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十章 ~30話 旧ホワイト村


俺とフィーナは、クレハナから龍神皇国へと帰って来た

それから一週間、父さんのお見舞いに行ったりしながらまったりと過ごしている


「ラーズ、フィーナ、いつも来てくれて悪いな」


「早く退院できるといいね」

フィーナが言う


「体はもういいんだが、筋肉が落ちてしまったからな。リハビリにはしばらくかかりそうだ」


「急ぐ必要はないもの。焦らないでね」


パニン父さんの経過は順調だ

記憶の混乱も治まり、自分が長期間眠っていたことを知ってとても驚いていた


「内戦も終わって、ラーズとフィーナが無事だったならいいか。ただ、我が家のダマスカスナイフだけが…」


「うん、ごめん。いつか戻って来るといいんだけど」


マサカドとの戦いのために、俺はカンナ様の封印術をダマスカスナイフに施した

封印が成功したおかげで、ダマスカスナイフは今もマサカドに刺さったままになっている

マサカドの処遇が決まらない限り、封印を解くことはできず、ダマスカスナイフも戻って来ない


「…あなた。そんな物より、私に言うことが有るんじゃない?」


「そ、そうだった。母さん、長い間心配かけて悪かったね。会いたかったよ」


「…」


そう言って、パニン父さんがディード母さんに謝り、なんかいい雰囲気になったので俺とフィーナはそっと席を立つ

母さんにとっては、オーティル家に伝わるダマスカスナイフなんかどうでもいいみたいだった




龍神皇国 ドルグネル家の領地

旧ホワイト村跡地



ここ、メイルやオズマ、そしてサクラちゃんが住んでいたホワイト村跡地では、急ピッチで居住区の建設が行われていた


この場所を含む周辺は大きく二つの区画に分けられて、

・東側を異世界イグドラシルの国家ヨズヘイムの自治領

・西側を宇宙拠点ストラデ=イバリの自治領

が作られるのだ


面積一平方キロメートルほどの二つの自治領

そこまで広くはないが、異世界と宇宙との繋がりの象徴

龍神皇国にとっては、大仲介プロジェクトの大きな成果だ


ここで、俺は懐かしい人たちと再会していた



「ラーズさんー、お久しぶりですー」


「わっ、フレイヤ! 久しぶりだね」


異世界の国家ヨズヘイムから派遣されている魔導法学技術者のフレイヤ

宇宙拠点ストラデ=イバリとの空間属性魔法陣を使ったワープゲートの建造を行っている


俺とは、大仲介プロジェクトの際に一緒に宇宙に行った仲だ



「ラーズさん、お元気そうですね」


「ユリウスさんも!」


俺に宇宙技術を使った自己生成爆弾や流星錘アームを作ってくれた科学技術者のユリウス

ヨズヘイムやクレハナのフィーナに譲渡された宇宙戦艦等のメンテナンスのためにペアに派遣されてきた


「セフィリア様と大仲介プロジェクトのおかげで、ついにペアに拠点を作ること許してもらえました。これからは、ますます交流も盛んになって行くでしょう」

ユリウスが言う


「この自治領によって、龍神皇国を介して異世界と宇宙が繋がるんですー。ロマンがありますよねー」

フレイヤが頷く


うん、規模が違いすぎて訳が分からん

とりあえず、世界が良くなっていくといいな…



「ラーズ」


「あぁっ! あなたは…!」

そして、サイボーグの男性が俺に近づいて来た


この人は鉄腕のヴァイツ

宇宙拠点ストラデ=イバリの凄腕の戦闘員

小型宇宙戦艦直結のMEBをオーバーラップしており、プラズマ兵器やレーザーを操り、驚異の身体操法を身につけた達人だ



「久しぶりだな」


「本当にペアに来れたんですね」


「ああ、ワープゲートの最初の通過者に選ばれたんだ。つい、一週間前にペアに来たばかりだ」


「凄い、ついに人が通れるようになったんですか!」


ペアとストラデ=イバリを繋ぐ空間属性魔法陣によるワープゲート

クレハナに行く前には、まだ電波の空間跳躍しか成功していなかったはずだ


「まだまだ調整は必要ですけどね。空間の接続時間が短すぎて、実用化にはまだまだかかりそうですよ」

フレイヤが首を横に振る


「はぁ…」


「ラーズ、ペアは素晴らしいな。多様性に満ち溢れていて、それを許容する文化がある」


「多様性ですか?」


「ああ。ストラデ=イバリには無い物ばかりだ。私は、初めて超えるべき壁を見つけたんだ」

ヴァイツが、どこか嬉しそうに言う


「…ラーズさん、あれを見て下さい」


ユリウスが指す方向を見ると、何かが爆発した痕があった


「何があったんですか?」


「ヨズヘイムのヒルデ様とヴァイツが力の試し合いを行ったんです。幻獣フェンリルと宇宙戦艦ノアのぶつかり合いです。二人とも本気になってしまって、セフィリア様が慌てて止めに入る事態に…」


「す、凄そうですね」


「大変でしたよー。ヴァイツ様の核融合炉直結ビームキャノンとヒルデ様のグングニルとのぶつかり合い。セフィリア様が封神剣で割り込んでくれなければ、どちらかがー…、怖いですー」

言葉と裏腹にのほほんと話すフレイヤ


科学と魔導法学による超兵器同士のぶつかり合い

うん、この人たち、やっぱ凄いわ



「ラーズ、修行はどうだ?」

ヒルデがやって来た


ヒルデはヨズヘイムの自治領の現場監督もやっているらしい

ヴァルキュリアとしての仕事はどうしたの?

