表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
348/394

十章 ~1話 フィーナの後悔

用語説明w

絆の腕輪:対象の一部を封印することでテレパス機能を作れるアクセサリー。リィと竜牙兵、フォウルとの思念通話が可能


セフィリア:龍神皇国騎士団の団長心得。B+の戦闘力を持つ。ラーズの遠い親戚で、五歳年上の憧れの竜人女性。使役対象は、生きたアイテムであるヴィマナ

フィーナ:B+ランクの実力を持ち、漆黒の戦姫と呼ばれるウルラ最高戦力。仙人として覚醒、宇宙戦艦宵闇の城をオーバーラップ、更に複合遁術を習得した大魔導士。ラーズとの別れを選んだ


クレハナの内戦における最後の戦い

時雨(しぐれ)砦での攻防


結果は、ウルラの大勝で幕を降ろした



砦は、少数で潜入したBランクの英雄たちによって落とされた

ナウカのBランクは砦を出て待ち構えていたため、砦内が手薄になっていたためだ


ナウカの領主であるシーベルは確保

これによって、砦を守っていたナウカ軍は次々と投降した


それから一週間…



「セフィリア殿」


ウルラの領主であるドースが声をかける


「ドース様。こちらにいらっしゃったのですか?」

金髪の龍神王セフィリアが振り返る


「ナウカの領民に対して、改めて勝利宣言を行う必要があると思いましてな」


「…」


セフィリアが見上げる先にドースも目を移す

そこには、巨大な氷柱が静かに佇んでいる


「鬼神マサカドを、まさか一般兵であるラーズ君が…」


「私はラーズの心を見誤っていました」


「…?」


「サバイバーズ・ギルト…」

セフィリアは小さく呟く



氷柱の中で、一人の女が静かに眠っている

その腹には、美しい流線型の模様を持ったダマスカスナイフが刺さっている


冷属性魔晶石による魔法陣と凍結爆弾、コウの特製ワスプナイフ

そして、天叢雲(あまのむらくも)カンナの仕込んだ霊属性封印術による、強制冷凍保存(コールドスリープ)がマサカドを封印した


その後、ウルラ軍が冷属性と水属性魔法、霊属性と氣属性を使って改めて封印

現在はマサカドが眠るこの場所に簡易な建物を立て、封印を継続している状態だ



ウルラ王家は、世界に対してクレハナの内戦の終結を宣言した


ウルラがクレハナの正当な王位を得ること

そして、ナウカ領のシーベルを前王パヴェルの暗殺容疑で逮捕したことを発表


投降したナウカ軍とスンブ地方は、龍神皇国の復興部隊が対処、治安維持に当たっている

これは、ウルラ軍の兵士による個人的な報復を防ぐ目的があり、ナウカ領の人権を守るためでもある



クレハナの内戦が終わったことで、ようやく新たな時代が始まる


クレハナの議会は再稼働され、最初の仕事は新たな王の選出

当然、ウルラ領のドースが王に選出される見通しだ

コクルの領主でもあるツェルも、ドースの選出を支持する


拘束されたナウカ領の領主シーベルは、ウルラ領の灰鳥(あすか)城に収容された


パヴェル王の死への関与について取調べが行われたが黙秘を貫いている

…いや、貫いていた



「…セフィリア殿。シーベルの様子はどうなのですか?」

ドースが尋ねる


「雑談には応じていますが、未だ…」

セフィリアがドースを振り返った


ドースは最初、シーベルの取調べに参加した

王に手をかけたという大罪は、王家の者で明らかにするべきだと考えたからだ


だが、シーベルは一切取調べに応じない

頑なに口を利こうとしないのだ


数日の時間を使ったところで、なんとセフィリアがドースに取調べを申し出た


「クレハナの人間でない、あなたが取調べを行うというのですか?」


「はい。()()()()()出来る話もあると思うのです」


「…」


そして、セフィリアが取調べを行う

その条件として一切の監視の目を排除、セフィリアとシーベルの二人だけでの会話とした



「どうでしたか?」


取調べを終えたセフィリアに、ドースが尋ねる


「…会話に応じました」


「なっ…!?」


「ですが、まだパヴェル王のことは聞けていません。少しずつ聞き出していくしかありませんね」


「一体、どうやって…?」


「…」


セフィリアは、静かに微笑む


「…フィーナ。ラーズのこと、頼んだわ」

そして、小さく呟いたのだった




