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九章 ~17話 ピンクの見学

用語説明w

装具メメント・モリ:手甲型の装具で、手刀型のナイフ、指先に鉤爪、硬質のナックルと前腕の装甲が特徴。自在に物質化が可能


マキ組長:フウマの里マキ組の上忍、ノーマンの女性。二丁鎌を使う忍びで、武の呼吸を身につけている

ゲイル:マキ組に移籍してきたフウマの里所属の下忍。対人暗殺の専門家で、隠れ、騙し、忍ぶ、忍者らしいスタイル

ピンク:カイザードラゴンの血を引く龍神皇国の貴族で騎士。カイザードラゴンのブレスを纏った特技スキルの威力は凄まじい


マキ組に出撃の要請が来た


「なんか、戦闘自体が久しぶりな気がするな…」


「ラーズはダンジョンに潜っていたからだろ」

ゲイルが言う


「俺達がいなかった間に出撃はあったのか?」


「俺とルイは二回呼ばれたよ。どっちもスパイ狩りだ」


「ナウカのか?」


「そりゃそうさ」


ちなみに今回もスパイ狩りだ

すでに、スナイパーのルイは配置についている


「お、マキ組長が戻って来たぞ」

ゲイルが前を指す


「どこに行ってたんだろう?」


「誰かを呼びに行くって言ってたぜ」


俺とゲイルはマキ組長の方に向う


「お、おい、誰だよ、あの巨乳で美人な姉ちゃんは!?」

ゲイルが目を奪われる


お前、忍びがそんなんでいいのか?


「そんな美人がいるのか…って、え!?」


「あ、ラー兄!」


「ピ、ピンク!?」

俺は思わず名前を呼ぶ


そこにいたのはカイザーな貴族のご令嬢だった


「お、おい、ラーズの知り合いなのか? 紹介しろよ」


「ラーズ、ゲイル。今回の戦闘を見学するピンクです」

マキ組長が紹介


「ピンク、龍神皇国に帰ったんじゃなかったのか?」


「もう少ししたら、セフィ姉とフィー姉がクレハナに来るの。私はセフィ姉が帰国する時に一緒に帰ろうと思ってるんだ」


「騎士団に入って忙しんじゃないのかよ」


「有休取って来たから大丈夫」


「何でマキ組長と?」


「あのダンジョンで仲良くなったんですよ。素直でいい娘です」


おぉ、ピンクの天真爛漫さはマキ組長まで籠絡しやがったか


「戦闘の見学って、いいんですか?」

ゲイルが言う


忍びの戦闘術は、秘密が守られている状態で本来の性能を発揮するものも多い

可能なら誰にも見られたくないはずだ


「ピンクは戦闘を生業としますが、Bランクの騎士です。技術体系が違いますし、忍びの有用さを知ってもらうことにも意味があります」


「私、ラー兄やマキさんの戦い方を見て感動したんです。私もこんな風に戦いたいって…。ゲイルさん、邪魔はしないのでいろいろ教えてください」


「あ、あぁ…、うーん、ま、その、しょうがないなー、特別だぞ?」

ニヤニヤするゲイル


ピンク、そこで胸でも押し付ければ簡単に男を堕とせるぞ

立派なくノ一の篭絡技術だ


「…」


…マキ組長の目が怖いので、俺は口にするのを止めた




・・・・・・




「一人、えらい強い奴がいるらしい」


現場に着くと、ゲイルがウルラ軍からの情報を共有する


「ちょうどいいですね。ラーズが相手をして下さい」


「え、俺ですか?」


「ピンクに技を見せるなら、強い相手とやらないといけませんから」


「そいつはウルラ軍の一分隊を素手でぶっ潰したってよ。尾ひれが付いてなきゃ、間違いなく化け物だ。気を付けろよ?」


「いや、どう気を付けるんだよ!?」


ゲイルはピンクに技を教えるとか言ってたくせに、マキ組長が敵とタイマンをさせるつもりだと分かるとスーっとフェードアウトしていく


この野郎…



「ほら、来ましたよ」


「…!」


向こうから爆発音が響く

そして、一人の男が姿を現した


身長二メートル弱、大きな体で道着のようなものを着ている

俺は、装具メメント・モリを物質化して陸戦銃を構えた


「…お前は、少し歯ごたえがありそうだな」

男が顔を守るように両腕をクロスさせる


まさか、銃相手に防御だと?

自殺志願者か?


だが、スパイ相手に手心は無用

下手すると情報を持ち帰えられてしまう


俺は引き金を躊躇なく引く



ドガガガガッ


陸戦銃が弾丸を吐き出す



「…何っ!?」


だが、弾丸が男の皮膚で止まり、パラパラと落下した



な、何だ?

防御魔法か?


いや、弾丸が変形している


防御魔法は力学属性であり、弾丸の運動エネルギーを奪って落下させる

弾丸は着弾する前に落下するのだ


だが、この男の場合は肌に着弾して弾丸を変形させている

防御魔法とは別の理由だ



「…っ!?」


ガキィッ!!



一瞬で男が間合いを詰めて来た

とんでもない追い足だ


咄嗟に陸戦銃で拳を受けてしまい、変形して損傷してしまった


くそっ、この陸戦銃はシグノイア製、取り寄せないと手に入らないのに!



俺は、陸戦銃を投げ捨てて左フック

装具のナックルガードを叩きつける



ゴッ!


