え!?」


エスパータイプの男が、テレキネシスでナイフを空中に保持しながら声をかけて来た


「被検体が集まりすぎると、その分、敵が集団で集まって来て危険だ。分散して各個撃破しないと囲まれる!」


「分かった!」


ヘルマンが答えて、俺と二人で食堂へ向かった




「…っ!?」


廊下の先に、二人の人影

鎧を着た襲撃者だ


「ラーズ、俺が右に行く!」


「了解!」


ヘルマンが曲がり角を右に曲がり、襲撃者が一人追って行く

俺は、残った鎧野郎と一対一(タイマン)



俺は槍を構える


それを見て、鎧野郎も構えた

左手に小型のラウンドシールド、右手にロングソードを持っている



「はっ!」


槍を突く



盾で刃先を叩かれ、いなされるが、俺はすぐに槍を引いて二撃、三撃に繋げる


右手のロングソード側を突く

鎧野郎が、ロングソードで槍を押さえた


来た!


俺は槍の穂先を回してロングソードを絡めるように上へ弾く



「なっ…!?」


鎧野郎が驚きの声を上げる



俺の持っている数少ない槍の技だ

だが、ロングソードを手放すまではいかない


元々槍の技量に自信があるわけではない

俺はすぐに槍を手放し、踏み込みながらショートソードを引き抜く



ガッ!


「ぐあぁっ!!」



鎧野郎の右手首にショートソードを叩きつける

ザックリと出血、ざまぁみろ!


更に刃を返して、横から顔を薙ぐ



ガキィッ!


鎧野郎が、咄嗟に右前腕の装甲でショートソードを受けた



更に追撃を狙いたいが、鎧野郎がラウンドシールドでガード

近接武器での戦闘において、盾は予想以上に効果的だ


俺は、ショートソードを盾に叩きつける


ガッ ゴッ ガッ!


そして、前面からの攻撃に慣れさせて、左手を鎧野郎の後頭部にかける

同時に鎧野郎を前に引き出しながら、俺の体重を預けるように、左足を刈る


大内刈り



「うおぉっ!?」


ガシャッ!



鎧野郎が仰向けに倒れる


鎧野郎の鎧は、スカートのような構造になった胴体部と、太ももからした下をブーツのように守る脚部に分かれている

下から見ると、太ももと股間部分に装甲が無いのだ



ドシュッ!


「ぎゃあぁぁぁっ!!」



太ももの付け根と股間部分にショートソードの刺突

ロングソードを蹴り飛ばして勝負がついた


もがいている鎧野郎を見下ろしながら、俺は立ち上がる



すると、食堂方向から血の臭いが漂って来た

こちらに近づいてくる


…新手だ


この廊下は鎧野郎の血で滑って危険だ

俺は自分から食堂方向に進む



「…」


現れたのは、プロテクターを付けて大きな鉈のような武器を持った巨漢だった

身長が二メートル近くあり、ギガントには及ばないがかなりの大男だ


なんか、ジェイソンっぽくて恐怖心を煽るな



ブオン!


「うぉっ!?」



巨漢が鉈を振るう

腕も長いため、予想以上のリーチだ

しかも、躊躇なく振り回してくる


くそっ、リーチの長い相手にショートソードで勝負とか不利すぎる

槍を拾ってくればよかった…!


銃があれば…


いや、泣き言を言っても仕方がない

三つしかないけど、投げナイフ!



ドスッ!


「ぐごっ!」



太ももに投げナイフが刺さる

動きが止まった瞬間に踏み込み、ショートソードで斬りつけ


ガッ!


だが、巨漢は前腕のプロテクターで受ける


だめだ、刃物とプロテクターなどの防具持ちは相性が悪すぎる!


…近接攻撃に拘るな


俺は、ショートソードを顔面に投げつける

そして、気が逸れた巨漢の股の下をスライディング


俺の姿を見失った巨漢の隙を突いて、俺は巨漢の背中側を登る!



ザシュッ…!


「…っ!?」



逆手に持ったナイフで喉を切り裂いくと、巨漢は膝を付いて前のめりに倒れた



「はぁ…はぁ…」

大きく息をする


二人を殺した

そして、俺が生き残った


呼吸が乱れている

緊張感で気が狂いそうだ


ヘルマンは無事か?

完全に離れちまった


俺はショートソードを拾う



ガチャッ…


音がして顔を上げると、また一人食堂から出て来た


くそ、敵だ

またかよ!?