・・・・・・




龍神皇国 ファブル地区

騎士団ファブル支局病院



病室に、一人の竜人男性が入院していた


「フィーナ、ラーズの様子は…?」


「ミィ姉…、まだ、何も…」


「そう…」



ベッドで寝ている男性はラーズ

人知れずウルラを勝利に導いた、隠れた英雄だ


マサカドを封印した際、その封印に巻き込まれて重傷を負った

しかし、変異体だったこともあり、ギリギリで生き残ったのだ


「ラーズ、死ななくてよかったわね」

ミィがフィーナを元気づけるように言う


「…」


「ま、ラーズがフィーナを置いて死ぬわけないか。大気圏ダイブしても、生きて帰って来たくらいだしね」


「…死ぬつもりだったの」


「え?」


「ラーズ、私を置いて死ぬつもりだった。…絶対に許さない」


「な、何を言っているの、フィーナ?」


「…私は絆の腕輪でリンクしていた。ラーズの気持ちが伝わって来たの」


「あ…」

ミィが、思いついたように口に手を当てる



思念の感度を上げるため、フィーナは自身の複合忍術である雲遁を使い、大量の雲を絆の腕輪に込めた

そのため、ラーズの心の動きを時雨(しぐれ)砦にいながら感じることが出来たのだ



伝わってくるラーズの思念


寂しさ、絶望、罪悪感、無力感

終りの見えない苦痛


それでも、ラーズはクレハナのため、仲間のため、守るべき者のために歯を喰いしばる

…フィーナのために、戦いを終わらせるという決意が伝わってくる



自分の命を顧みずにマサカドを足止め

極寒の環境を作り上げたうえ、長時間の戦闘を続ける


そして、ついにマサカドを追い詰めた

マサカドの闘氣(オーラ)を、一瞬とはいえついに破ったのだ


すでにラーズの体はボロボロ

凍傷もおこしかけていた


それでも戦いを止めることはない


それは、まるで自分の命に価値を感じていないかのよう

死んでもいいと思っているかのようだった



フィーナは、ラーズから伝わってくる思念で状況を把握する

決着の瞬間が近づいている


本当なら、すぐにでも戦いを止めたい

ラーズが命をすり減らせて戦っているのが分かるから


だが、今度はフィーナが歯を喰いしばる


逃げるな私

見届けろ、ラーズの戦いを


自分の始めた戦いを終わらせる

一刻も早くシーベルを捕まえる


それが出来なければ内戦は終わらない

ラーズの戦い自体が無駄になる


ラーズはフィーナに言った

マサカドは俺が止める、「任せろ」、と


だからフィーナはラーズを信じたのだ



カンナ様が練ったという大量の霊力を込めた封印術

そして、凍結爆弾と冷属性魔晶石の魔法陣による極寒の環境


この二つによる強制冷凍保存(コールドスリープ)

当然、近距離であればラーズ自身をも巻き込む


それでも、ラーズの機動力なら脱出できると思っていた


…でも違った

そもそもが違った


ラーズは、最初から脱出をする気が無かった



絆の腕輪から伝わって来たラーズの感情



それは、終わらせたい、楽になりたいという心の奥底の葛藤


そして、()()()()()()()()()()()()()()()



ブオォォォォーーーーー!


凄まじい冷気の嵐、そして霊力の渦が吹き荒れる



ラーズの命を容易く消し飛ばす、天叢雲(あまのむらくも)が込めた大量の霊力



「い、い、いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


響き渡るフィーナの絶叫



ラーズの存在が封印術に巻き込まれる


ラーズを助けるために別れたたのに…!

それなのに、ラーズが死んでしまう!



フィーナは必死にラーズの心と命を繋ぎとめる方法を考える


ラーズは繋ぎ止めておかなければいけなかった


ラーズはどこまでもかっこいい

一人で、やりたいことをやっている

どこに行っても、ひょっこり帰って来る


どこかでそう思っていた

でも、それが間違いだった


ラーズは、命の使い処を探していた


私のために、クレハナのために、自分の命を使い切ることが望みだったのだ





いよいよ最終章の十章、開始です

一日おきに投稿していきます、よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