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九章 ~10話 ダンジョンアタック六回目1

用語説明w

装具メメント・モリ:手甲型の装具で、手刀型のナイフ、指先に鉤爪、硬質のナックルと前腕の装甲が特徴。自在に物質化が可能


ミィ:龍神皇国騎士団経済対策団のエース。戦闘能力はそこまで高くないが、経済的な観点で物事を考える。海の力を宿したオーシャンスライムのスーラが使役対象


「…」


俺は、たった今、降りて来た縦穴を見上げる



ここは入り口があるエントランス

…このダンジョンに戻って来たのだ


あの頃は移動用のポッドの発着場となっていたが、今は地上から降りてこられるエレンベータ―に作り変えられていた


「懐かしいわね」


「ああ、そうだな」

俺は、タルヤと言葉を交わす


思い出しているのは、お互いにあの頃のこと

俺は、ダンジョンを制覇した仲間であるハンクとアーリヤの顔を思い出していた


「ラーズ、タルヤ。…大丈夫?」

ミィが、俺達に言葉をかける


「問題ない。思い出に浸っていただけだ」

「私も大丈夫」


俺とタルヤは、ミィに答えると歩き始める


感傷に浸りに来たわけじゃない

やることをやろう



「ラーズさん、よろしくお願いします!」

バビロンさんが、興奮して上気した顔を向けてくる


「ええ、よろしくお願いします」


「このダンジョンの最深部に! 今まで誰も発見できていなかった! 真実の眼の真の遺跡が! あるかもしれないんです!」


あの、興奮して唾が飛んでますよ?


「言っておきますけど、このダンジョンの後半はなかなかの危険度です。指示に従って、決してパニックにならないこと。Bランクの騎士がいるとはいえ、普通に死ねますからね?」


「………はい」

研究員の三人は俺の言葉にビビったのか、神妙な面持ちでコクコクと頷いた



「ラー兄、私がちゃんと守るから安心してね」

ピンクが拳を握る


「頼りにしてるよ。ピンクはミィよりも頑丈だろうから、バビロンさん達を守れる防御役(タンク)になれると思うんだ」


「うん。それにラー兄も守るよ」


「…ピンク様、ミィ様。その件でお願いがあります」


「はい?」


後ろから声をかけて来たマキ組長に、ピンクが振り返る


「地下五階層の中ボスまでは、基本はラーズに戦闘を任せて下さい」


「え…」「俺?」

俺とピンクが同時に言う


「はい。ラーズの武の呼吸の修行にちょうどいいと思うのです。対多数戦闘、存分に挑戦してください」


「ダンジョンでの修行は、さすがに危険すぎるかと…。いえ、今更ですね」


今まで、崖から突き落とされたり、グレーターデーモンとタイマンさせられたり

マキ組長の修行は実戦投入前提だ


「はい、今更でしょう。今後も何が起こるか分からない。早く練度を高める必要があります」


「分かりました」



「…さ、行くわよ!」


ミィが声をかけ、総勢八名のパーティがダンジョンの入口を入っていく

ダンジョンアタックの始まりだ




地下一階層



「ご主人、次は左の通路だよ!」

データがナビする


「分かった。最短ルートは、このナビの通りだな?」


「ええ、あの施設のデータベースにダンジョンの地図があったから間違いないわ」

ミィが答える



俺達は、データのナビ通りに進んでいく

ダンジョンにおいて、道が分かっているというのはチートに近い有利さだ



「ラーズ、敵が」


「ああ、ゴブリンだ」


俺とタルヤが同時に敵に気がつく



「え?」「え…」

騎士である、ミィとピンクが驚いている


変異体の五感とテレパスの索敵は、Bランク相手でも負けるものではない



「では、ラーズ。油断しないように」

マキ組長が言う


「了解です」



俺は、両手に装具を物質化して、部屋に進んだ



ゴブリンの数は五匹

一斉に襲い掛かって来た



こん棒を振りかぶるゴブリンに対し、踏み込んで攻撃を躱す


耳から飛び出すニードルを差し入れる

反対の耳まで貫通、息の根を止めた


ニードルを出したまま、次のゴブリンを迎え撃つ



ドス…


「ギャッ…」



ニードルで首を貫き、蹴って後ろのゴブリンに当てる


飛び込んで、拳を握り込んだナックル

後ろのゴブリンの頭蓋骨を砕く



こん棒を装具の装甲でいなし、縦肘を突き上げる

肘のエッジで顔を顎から切り上げ、喉を手刀で貫く


次、最後の一匹


ゴブリンは、金槌のような小さい武器を持っている

俺は、長い射程のジャブでゴブリンを削る



パパン!


