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終章~2話 フィーナ

用語説明w

ミィ:龍神皇国騎士団経済対策団のエース。戦闘能力はそこまで高くないが、経済的な観点で物事を考える。海の力を宿したオーシャンスライムのスーラが使役対象

ヤマト:龍神皇国騎士団の騎士、特別な獣化である神獣化、氣力を体に満たすトランスを使う近接攻撃のスペシャリスト

エマ:元1991小隊の医療担当隊員。医師免許を持ち回復魔法も使える

スサノヲ:見た目は赤ずきんをかぶった女の子。正体は、怪力の腕利き鍛冶職人でジャンク屋


「うぅ…」


「体調悪そうだな、ラーズ」

ヤマトが俺の顔色を見る


「あぁ…、最近は息切れが酷くてさ…」



ピンクとの契りは無事に終わった

エマの腕は相変わらず確かなようで、特に後遺症もなく俺とピンクはリハビリに移った


あの手術から半年、もう私生活を送る分には何の不自由もない


…では、なぜ俺の体調がここまで悪くなっているのか?

それは、チャクラ封印練のせいだ


本来は十年を想定して行われる封印なのだが、俺はすでに十二年近くが経っている

更に、俺は元々霊力や氣力が高くはなかったために、長期の封印で身体に不調が現れているのだ



「意地張ってないで、さっさと解除しちまえばいいじゃねえか」


「あと一週間だからさ、やり遂げたいんだ」


後一週間で、宇宙に行っていた俺と二歳年下のフィーナの第二成人式だ

それまでは、俺はチャクラ封印練を続けると決めた


もし、大崩壊の時に闘氣(オーラ)があれば

クレハナの内戦前にチャクラ封印練を解いていれば


…誰かを救えたのかもしれない

たら、れば、の何の意味もない葛藤がある


それに、俺は強くなるためにチャクラ封印練を行った

覚悟を決めて騎士の道を諦めた


辛いからなどという理由で止めたくはない


自分が決めた、キリのいい日まで続ける

ただそれだけの、くだらない拘り、小さな自己満足だ



「あ、いたいた!」


向こうから、三人の女性が近づいてくる

ミィ、エマ、スサノヲだ


「ラーズ、顔色が…」

エマが、すぐに俺の診察をして回復魔法を使ってくれる


「おい、無理しない方がいいんじゃないか?」

スサノヲが言う


「これは俺のケジメだからさ」


「ラーズ、もう体から霊力と氣力が不足してきて…、これからもっと体調が悪くなる…」


「そ、そうなんだ…」



俺は、この三人と共同で一つの会社を立ち上げた

会社名は「トライデント」だ


三つのハンター資格、ゴーストハンター、モンスターハンター、バウンティハンターを習得した者のことをトライデントと呼ぶのだが、そこから取って何でも取り扱うという意味を込めた


