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エピローグ


ある、晴れた気持ちのいい日


今日は俺にとって特別な日だ



「…」


目の前の旧敵を見上げる



静かに佇むその姿

そこには、葛藤も苦悩もない


以前は、俺もそこにたどり着きたかった

だが、俺は失敗し、たどり着いたのはお前だけ


冷気が風となり、ゆるやかに押し寄せてくる



…そこには、氷柱と化したマサカドの姿があった




「…マサカド、俺達は何を探してたんだろうな?」



苦悩から逃げるために、俺達は進み続けた


許されないはずの自分が生きる理由

進むためには理由が必要だった


復讐、防衛、恩返し…、全てを理由に使って、俺達は進み続けた

だが、進めば進むほど、視野がどんどん削られていった


気が付けば、もう何も見えなくなっていた

道が無くなり、進むべき方向も分からない


それでも、歯を喰いしばって進んだ



俺達に足りなかったものは、苦悩を受け入れて立ち止まること

逃避を認める勇気


立ち止まってみれば、自分の外にも世界が広がっていることに気がつけた

道なんか無くても、歩ける場所はいくらでもある


俺は生きている

まだ、この世界で出来ることがある


そう、気が付けたはずだ



もっと早く立ち止まれていたら

()()()()()()()()()見回せていたら


…俺達の出会い方は、もっと違ったものになっていたかもしれない



「ラー兄ぃ、もう行かないと間に合わないよ!」


赤髪の竜人、ピンクが慌てた様子で俺を呼びに来た


「ああ、ごめん。行こうか」


「早く早く! 今日、遅れるなんてありえないんだから!」


「はいはい。ピンク、身体は大丈夫なのか?」


「うん、まだ何もないよ」


俺とピンクの契りは無事に成功した

しかし、未だにお互い大きな変化は起きていない


ま、焦っても仕方がないか

俺は、騎士になるための修行も控えているし




・・・・・・




シグノイア 泉龍神社


大崩壊前に俺達が住んでいた、近くの神社

防衛軍時代からよく来ていた


宮司のヒコザエモンさんとは顔馴染みで、リィを買った場所でもある



「ラーズさん、お待ちしていました」


「ヒコザエモンさん、今日はよろしくお願いします」



ヒコザエモンは、1991小隊が霊札などを購入していた取引相手でもある

大崩壊直後は物資を被災者に配ってくれ、避難所として境内を開放してくれていた



境内の静かな、そして厳かな雰囲気は以前と変わっていない


「ラーズ、もう時間だぞ」


「おー、ロン。今日はありがとう」


「係の人がもう待ってるぞ、早くしろって」


ロンに急かされて、俺は控室に急ぐ



慌てて衣装に着替えていると、隣の部屋から声が聞こえて来た


「えー…、それじゃあ、もう一回!?」

「やるじゃない、あいつ」


「うん。もう一回、改めてって…」


どうやら、フィーナやミィ、ピンクの声のようだ



「…フィーナの準備は終わったのか?」


「とっくに終わってるよ。お前がギリギリすぎるんだ」

ロンに言われ、俺は慌てて着替える



「…で、なんて言われたの? 二回目のプロポーズ」


「クレハナじゃなくて、俺だけの姫になってくれって」


「あっはっは! あいつくっさ!」


「もー…、笑わないでよミィ姉。凄い考えたみたいだよ、プロポーズのセリフ」


「ひー…、それで、フィーナは何て答えたのよ」


「えーと…、姫じゃなくて、普通に奥さんにしてって…」


「…ラーズのプロポーズの言葉、全無視じゃん」


「え?」


「普通に、はいでいいのに、何で噛み合ってないのよ、あんたらは」

ミィのため息


「姫のフィーナを受け入れたかったんじゃ…。フィーナが姫の立場をずっと気にしていたから…」

エマがおずおずと考察


…これはあれだ、俺を殺す気だな?

プロポーズの解説、考察とかって、恥ずかしすぎるだろ


殺せよ!

いっそ殺してくれよぉぉぉっ!



「…」

「…」


…完全に心を叩き壊された俺を、ロンがいろいろと察した目で見つめていた




しばらくすると時間になった

神道式の結婚式が厳かに始まる


信じられないことに、今から俺とフィーナの結婚式なのだ


クレハナの姫の立場であるフィーナ

その結婚が公表されると大騒ぎになるため、完全に秘匿された式となっている



結婚はハッピーエンドではない

家庭を持ち、維持することはとても大変なことだ


だが、大変さに比例した幸せもある

大きな負担があるからこそ、大きな幸せもあるのだ


格闘と同じだ

大きなリスクを負うことで、カウンターという大ダメージを狙える


つまり、カウンターと結婚って実は同義なのかもしれない

うん、何を言ってるんだ?


何を言いたいかというと、結婚はハッピースタート

幸せに向かって歩き始める誓いということなのだ



「では、新郎新婦、前へ…」


「…っ!!」


俺とフィーナは、ヒコザエモンさんが待つ上座の前へ



この時、俺は初めて今日のフィーナの姿を見た


純白のウエディングドレスを身に纏った美しい姿

そんなフィーナに目を奪われる



「さぁ、こちらへ…」


ヒコザエモンさんが言う



フィーナが微笑み、そして前を向く

慌てて俺も前を向いた



最初に誓いの言葉


そして、指輪の交換


三々九度



…うん、カオスすぎる式だが、俺は嫌いじゃない


そして誓いのキス

俺は、フィーナに一歩近づく



「ラーズ…」


「うん、フィーナ…」


ウエディングドレスのフィーナは綺麗だった


俺は、本当にこの女性(ひと)に釣り合うのか?

