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九章 ~11話 ダンジョンアタック六回目2

用語説明w

装具メメント・モリ:手甲型の装具で、手刀型のナイフ、指先に鉤爪、硬質のナックルと前腕の装甲が特徴。自在に物質化が可能


マキ組長:フウマの里マキ組の上忍、ノーマンの女性。二丁鎌を使う忍びで、武の呼吸を身につけている

ミィ:龍神皇国騎士団経済対策団のエース。戦闘能力はそこまで高くないが、経済的な観点で物事を考える。海の力を宿したオーシャンスライムのスーラが使役対象

ピンク:カイザードラゴンの血を引く龍神皇国の貴族で、騎士見習い。カイザードラゴンのブレスを纏った特技(スキル)の威力は凄まじい

タルヤ:エスパータイプの変異体。ノーマンの女性で、何かに依存することで精神の平衡を保っていた。サンダーエスパーの二つ名を持ち、雷属性魔法を使う。重症を負い冷凍保存されていた


地下三階層



二つ目の部屋でモンスターと遭遇

モンスターはアンデッドのグールだ


アンデッドとなって活動したゾンビに魔属性の魔力が蓄積することで、より高位の存在となったモンスター

反射によって動くゾンビと違い、明確な欲求を持って襲ってくる

動きも機敏となり、変わらず痛みや恐怖を持たないため、危険度は上がる



ドシュッ!


装具のニードルを射出して、グールの眼球を貫通させて奥の脳を破壊する



ガチッ!


「うおぉっ!?」



装具メメント・モリの新機能であるニードル

手甲型装具の短所でもある攻撃距離を、唯一稼げる武器だ


射程においての優位性と、突きという攻撃速度は、格闘や暗殺での局所攻撃では使い勝手がいい

だが、アンデッド相手では完全に悪手だった


アンデッドは元から死んでいる

そのため、多少重要機関を壊したところで動きは止まらないし、痛みも感じない

急所という概念がないからだ



それなら、戦い方を変える



ゴパッ!


右アッパーで顎をたたき割る

右腕をつかみ、手首をひねるようにして肩関節を破壊


肩固めから、引き倒して頸椎を踏み折る


うん、俺の装具は、打撃や刺突だけでなく、組技にも使える

いい感じだ



二体目


ローキックからの掴み

直後に、右に崩しながら左足の足首に足を添える膝車


頭をつかんでから、地面に向けて頭を叩き落す大外刈りだ



グシャッ……!


グールは、頭蓋骨ごと中身を飛び散らせて動きを止めた



「うへぇ…。ラーズ、グロい倒し方しないでよ」

ミィがベロを出しながら顔をしかめる


「ああ、悪い。いろいろ試してみたくてさ」


「ラー兄、何を試しているの?」

ピンクが効いてくる


お、聞きたいの?

しょうがないな、もっと聞いてくれ


「俺の装具には、指先と手のひらがグリッパーになってるんだ」


「グリッパーって?」


「簡単に言うと、接着する、もしくは抵抗が高い部位だね。通常は壁に張り付いたり、登ったりすることに使うんだけど」


「それを、戦闘で何に使ったの?」


「組技だね。抵抗が高いから、指が触れるだけで簡単につかめるし振りほどかれない。立ち関節技が極まりやすくなるし、投げや崩しにも使える。充分に戦闘でも使えたよ」


「…ラーズ、嬉しそうね」

タルヤが言う


「まぁ、この装具は完成まで紆余曲折あったから…」


「違うわ、若い娘と話すのがよ」


タルヤがピンクを見る


「えぇっ!?」


確かに、ピンクは就職したばかりのピチピチ女子(死語)だけど…

いきなり何の話ですか?




地下四階層



「ラーズのテストは終わりましょう。ここからは、パーティ戦闘を試します」


「やった!」

「やっと騎士様の実力を見せられるわね」

ピンクとミィがやる気を出した


「いえ、参加するのはタルヤと私です」

だが、マキ組長が首を横に振る


「え!?」


「騎士のお二人では、この階層のモンスターでは瞬殺でしょう。訓練になりませんよ」


ミィとピンクが残念そうに後ろに下がる



次の部屋でワーウルフに遭遇した


二足歩行の狼で、牙と爪を使ってくる強敵

タルヤが負傷し、あの施設で冷凍保存されるきっかけとなったモンスターだ



俺とマキ組長が前に、その後ろにタルヤがつく


俺は、急ブレーキをかけてぎりぎりで爪を躱す

そして、飛び込みながら拳に自重を乗せる



「ガフッ…!」


拳がめり込み、ワーウルフの動きが止まる



二の腕を掴んで、レスリングのスイッチの動きで側面へ

そこから、崩拳を押し出すように打つ


その理由は、真後ろにワーウルフが迫っていたため

ぶつけてワーウルフの動きを止める


対多数戦闘で一番大切なのはポジショニング

敵の動きを邪魔する位置取りを常に考える



「下がって!」


タルヤの声に、俺はバックステップで下がる



バチバチバチーーーー!