…ふと、軍時代の戦場を思い出した


引退間際だった老兵

長年戦って来た者の言葉



メメント・モリ


「人間はいつか必ず死ぬ、これを忘れるな」という大昔の教訓



戦死の理由で多いのは、馴れによる油断だ

生き残るのが当たり前になった奴は、簡単に想定外の理由で死ぬ


「自分の死を想像できなくなった奴から死んでいく」


老兵の言葉を思い出す



敵の数は分からない

油断するな、集中力を切らすな


新たな敵は迷彩服…、軍人か?



「…」

「…」


お互いに、じりじりと距離を詰める



先に軍人が動いた


軍人のナイフによる刺突

躱してショートソードを振る



ガキっ!


腕でガードされ、刃が止められる

こいつ、服の下にプロテクター仕込んでやがるな


軍服のナイフを躱して一歩下がる

そして、ショートソードを投げつけ…



ドッ!


「ぐあっ!?」



俺がショートソードを投げつけた瞬間、軍人のナイフから刃体が射出された

刃体をばねの力で発射するスペツナズナイフだ


ぎりぎりで反応し腕を上げたため、刃体が俺の前腕に突き刺さった

反応できていなければ胸に刺さっていたな、危なかった!


だが、先に動いたのは軍人だ



「うおぉぉぉっ!!」


パンチのフェイントからタックル



俺はフェイントに引っかかり、入り込まれてしまった


三人目の戦い、連続する緊張…

精神的な疲労もあった


だが、タックルを切る


負けたら殺される

正念場だ!


上体を軍人に乗せるようにがぶって潰す

軍人が反応し、下半身を横に振って足を絡める


よし、上を取ってパンチを落とす!



「…なっ!?」


軍人が、俺の左足を取って足首を極める



まずい、こいつ足関節狙いだ!

サブミッションをやってる奴だ!


俺は体を反転させて足首を外す


軍人が持ち替えてヒールホールド


右足で蹴りを入れて、逆に軍人の足を取る


軍人が足を絡めて俺の極めを外す



…気が付いたら、俺が一方的に足を取られる状況になっている!?


こいつ、強いぞ!


俺はヒールホールドから逃れるために回転、そこを軍人に狙われて膝十字に変化される



「…っ!?」


まずい、極められる!!



俺は無我夢中で右手の親指を軍人の腹に突き入れる



ドシュッ…


「がぁっ!?」



親指による貫手

一番太い指を使うことで、脱臼や骨折などのリスクが少ない


親指が、予想以上に簡単に軍人の横腹に刺さる

軍人が呻き、力が弱まる


俺は暴れて膝十字から脱出

なんとか立ち上がった



お互い、息を切らせている


…くそ、スタミナが切れて来た

だが、俺は変異体だ、スタミナでは普通の人間に負けるはずがない


ここで殺す


余力はない

まだ敵が来る可能性がある


仕留めろ!


俺は右手でハンマー、左手にナイフを持つ


こいつは腕にプロテクターを仕込んでいる

刃物は通さなくても打撃ならダメージが通る、小型のハンマーなら早さもある



軍人がナイフの刺突


沈み込んでハンマーを思いっきり振る



ゴッ!


「ぎゃあぁっ!!」



膝を砕く

そのまま、ハンマーの連打を叩き込む



ゴッ!


ゴギッ!!


ガッ!


ゴシャッ!!



プロテクターを仕込んだ前腕でガードされるが、その上からハンマーを叩きつける

重い打撃が衝撃を伝え、何度も叩きつければ耐えられなくなる


そして、最後にはハンマーが頭にめり込んだ




「…はぁー…はぁー…」


呼吸が続かない



だが、終わった…



疲労感が凄い


どこから敵が来るのか分からない恐怖


その暗がりにも誰かがいるかのような感覚


疑心暗鬼に近い精神状態


…よくない



感覚を研ぎ澄ませろ


臭い


体温


振動



敵を見つけ出せ


先制できないと殺されるぞ



ゴッシャァァァァァン!!


「…っ!?」



突如、食堂の扉の向こうから激しい音が響いた


な、何だ!?

敵か!?




「…これにて選別を終了します。これにて選別を終了します。戦闘を終えて各自必要な措置を行ってください…繰り返します。これにて…」


その時、一斉放送が入り、選別の終了が告げられた



「…」


俺は、情けなくもその場に崩れ落ちたのだった




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