説話 ですペア
ですペア
デスティネーション ペアの略
行き着いたペア、究極のペア、対となるペアという意味だ
例えば、連星となった星々…
例えば、融合した文明…
例えば、出会った科学と魔法…
例えば、運命の番…
ですペアとは、お互いが行き着き、出会う
そして、対となり、一つとなるべき番のことなのだ
ここは科学と魔法が一つとなり、混ぜて煮こまれたような世界
この銀河にはいくつもの太陽と呼ばれる恒星がある
そして、この太陽を中心とした太陽系がいくつも存在する
その太陽系の一つに、珍しい二連星を惑星に持つものがある
二連星とは、二つの惑星が互いの重力で釣り合いながら惑星軌道を回っている状態のことだ
この二連星の名は、「ウル」と「ギア」
ウルとギアを合わせて「ペア」と呼び、この太陽系の第三惑星はペアという二連星である…、などと使う
そして、このペアが産まれた年を天地歴元年として、現在使われている天地歴を数えている
天地歴元年、人類は絶滅の危機に瀕していた
何の前触れもなく現れた「神らしきもの」と呼ばれる高次元生命体が突如としてギアを襲ったのだ
ギアの人類は総力を上げて抵抗したが、戦況は悪化し追い詰められていく
ギアの人類は覚悟せざるを得なかった
目の前の圧倒的な存在に対して、自分達が滅ぼされるということを
…しかし、その時奇跡が起こった
ギアの直近に、突如として同質量の惑星が出現
重力が釣り合い、二連星として互いに公転を始めたのだ
そう、この惑星がウルであり、これがペア誕生の瞬間であった
ギアは、科学技術を基本とした物質文明発祥の惑星
ウルは、魔導法学技術を基本とした魔法文明発祥の惑星であった
ギアとウルに住む互いの人類は、すぐに交流と協力を開始した
共通の敵である、神らしきものを倒すために
こうして、現代の魔法科学文明の基礎となる、科学と魔導法学の初めての融合が行われる
その結果、当時のギアの総電力を使って発動する、ウルの圧縮超高密度魔法言語による封印魔法で、対象である神らしきものを封印
名付けて「ヤ○マ作戦」というありふれた名前の作戦が実行された
…結果は、現代まで人類と文明が存続していることから明らかである
作戦は成功し、ギアのポイント1192において封印魔法で神らしきものを封印
ギアのポイント1192は、現在は入場制限都市として、対象「神らしきもの」の封印を監視し続けている
…神らしきものの封印後、絶滅の危機を脱したペアの文明は発展に次ぐ発展を繰り返した
各分野の技術に、科学と魔導法学の知識が導入されて融合
とてつもないシナジー効果を産み出し、飛躍的に進歩したのだ
エネルギー分野
化石燃料や原子力を使って膨大な電力を産み出してきた科学
魔石やモンスターの産み出す魔力を基本とする魔導法学
この二つが融合したことにより、電力を魔力に、魔力を電力に互いに変換できる基礎理論が完成
電力で熱量を産み出すよりも、魔力を火属性魔法として発動した方がエネルギー効率は高い
また、ある一定値以上のエネルギー生産は、魔力よりも電力の方が効率がいい
魔力と電力の併用という、現代の魔法科学文明の基礎が作られたのだ
更に、魔力と電力を併用することで、核分裂技術、核融合技術が発達
弱い核力を司るノクリア属性を使った原子炉の効率化
強い核力を司るソラコア属性による核融合反応の促進
更に、核融合に必要な重水素やトリチウムを、触媒と風属性や水属性、雷属性を併用することで安価に合成できるようになった
都市
物質文明が作り上げた法治国家制度が導入された
これにより、個人の権利を守るという考え方が広まり、優秀な人材の発掘が容易になった
AIの導入を行うことで、貴族制度の弊害である汚職もある程度抑制できるようになった
労働力として、魔法文明の人形技術が導入された
ゴーレムやオートマトンと呼ばれる人形に、魔力による疑似魂を作り出すことで安価な単純労働力を確保
輸送力の幅が増えた
車や飛行機、船などの長距離や大量輸送に長けた乗り物
魔法の箒やじゅうたんなど、魔法の術式を導入して個人が思い通りに動かせる自由度の高い乗り物
飛竜やモンスターなど、悪路での移動や戦闘を兼ねたものなど、様々なメリットとデメリットがあり選択肢が広がった
更に、土木工事、建設技術、地質学も、科学技術と各属性魔法の併用理論によって進化した
その成果の最たるものが、大気圏外までそびえ立つ巨大な塔、軌道エレベーターだ
これに空港を併設して、魔法による重力属性、力学属性、風属性と惑星の自転による遠心力を使って、ロケットエンジンと航空機エンジンを併用する宇宙飛行機を安価に大気圏外に上げられるようになったのだ
この起動エレベーターの完成によって、低コストでウルとギアの行き来が出来るようになり、物質文明と魔法文明の融合は急速に進むこととなった
医学においても、細胞に対する聖属性の影響の理論化により遺伝子工学が劇的に進み、万能細胞などの画期的な技術が産み出された
更に、魔属性による腫瘍のアポトーシス技術、外科手術と回復魔法、麻酔薬と精神属性魔法の併用、肉体だけでなく霊体に対する医学的なアプローチなど、医療技術も飛躍的に進歩した
他にも、AIと疑似魂、数学と空間属性、相対性理論と時間属性の統一理論など数々の融合が成し遂げられた
現在のペアの技術は、宇宙へ進出し、異世界と邂逅し、量子コンピューターで未来を予測し、高次元生命体から知識と力を得るまでになったのだ
…その反面、人類にとってのデメリットも産まれた
それが、戦争の手法だ
銃
杖
砲撃
範囲魔法
ミサイル
召喚魔法陣
戦争は技術を飛躍的に進歩させる
天地歴が始まって以来、ペアには科学兵器と魔法兵器を備えた部隊が誕生した
遠距離から撃ち抜く銃弾、銃弾を止める防御魔法や力学属性、土属性魔法
それを吹き飛ばすグレネード、障害物を無視する範囲魔法
戦車、飛竜、広域殲滅魔法、長距離弾道ミサイル、レールガン、人体強化術による強化兵
特技や魔法、銃弾や砲弾が飛び交うの現代の戦争が形作られたのだ
ウルとギアがペアとなったことで産まれた文明
科学と魔法という運命の番
混ざり合い、融合し、一つの存在となることで産まれた文明
現代の文明は、物質文明と魔法文明の「ですペア」の姿である
次回から一章が始まります
よろしくお願いします!