俺は真実の眼の情報探し、エマは薬草研究のためのフィールドワーク、スサノヲは鉱石やモンスターの素材など武器防具の素材集め、そして、ミィは金もうけのため


それぞれの目的のために協力し合うという共同体であり結社のような会社だ

法人の代表はミィが務めている


業務内容は、除霊やモンスター討伐、賞金首狩りやボディガード、そしてフィールドワークによる調査をメインとして、いわゆる冒険者みたいな仕事を請け負う

そのため、フウマの里の忍者衆であるマキ組、クサナギ流除霊術の使い手であるクサナギ霊障警備との協力体制を作った


とは言っても、トライデントは俺が体調不良、マキ組はホワイト村の護衛に専従しているため活動がほぼできない

そんなわけで、開店休業状態だ



「ラーズが動けなきゃ、全然装備のスピリッツ化が進まないんだよな…」

スサノヲが残念そうに言う


「俺のヴァヴェルと絆の腕輪、デスペアと戦った時に仄かに光ってたんだけど、まだスピリッツ装備にはなってないのか?」


「まだだな。スピリッツ装備は伝説級装備、そもそも1991の覚醒が早すぎたんだ。そう簡単には覚醒しないって」


「一般兵のラーズと無名の職人であるスサノヲのコンビが伝説級のスピリッツ装備を作り出したなんて、職人ギルドも思いもしないでしょうね」

ミィが言う


「いいよな…、俺もスピリッツ装備欲しいぜ」

ヤマトが羨ましがる


真のスピリッツ装備とは、それだけ貴重なもの

1991がその域に達したのは、本当に奇跡的な事なのだ


「あたしも、まさかスピリッツ装備にまで達するとは思いもしなかったよ」

スサノヲが他人事のように言う


「ラーズとスサノヲのそれぞれの才能には、いつも惚れてるし、憧れてるし、嫉妬しているわ。一緒に会社が出来てワクワクするわね」

ミィが言う


こいつは、昔から本心を平気で口にする

だからこそ、信用できるし一緒に働きたいと思った

伊達にクレジットクィーンとは呼ばれていない



「…そう言えば、何で突然、プロポーズなんかしたの? まだ聞いてないんだけど」

ミィが尋ねると、全員が頷く


「え…」


「…」


ヤマト、エマ、スサノヲまでもがジッと見てくるので、俺は観念して話すことにする


「フィーナがさ、また俺を振ると思ったんだ。クレハナの国民からの酷いバッシングを受けて、迷惑かけるとか言い出しそうでさ」


「…」


「婚約して、お前を放さない、逃がさない。諦めて一緒にいろって意味でプロポ―ズを…」


「…」「…」「…」「…」

ミィ達が悶絶している


「何してんの?」


「く、く、クサすぎて…」


「うっせーわ!」


四人が体の震えを止めるまで、俺は照れ隠しでののしり続けてやった



「…それじゃあ、泉竜神社に打ちあわせに行ってくるから」


「ああ、ありがとな」


俺は、()()()()()()帰って行くヤマト、ミィ、エマ、スサノヲを見送る



内戦が終わってから、早九か月

クレハナではツェルの新政権が発足し、龍神皇国の一員として再スタートした


政治的な混乱は思いの他少なく、順調な再スタートと言えるだろう

フィーナが姫として積極的にナウカと関わることによって、内戦の軋轢を大きく減らしたことも理由の一つだ



ナウカのシーベルの死刑はまだ執行されていない


そして、ドースの行方も未だ掴めていない

おそらく、手引きした人間がいるはずだが、その特定にも至っていないのが現状だ



俺はこの九か月間、ピンクとの契りのための入院を除けば、地道に騎士団でドルグネル流剣術と槍術を学んいる

やればやるほど武器術の奥深さを感じて、今までの俺の武器術なんて、本当に幼稚な技だったと感じている




「フィーナ!」

俺は、待ち合わせをしていたフィーナに手を挙げる


「ラーズ! …顔色悪くない、大丈夫?」


「ああ、大丈夫だよ」


「…無理しないでね」


俺とフィーナは、近くの喫茶店に入る



本当は剣の訓練をしたいのだが、ここ数日は体調が悪すぎる

とてもじゃないが剣を振れる状態ではないため、訓練も休んでいるのだ


「フィーナの修行はどうなんだよ? ナウカの神降ろしの術」


「うーん…、まだまだかかりそう。やっと、なんとなく掴めてきたのかな」

フィーナが微妙な顔をする


「大変だな。ウルラの複合遁術の次はナウカの神降ろしの術って」


「騎士としての実力は上がるからいんだけどね。難しいんだよ…」


「そういや、聞きたかったんだけど」


「何?」


「複合遁術って、種類があったんだろ? 何で雲遁だったの?」


雲遁は攻撃をすり抜けられるというチート級の能力の反面、拭き散らかされてしまうと意識を保てずに死ぬという大きなリスクを内包する

正直、使い勝手がいいとは思えない


「…遁術で攻撃手段を選ぶよりも、他の能力がいいかなって。それと、これはただのゲン担ぎなんだけど」


「ゲン担ぎ?」


「うん。私はクレハナの内戦が終わらせることが出来たら、セフィ姉やラーズの力になりたいと思っていたの」


「へ?」


「セフィ姉は龍神王だし、ラーズもトリッガードラゴンで、二人ともドラゴンでしょ」


「イメージってこと? セフィ姉は本物の龍の力を持ってるけど」


雲蒸竜変(うんじょうりょうへん)、分かる?」



雲蒸竜変


竜は雲が湧き上がった時、雨雲にのって昇天する

転じて、英雄が時流に乗じて活躍すること


飛竜雲に乗る、竜の雲を得る如し

似たような言葉も多い



「それが何なの?」


「…竜が大きく躍進するためには、時代の流れだったり、優秀な仲間だったり、自分の力以外の要素が必要ってこと。私もサポートできたらなって思ったの」


龍は雲に乗って天に昇り、空を自在に駆け巡る

しかし、雲が湧く前に自分の力だけで昇っても、長くは飛べないという



「クレハナのお姫様が控えめな発想だな。サポートだなんて」


「私、元から前に出るの好きじゃないから。騎士学園の時だって、パーティの後ろから補助魔法や回復魔法、攻撃魔法を使ってたでしょ?」


「まぁ、確かに…」


フィーナは複数の種類の魔法を使う賢者というタイプだった

懐かしいな


「私はセフィ姉やラーズのサポートが一番合ってる。それに、やっとラーズが騎士になれるかもしれないんだし、トリッガードラゴンのパートナーもいいなって」


「フィーナは、俺なんかのパートナーなんかじゃもったいないだろ」


「私がやりたいことなの。ラーズのパートナーは、セフィ姉にだって譲りたくない」


「…」


そんなこと言われたら、なんか恥ずかしくなるな

龍と雲、比喩だとしても嬉しい



「わっ、え?」


俺は、フィーナを抱きしめてみる



「姫になったり雲になったり、忙しい奴だな」


「立場で変わるわけじゃないけど、女は恋愛に強欲なの。かわいいでしょ? えっへん」


「えっへんじゃねーし」



フィーナと見つめ合い、また唇を重ねる


「フィーナ…」


「ラーズ…」



よし、いい雰囲気だ

このまま部屋に行ってしまおうか



「ところで、雲遁ってさ」


「うん、何?」


「うんこみた…」


「言うな!」



ボカッ!


「いてっ!?」



フィーナもちょっと思っていたようだ


「余計なこと言ってないで早く行くよ!」


「やる気満々がねーか」


「バカ、デリカシー!」


そう言いながらも、俺とフィーナはデートの締めに向った


幸せな時間

ようやく勝ち取った、フィーナとの時間だ


チャクラ封印練がくれた、空白の数日

それは、フィーナとゆっくり過ごせるご褒美のような時間となった




数日後


俺は、ベッドに寝かされて騎士団の魔導法学技術研究所に運ばれた



「ラーズ、もうすぐだからね」


「あぁ…」


フィーナとセフィ姉が準備をしてくれる


俺は体調が悪くなり、すでにベッドから起き上がれなくなっていた

だが、やっとこの時が来た



チャクラ封印練解除の術式


俺は、ついにこの日を迎えたのだ



チャクラ封印練 二章~30話 チャクラ封印練

第二成人式 閑話26 フィーナの追求



次は、閑話

そして、いよいよエピローグです!


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― 新着の感想 ―
[一言] ここまで時間を飛ばすのは珍しいですね!しかし半年以上が過ぎてやっとキタ──ヽ('∀')ノ──!!
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