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閑話4 国境での秘匿作戦

用語説明w

ペア:惑星ウルと惑星ギアが作る二連星

ウル:ギアと二連星をつくっている惑星

ギア:ウルと二連星をつくっている相方の惑星


クレハナ:クレハナ:龍神皇国の北に位置する小国。フィーナの故郷で、後継者争いの内戦が激化している


倉デバイス:仮想空間魔術を封入し、体積を無視して一定質量を収納できる


セフィリア:龍神皇国騎士団の団長心得。B+の戦闘力を持つ。ラーズの遠い親戚で、五歳年上の憧れの竜人女性


ここは、龍神皇国とクレハナとの国境付近

龍神皇国ファブル地区の北端だ


クレハナは龍神皇国の北に位置している小国で、現在は内戦状態となっており、騎士団が治安維持部隊の派遣を行っている



「セフィリアさん、ラーズの行方はまだ分からないのか?」

大柄な獣人男性が口を開く


名をヤマトと言い、龍神皇国騎士団の騎士だ

現在は、クレハナに治安維持部隊として派遣されている


「ええ、まだ…。情報班のオリハがよくやってくれてるのだけれどね」

龍神皇国騎士団の団長心得であるセフィリアが、美しい金髪をたなびかせながら言う



今回はクレハナからの機密情報を得て、秘匿作戦を行う


クレハナの内戦で存在が確認されている謎のBランク戦闘員、黒き星

これの捕獲、無理なら討伐を行う


Bランクとは闘氣(オーラ)を使う戦闘員

闘氣(オーラ)使いは闘氣(オーラ)使いにしか倒せない

つまり、この作戦はBランク以上の戦闘員にしか不可能だ


そして、B()()()()()()()()()()()()()である


つまり、内戦状態のクレハナから龍神皇国に不法入国するBランク戦闘員とは、クレハナから龍神皇国に対して撃ち込まれたミサイルと見なされてもおかしくない


クレハナから龍神皇国への攻撃と見なされるような行為…、すなわち国家紛争の引き金とならないように、秘密裏に阻止する必要があるのだ



「セフィ姉、そろそろかな…?」

心配そうに赤髪の竜人女性、ピンクが言う


ピンクはまだ大学を卒業したばかりで、龍神皇国騎士団の騎士として就職したばかりの見習いだ

だが、龍神皇国の有力貴族であるカイザードラゴンの血を引いており、その実力は高い


「そうね。戦いはヤマトにお願いするから、ピンクは逃がさないように後ろに回り込んで」

セフィリアが穏やかに言う


「う、うん、分かった」



季節は夏

だが、標高が高いため気温はそこまで高くない



「それで、セフィリアさん、本当に宇宙技術を使っていたらどうするんだ?」

ヤマトが国境を見据えながら尋ねる


「どこで手に入れたかにもよるけど…。困ったことになるわね」

セフィリアが言う


「宇宙技術って、ストラデ=イバリ?」

ピンクがセフィリアの顔を見た



ストラデ=イバリ


竜族でありながら、科学技術と魔導法学技術によって竜の肉体を改造し、百年ほど前にペアを離れた一族だ


太陽系第三惑星のペアから第五惑星まで宇宙を旅して、その衛星の一つにたどり着いた


彼らは、この衛星にストラデ=イバリという拠点を建造

ガス惑星である第五惑星の豊富な重水素を使っての核融合、酸素の代わりに霊力や氣力を利用しての呼吸を行っている

ペアとは隔絶された、もはや全く別の文明となっているのだ


つまり、ストラデ=イバリは、ペア唯一の宇宙進出した生命体なのである



「そうよ。宇宙技術はストラデ=イバリしか持っていないから」

セフィリアも国境を見据えている



宇宙技術


惑星外の宇宙空間で使われることが想定される技術

長距離移動、高威力の攻撃を実現するために、高エネルギーを扱う技術が発達している

この技術は、惑星環境下では発展しないストラデ=イバリ独自の技術だ


代表的なものは、宇宙空間を旅する宇宙戦艦等の製作技術だ

ストラデ=イバリの技術は、もはやペアの技術とは別物であり、ペアでは作ることができない技術となっている



「可能性があるとしたら、北のゲル二ト連邦か?」

ヤマトが腕を組む



今回の対象である黒き星

わざわざセフィリア出向いた理由は、黒き星が宇宙技術を使っている可能性があるとの情報を得たからだ


宇宙技術を手に入れるためには、ストラデ=イバリまで宇宙を旅する必要がある


太陽系第五惑星までの道のりは約七億キロメートル

最新鋭の宇宙船を使い、スイングバイなどの加速を使って最高効率で行ったとしても約一年かかる


当然そのためには国家の支援が必要であり、宇宙技術を持ったBランク戦闘員がクレハナにいるということは、他の国家から支援を受けた戦闘員がクレハナの内戦に参加しているということだ