何でもやらされ過ぎじゃない?


「とりあえず、騎士団でドルグネル流の剣術と槍術を習い始めたところだよ」


「ほぉ、久しぶりにやってみるか?」

ヒルデが剣を掲げる


「いや、それなら私とやろう。まだ、ラーズとの手合わせはしていなかったからな」

ヴァイツが口を挟む


「いや、待って! 純粋な剣術や槍術を習うと、新しい技術が俺の格闘術と連動しないんですよ。だからちゃんと身に付くまで、まともに戦えないんです」


俺は、あくまで格闘術を生かす武器の使い方しかしてこなかった

本当の武器術とは技術体系が違いすぎて、全然応用が効かない


しばらくは、基本を繰り返してしっかり学びたい

そして、いずれは格闘術や高速アイテム術と連動させることを目指したい


今、達人のこの人達と手合わせなんかしたら、絶対基本がぐちゃぐちゃになるって



「むぅ…、つまらんな」

「それなら…」


「いや、お二人の手合わせは厳禁って言われたでしょ!」

「セフィリア様に速報しますからねー」


ヒルデとヴァイツの目が合った瞬間にフレイヤとユリウスが止めに入る

この二人の手合わせって、そんなにヤバかったの?



「…ラーズさん、クレハナでの仕事は終わったのですか?」

ユリウスが話を変えるように言う


「ええ、とりあえずは。ただ、ちょっとゴタゴタしていて、すぐにクレハナを離れることになったんですよ」


「龍神皇国に取り込まれて大変みたいですものねー」

フレイヤが言う



クレハナでは、間もなくツェルがクレハナの代表として就任する

新政権が正式に発足して、龍神皇国のクレハナ自治区として歩き出すのだ


内戦が終わった直後に龍神皇国に組み込まれ、これ以上ない混乱の中で多くのデモが起こっている


領境でのいざこざ、王族に対する不満、独立を捨てる事への反対運動

ツエルが必死に抑え込んではいるのだが、それでも吹き出す政治の不安定さ


フィーナ姫に対するバッシングもその一つだ


ウルラの領主ドースが大崩壊に関わっていたという衝撃の事実

その実子であるフィーナ姫が国政に関わるのなどありえない

すぐに完全に政権から手を引けというものだ


とりあえず、抗議活動を静観するためにフィーナは龍神皇国へと帰って来た

一時しのぎだが、姿を隠すことにしたらしい



「ラーズ、お前はそろそろ闘氣(オーラ)が使えるようになるんじゃないのか?」

ヒルデが言う


「チャクラ封印練の解除のこと? そろそろ考えようと思ってるよ」


「もう、必要な期間だった十年は経ってるんだろ? 何をもったいぶっているんだ」


「…もったいぶっているつもりは無いんだけどさ。闘氣(オーラ)、魔法、特技(スキル)を捨てて、いろいろな人に出会って、いろいろな経験をして…。この選択が間違っていたかもしれないって悩んで来たからさ、何か踏ん切りが着かないんだ」


「そんなものか?」


「もし、闘氣(オーラ)があれば、俺は大切な人を守ることが出来たかもしれない。なんて考えちゃってさ…。たら、れば、なんて言っても意味がないことは分かってるんだけどさ」


「間違っていはいないさ」


「え?」


「お前は求道者としての道を歩き始めた。効率は関係なく、進むべき道を見つけた。それは、闘氣(オーラ)を使い続けていたら不可能だったことだ」


「…」


「真の戦士とは力の有無ではない。自分の道を見つけたかどうか。戦場で散ったからといって、自らの道を歩いていれば、それは真の戦士だ」


「真の戦士…」


「騎士となるためには力が必要だ。だが、真の戦士となり得ない者は真の騎士になどなれん。お前は自分の道を歩いてきた、そのことに誇りを持つべきだ」


「ヒルデ…」



言うだけ言うと、行ってしまったヒルデ

もしかして、元気づけてくれたのだろうか?



「ラーズ、お待たせ」


「もういいのか、フィーナ?」


「うん、終わったよ」


ようやくフィーナが帰って来た

龍神皇国の騎士団本部で、セフィ姉たちと今後の話し合いをしてきたらしい


国の運営に携わるって凄いよな…



「それじゃあ、フレイヤ、ユリウスさん。また」


「ええ、またー」


「どちらに行くんですか?」


「古巣のシグノイアに行くんです。ずっと行けていなかったから」



ようやくクレハナの内戦が終わった

フィーナともやり直せた


この機に俺は、今までどこかで避けていたシグノイアに戻る決心をしたのだ



ダマスカスナイフ 六章 ~26話 生き残る力

ホワイト村 十章 ~4話 シグノイア

ヴァイツ 五章 ~22話 宇宙7

フレイヤとユリウス 五章 ~23話 遠征終了



いつも、誤字報告、感想、ブクマ、評価、ありがとうございます

大きな励みになっております!

十章終了まで後五話、お付き合いよろしくお願いします


ここで新作を告知させて頂きます

十章が終了したら、ですペアの新作を投稿しようと思います(8/13予定)


今作では殺伐感満載でしたので、次はのほほんとした話にしたいなと思っています


ラーズやフィーナ達の騎士学園時代の話

ドタバタ + 努力の、気軽に読める学園とダンジョンものを目指そうと思っています


誰も死にませんし、世界も救いませんw

よろしければ、気軽にお付き合いをよろしくお願いします♪

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