「ぐはっ…!」



だが、同時に男の拳が俺のボディを直撃

体がくの字に曲がる


込み上げる胃液

衝撃が、完全にヴァヴェルを貫通しやがった


歯を喰いしばり、右アッパーを返す


くそっ…、効いた…!

だが、やっとこいつの使っている技が分かった


装甲を貫通した衝撃、銃弾を止めた体の硬化


これは「氣」だ

氣力を使った攻撃、そして硬氣功と呼ばれる技術だ


硬氣功は、意識を集中して瞬間的に体を硬化させる

デメリットとして関節も固めるため動きが阻害される


俺の攻撃を受けるために一瞬硬化、受けた瞬間に解除して攻撃に転じたのだ

その証拠に、俺の返しの右アッパーは硬氣功で受けられなかった



「うおぉぉぉっ!」


男がおたけびを上げながら拳を突き出す



俺は手のひらで叩くパーリング

こいつのパワーは、変異体である俺を明らかに上回る


俺はドラゴンタイプで、ギガントタイプの次に身体能力が高い

それなのに力で負けるって、こいつは本当に人間か!?


男の踏み込みに合わせて、俺は頭突きを合わせる

意表を突かれた男が一瞬体を硬直させる


チャンス!


俺は道着を掴み、足を開いて腰を落とす



「おらぁぁぁっ!!」


ゴシャッッ!



体を反転、男を投げ落とす背負い落とし

指先のグリッパーが胴着を掴み、男を頭から地面に叩き落す


「ぐっ…」


男は投げられながらも、道着を掴んでいる俺の手を握る


男の動きは早かった

小指を握られた


…まずい

仕方がない、指はくれてやる


俺は一気に手を引き抜く


激痛

握られた指があらぬ方向に曲がっている


だが、折られた直後は俺のターンだ

顔面を踏みつけて、蹴り上げて距離を取る



「…」


くそっ、痛ぇ



だが、仕方がない

俺は、折れた小指を無理やり曲げて拳を作る



「マ、マキさん、ラー兄、痛そう…」


「痛いでしょうが、ラーズは変異体。それに、痛みに対する訓練も受けています。あの程度の骨折では影響はありません」


「拉致されていた施設でですか?」


「はい、そう聞いています。望むものではなかったのでしょうが、忍びとしての実力を底上げしています」


「ラー兄…」



男は、氣力を纏った掌底を振るう


この一撃は、おそらく氣脈が通っている肉体に作用する

逆にいえば、肉体ではないものを素通りする


躱しながら、俺は装具を纏って左手の人差し指と中指を伸ばす



ドシュッ!


「ぐっ…!?」



仕込まれたニードルが前腕の装甲から飛び出す


しかし、男は俺の攻撃の意図に反応

体を捻ったため左肩に突き刺さった


反応しなければ喉を貫いていたのに、よく初見で反応しやがったな!


俺はモ魔で巻物を読み込みながらナイフで応戦

男が硬氣功を使ったため刃を止められる


下がると見せかけてナイフを投げつける

素手になったと見せかけて、ポーチからマキビシを投げつける



「ぐっ…」


予想外の連続投擲


男の顔にマキビシが刺さり、隙ができる

伊達にルイに手品を習ってないぜ


俺は、前蹴りで顎を跳ね上げて、そこからハイキック




ゴッ…


「がっ…」



男がよろける

よし、仕留める…


そう思った瞬間に、男はすり足で間合いを詰めて来た


何かの攻撃だ

俺は左腕のラウンドシールドでガードをしながらモ魔を発動


男が反転、背中を向ける



ゴバァッ…!


「…………っ!?」



凄まじい衝撃が俺の体を吹き飛ばす

同時に、俺の風属性竜巻魔法が発動


俺は、横にあったビルの二階部分の壁を突き破った



鉄山靠(てつざんこう)


全体重を乗せた、体当たりに近い背中での打撃

しかも、これに氣力まで乗せてきやがった

この男は、氣力の作用で肉体の潜在能力も開放している



「ぐは……」


交通事故のような衝撃、下手すると死んでいた


ヴァヴェルの装甲と保護力に助けられた

変異体の頑強さにも感謝だ



俺は瓦礫の中から何とか立ち上がり、男の前に降り立つ


出来るだけダメージを感じさせないように

少しでも男の気力が萎えるように


そろそろ終わり、決着だ



「おあぁぁっ!」

「らぁっ!!」


同時に動く


俺は胴タックルで押し込む

男は腰を落として、中段突きで応戦


タックルを諦めて、離れ際に装具のニードルで男の顔を狙う


だが、男は頭を振った

こいつ、また反応するか!


狙いを急遽変更、俺は左肩にニードルを突き刺す



「ぐあぁぁぁぁっ!?」


男が苦悶の声を上げる



それはそうだ、俺が狙ったのはさっき突き刺した傷口だ


二度刺しの激痛

俺は絶対に味わいたくない


この隙に乗じる

一気にしゃがみ込んで、ナイフで足の甲を刺す


同時に、右足で天に突き上げる蹴り上げ



ゴガッッ!


真下から、視界外からの蹴り



硬氣功を使う暇もなく男の顎が砕ける


そのまま、俺は背中に回り、腕を首に回す

同時に、ニードルを耳の穴に添える


耳の穴と耳孔、鼓膜とその奥にまで硬氣功が使えるか?



「…」


男は負けを認めて、観念して動きを止める



ゲイルが拘束する男を見て俺は思う


こいつは強かった

今度は、殺し合いじゃなくて純粋な格闘術で勝負してみたいな



陸戦銃 四章 ~23話 ミィとのクエスト

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