これまで支援を続け、歴史的にもクレハナとの関係が深い龍神皇国としては他国の介入を見過ごすことは出来ない

セフィリアが派遣された理由は、生死不問で確実に黒き星を確保する必要があるからだ



「その可能性は高いけど…。どちらにしろ、他国の介入の有無をはっきりさせる必要があるわ」

セフィ姉は国境から目を離さない


「私、セフィ姉の封神剣(ほうしんけん)を見てみたい」

ピンクがセフィリアに言う


「今回は逃がすわけにはいかないから、必要なら使うかもね」

そう言って、セフィリアが純白の双剣を抜く


同時に、ヤマトが獣のような姿になる

戦闘力を大幅にあげる特性、獣化だ


「え?」

ピンクが驚いて国境の方を見ると、黒い影が見える


「あれが黒き星…、情報通りパワードアーマーだ」

ヤマトが前に出る


黒い影は、背中のジェットスラスターを噴射しながらこっちに向かってきている


「ピンク、大回りして後ろに回りなさい。逃走防止以外は手を出さないでいいわ」


「はい!」


セフィリアの指示を聞いて、ピンクが背中に翼を出現させ空へ飛び上がる


セフィリアとヤマトは同時に闘氣(オーラ)を纏い、距離を取って黒き星と相対する



「…何だ貴様らは!?」

黒き星がセフィリア達を警戒し、手前で足を止めた


ヤマト達に気がついた時点で、黒き星も闘氣(オーラ)を纏っている


「黒き星だな? 不法入国だ、拘束させてもらう」

ヤマトが手甲を付けた腕で構えを取った


「…な、何だと?」

黒き星は動揺を隠せない



だが、闘氣(オーラ)を纏ったパワードアーマーで構えを取る


パワードアーマーの装甲は硬い

それを、纏った闘氣(オーラ)によって更に硬化して強度を増している




ゴガァッ!


「…っ!!」 「くっ…!」




ヤマトと黒き星の右拳がぶつかり合う


弾かれた勢いで左の拳を叩きつけるヤマト


続けて右


ボディに左


打ち返されたパンチをヤマトが避ける



「ぐはっ………!」


黒き星がたたらを踏む



闘氣(オーラ)は肉体の性能を上げる

筋力の出力、反応速度の向上などだ


だが、パワードアーマーは肉体ではない

装甲の硬度は増すが、人工筋肉やモーターの出力は闘氣(オーラ)では増えない

あくまでも黒き星自身の筋力を向上させているに過ぎない


戦闘力の高いヤマトの肉体の方が威力、速度共に上だ



「くそっ、こいつは強い…!」

黒き星が歯噛みする


このままでは負ける、捕まる訳にはいかない

仕方がない、切り札を出す!



黒き星は覚悟を決め、ある機能を起動する



ヒュオォォォォ………


黒き星の周囲の空間が歪む



「…何だ?」


ヤマトが警戒するが…



ガシュッッッ!!


「がっ…!」



突然、大きな腕が黒き星の横の空間から突き出し、太い鞭のようなものを叩きつけた


衝撃でヤマトが吹き飛ぶ


「はっはっは…、オリハルコンとチタンの合金にダイアモンド粉末使ったアーマーカッターだ!」

勝ち誇ったように黒き星が笑う


「な、何もない所から突然大きな腕が…!?」

ピンクが、驚く


「オーバーラップ技術…、あの腕はMEBみたいね」

セフィリアが落ち着いて観測する



MEB


多目的身体拡張機構の略称で、要は二足歩行型乗込み式ロボット

密閉されたコックピットで、どんな環境化でも作業が出来る汎用性が特徴だ


戦闘においては、巨大な武器を扱え、巨大な敵とも渡り合える()()()を提供することができる



「オーバーラップ技術って?」

ピンクが尋ねる



オーバーラップ技術


空間属性魔法を使った亜空間技術により、人体等に兵器を重ねて合わせて封印する技術

MEBをオーバーラップすることで、その機構の一部又は全部をいつでも空間から呼び出すことが出来る


()()()()()()()()M()E()B()()()()()使()()()

それは、Bランク以上の闘氣(オーラ)使いにとって、多くの利点をもたらすのだ

機構の一部だけを使うなら、闘氣(オーラ)で包んで保護することも容易い



ちなみに、封印空間にアイテムを収納する倉デバイスもオーバーラップ技術の一つだ


オーバーラップ技術の最たるものとして、龍神皇国には宇宙戦艦をオーバーラップしたSランク戦闘員ディスティニーがいる

このオーバーラップ技術を使った兵器はかなり高額な装備ではあるが、宇宙技術ではない



「…どうやら、オーバーラップされたMEBが宇宙技術に見えただけのようね。ヤマト、終わらせていいわ」

セフィリアが純白の双剣を鞘に納めた


「な、何だと…? な、舐めるな女っ!!」


プライドを傷つけられた黒き星が激昂し、セフィリアに向かう


だが…


「おいおい、どこに行くんだよ」


ヤマトが黒き星に迫り、黄色い光を全身から発する


氣力を体に満たす技、トランス

一時的に身体能力を格段に引き上げる


「な、い、生きていただと!?」


「バカか、その程度の出力と闘氣(オーラ)の練りで俺の闘氣(オーラ)を貫けると思っているのか?」


そう言ったヤマトの動きが一瞬で消える



「ごはぁっっっっ!!?」


ボディ軌道から顎を打ち抜くスマッシュが黒き星の顎を砕き、脳を揺らす


黒き星が仰向けに倒れて白目をむいた



「二人ともお疲れ様。帰りましょう」

セフィリアが黒き星を見下ろす


「ただの流れのBランクか…、こんなに人数を揃えなくてもよかったな」

ヤマトが獣化を解く


「あーあ。ヤマトさんがすぐに倒しちゃうからセフィ姉の封神剣(ほうしんけん)が見られなかった…」

ピンクが残念そうに言う


「何言ってるんだ。こんな程度の敵で、セフィリアさんが封神剣(ほうしんけん)なんか使う必要あるわけないだろ」


「ほら、話してないで帰りましょう? ラーズの調査結果が来ているはずなんだから」


黒き星の回収班を手配しながらセフィリアが言う



…ラーズはまだ見つかっていない






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