だが、その問いに意味はない


俺は、純粋にこの女性(ひと)と一緒になりたい

そう思える、それが全てだ



「…」

「…」


静かに、唇を重ねる



これで、俺とフィーナは晴れて夫婦となった




それからは、披露宴という名の飲み会


フィーナの読んだ手紙でずっと泣いているパニン父さんと、また娘にもどったフィーナを抱きしめるディード母さん、ドミニク爺ちゃんとトシコ婆ちゃん


「ラーズ、フィーナ、立派になって…!」


大学時代の先輩、ゴドー先輩とケイト先輩


「ラーズ…、お前、結婚早すぎないか?」

「ちゃんと覚悟して決めたんだからいいのよ」


騎士学園時代の恩師、ラングドン先生


「ラーズ、フィーナ、おめでとう! ところで今度、バビロン教授を紹介してくれないかい!?」


メイル、オズマ、サクラちゃん、コウメちゃん


「ラーズ、本当におめでとう…ぐすっ……」


ロンとエマ、ミィとヤマト、スサノヲとクシナダ


「二人とも、お幸せに!」


マキ組とクサナギ霊障警備のみんな


「お祝儀は奮発しておきました」

「仕事で返してね!」


ドミオール院の代表として来てくれたタルヤ


「…ラーズ、おめでとう」



いろいろな人が俺達のために来てくれた

嬉しかった、幸せだった



だが、一番驚いたのはセフィ姉が連れて来た人だ



「あっ、あなたは………!」


「久しぶりだね、覚えているかい? ラーズ君」


「お、俺、あなたの助言でチャクラ封印練を…!」


「ああ、セフィリアから聞いていたよ。本当に俺と同じ道を歩むとは思わなかった。戦場に身を置きながら、よく十年もやり遂げたね、尊敬するよ」

その男性は、手を差し出した


この男性は風龍を駆るソル

竜騎士の里出身で、世界で一番有名な竜騎士の一人


そして、俺にチャクラ封印練を教えてくれた人



「…ありがとうございます」


「あの封印の辛さは、俺自身がよく知っている。君と、アイオーンで共に戦えることを楽しみにしているよ」


「あ、あなたもアイオーンに?」


「ソルはクロノスに入ってもらっているわ」

セフィ姉が言う


「ク、クロノスって…、一体どんな人たちがいるんだ…」


化物で構成されていることだけは分かってきた



「ラーズ、まずはフィーナのことをちゃんと見なさい。騎士としての実力をつけ、ドルグネル流の剣術と槍術の訓練を続ける。家庭も騎士も基礎が大事よ」


「う、うん…」


セフィ姉が焦る俺をなだめる


「ラーズ、星の祝福を覚えている?」


「え?」


星の祝福とは、星間生命体に観測された生命体に付けられる特殊な魔力の残滓

俺は大気圏ダイブの際に付けられた



「星の祝福を受けた者は、いい伴侶と巡り会えるという言い伝えがあるの」


「そ、そうなの?」


「でも、出会えるだけじゃ意味がないわ。一生懸命幸せになるのよ? おめでとう、ラーズ」


「うん。ありがとう、セフィ姉…」



人を幸せにするって、内戦を止める事と同じくらい難しい

でも、大好きな人に対してその責任を持てることが誇らしく、嬉しいと感じる


俺は、フィーナを見る

すると、フィーナも俺を見ていた



「ね、ラーズ。本当に良かったの?」


「何が?」


「セフィ姉の背中を守れる男になることが夢なんでしょ? 結婚なんかしたら…」


「夢が一つと誰が言ったんだよ」


「え…?」


「お前と幸せになるのも俺の夢だ。でっかい夢だろ?」


「……うん…。幸せにしてね。…ううん、幸せになろうね」


「もちろん」


俺は、フィーナを優しく抱きしめる


そんな俺達を、周りがはやし立てる




そんな披露宴会場の壁に立てかけられている真っ青な大剣

1991が日の光を受けている



それは、まるで1991小隊のみんなが祝福してくれているかのように


…蒼く静かに、そして力強く輝いていた











ー完ー



ラングドン先生 十章 ~19話 ウルラ領の雰囲気

竜騎士 閑話16 セフィリアの後悔

星の祝福 四章 ~21話 退院



※本編完結です!

ここまで読んでいただき、ブクマ、評価、感想、誤字報告、本当にありがとうございました!


読んでもらえている、そう思えるだけでモチベが死ぬほど上がるのは相変わらずですw


自分の妄想を文章にするのは、才能や技術に乏しい自分には難しく、だからこそモチベと勢いがなければ完結は不可能でした

この場を借りて…、読者の皆様、稚拙な当作品を読んで頂き、優しい支援を本当にありがとうございました!


明日、活動報告で後書きを公開、同時に設定資料集を二つに分けて投稿

明後日、用語説明を投稿して完結処理予定です

お暇だったら読んでくださいませw



ラーズとフィーナの騎士学園時代

まったり投稿中です


前作、本作でもったいぶった、魔法や特技(スキル)闘氣(オーラ)が中心となった話w

こちらもよろしくお願いします!


ですペア ~騎士学園劣等生の葛藤~ ダンジョン、パーティ、モンスター、タクティクス…騎士への道が厳しすぎる!


https://ncode.syosetu.com/n1038hu/

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[一言] (*>▽<ノノ"パチパチパチパチ♡♡
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