雷属性範囲魔法(中)が炸裂



ワーウルフ四体が巻き込まれ、煙を出しながら倒れる


「やったわね」

ミィがタルヤに声をかける


「う、うん…」

タルヤが頷く


「まだです。グー、チョキ」


「クキュッ!」


マキ組長が言うと、その周囲を飛んでいた風が倒れたワーウルフに向かって行く



ドガァッ ズバァッ!


そして、まだ生きていたワーウルフに打撃と斬撃を与えて止めを刺した



「お疲れ様。偉いですよ、グー、チョキ」

マキ組長が、実体化した鎌イタチの頭を撫でる


「凄いですね、もう完全に使役してるじゃないですか」


フォウルやリィは、最初は全然いうこと聞かなかったんだけどな

懐かしい


「ラーズのじゃんけんには負けられませんから。しっかりと躾をしました」


「…マキ組長。俺は装具メメント・モリの機能のネーミングを変えました」


「?」


「じゃんけんだと三つしか機能が無いように思えてしまいますが、メメント・モリの機能は五つあります。おかしいかなって」


「では、なんと呼ぶのですか?」


「フィンガーやハンドでどうですかね。五本指と五つの機能をかけてみました」


「…いい名ですね」

マキ組長の口角がちょっとだけ上がる


そんなに、じゃんけんってネーミングを独占したかったのか

まぁ、使役対象の名前なら愛着が湧くのも分かるけども



「ねぇ、ラーズ。私の範囲魔法どうだった?」

タルヤが話しかけてくる


「え? うん、範囲が広くてすごく良かったよ。この先も期待してる」


「ラー兄、私も活躍したい」

今度はピンクだ


「次は階層ボスで強力なモンスター、その先はいよいよ深層階だ。ピンクの力を頼りにしてるよ」


「ラーズ。このパーティ、ハーレムじゃない。得したわね」

ミィがニヤニヤしながら言う


確かに、戦闘員は俺以外、ミィ、マキ組長、ピンク、タルヤと全員女だ

だが…


「ミィ、バビロンさん達のことを完全に忘れているだろ」


だが、研究員は全員男だったりする


「…え? いやいや、忘れてるわけないでしょ? もー」


「ミィさん、自分達の仕事は最下層に着いてからです! 気にしないで下さい」

バビロンさん達が、ちょっとだけトーンを落として言う


俺達は、そんなおしゃべりをしながら五階層への階段を降りて行った




地下五階層



相変わらず水晶がキラキラと輝く幻想的な階層

俺やタルヤが潜っていた頃と変わっていない


「綺麗…」

ピンクが言う


「五階層と十階層だけ、水晶があるフロアになってるんだ。それぞれ、階層ボスとラスボスがいる場所だからかな」


「階層ボスって強いの?」


「エイクシュニルっていう、水属性の鹿みたいなモンスターだ。強いけど、ピンクやミィがいるなら特に問題はないと思う」


「エイクシュニルか…。魔法を使うから、バビロンさん達の防御に気を付けないとね」

ミィが後ろを歩いていたバビロンさん達を振り返る


「全員がボスフロアに入る必要はありません。研究員の皆さんは外で待っていてもらいましょう」

マキ組長が言う


「でも、バビロンさん達だけで待っているのは危険じゃないですか?」

ピンクがマキ組長を見る


「はい。ですので、護衛としてピンク様、一緒に待っていてもらえますか?」


「えー!? また私、待ちなの!?」


「ピンクの火力だと、階層ボスも一瞬で終わっちゃうからいいんじゃないの?」

ミィが他人事で言う


「確かに、深層階はエイクシュニルよりも強いモンスターがゴロゴロいた。前半の階層くらい、ピンク抜きでなんとかできないといけないからな」

俺は、ちょっと凹み始めたピンクをフォロー


「それなら、ミィさんだって一緒に待っていればいいのに…」


「私はほら、リーダーとして見届けておくのが責任でしょ? 何かあったらスーラで守れるし」

ミィが取り繕う


騎士ってのは、俺が私がと前に出るタイプが多い

騎士の証である闘氣(オーラ)持ちにしかできないことが多すぎて、後ろで待つということが少ないからだろうか?



「…着きましたよ」

マキ組長が言う


「タルヤ、覚えてる?」


「ええ…」


俺達は互いに頷きあう

目の前には、階層ボスの部屋の入口があった



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― 新着の感想 ―
[一言] ダンジョンに戻って来た上に三階層までラーズ一人でやってる所が成長を感じやすいです
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