ゴブリンの鼻が砕ける



動きが止まったゴブリンに対し、ハイキックで頭を刈り取る

変異体のパワーとナノマシンシステム2.0の強化能力で、頭蓋骨と首を砕いた


この間、約三十秒だ



「凄い…」

ピンクが言う


「ラーズ、まだまだ効率化できそうですね。装具の使い勝手はどうですか?」


「いい感じですね。もう少し使い込んでみます」



次の部屋にもモンスター


グラスリザード、地を這うトカゲだ



ドガガガッ!


ズガァァァッ!



俺の銃化した左腕による掃射と、ピンクの炎を纏った一撃ですぐに全滅


「ピンク、手を出しちゃダメだって。すぐに終わっちゃうんだから」


「あ、ごめん、ラー兄。つい…」


俺達は地下二階層への階段を降りる




地下二階層



犬頭の獣人、コボルトと遭遇


「またラーズが一人でやるの?」

ミィが尋ねる


「五匹くらいなら大丈夫だ」


俺は一人で前に出る



装具を使っての戦闘は、装具の性能評価と武の呼吸の鍛錬で一石二鳥となる



ショートソードを振るうコボルト


俺は、流星錘アームで錘を発射

隙を突かれたコボルトの顔面に命中する


一気に跳び込み、鉤爪でコボルトの目を斬り裂く

そして、向ってくる二匹に向ってコボルトを押し出して動きを阻害


近くの一匹との近接戦闘だ



コボルトが掴みかかってくる


コボルトの右手を左手で払いながら、右アッパー



ゴギャッ


「ガフッ…!」



顎を叩き割り、コボルトを両手で突き出す


真後ろに迫っていたコボルトと衝突

当然、追撃に入る


伸ばした腕をヘッドスリップ


右ストレートを顔面に、骨を叩き割る


左フックで手刀をわき腹に突き刺す



うん、ナックルの破壊力は高い

変異体の力とナノマシンシステムの力が相まって、この階層のモンスターなら十分に破壊できる


深層階は強力で大型のモンスターが多いため、こうはいかない

だが、その反面、大型のモンスターは数が少ないため逃げやすい


逆に、上層階のモンスターは弱いが、その分、数が多いため逃げにくい

…とは言っても、強力な攻撃や範囲魔法などで一掃できてしまうのだが


あっさりとコボルトを全滅させ、俺達は先へ進む




「ちっ…、飛び道具か」


次の部屋には、腰ほどの高さの小人十体ほどが弓矢を構えていた


「邪妖精レッドキャップね」

ミィが、水属性魔法を唱える



レッドキャップは、獲物の血で自らの帽子を染めるという趣味の悪いモンスターだ

魔属性魔法を付加した矢を射ろうとしている


そこに、ミィの水属性魔法が発動した



シュウゥゥゥ………


濃い霧が当たりに立ち込める



「サンキュー、ミィ」


「流れ弾に気を付けなさいよ」



飛び道具は強力な兵器だ

自分の攻撃が当たらないのに、敵の攻撃だけが当たる

そんな理不尽の状況を作り出してしまうからだ


対抗策は、有名な土属性土壁の魔法、闘氣(オーラ)や障壁魔法等での遮断、若しくは同じ遠距離武器を使うなどが一般的だ


そして、更にもう一つ対抗策がある

それが視界を遮ること


例えば、スナイパー殺しと呼ばれる風属性蜃気楼魔法

光の屈折を利用して実態を掴ませない魔法で、遠距離攻撃の命中率を著しく下げる魔法だ


ミィが使った水属性霧状魔法も、濃い霧によって視界を封じ、遠距離を無効化する

騎士学園時代から、俺やヤマト、フィーナを守るためにミィがよく使っていた魔法だ



ボッ!


エアジェットで一気に移動

矢が飛んで来るが、霧がうごめいて俺の位置は掴めない


接近、ニードルによる刺突


嗅覚と聴覚がレッドキャップの位置を教えてくれる


小さい敵は、ニードルの刺突で息の根を止められるため便利だ



手刀、ナックル、鉤爪、そして流星錘でレッドキャップを仕留めて行く



「まだ、無駄な動きが多いですね。ラーズ、戻ったら型を繰り返しやるべきです」

マキ組長が言う


「はい…」


マキ組長は、あの濃霧の中でもしっかりと俺の動きを見ていたようだ



「いや、あんたら。次は地下三階層よ? そろそろ、普通にダンジョン攻略したいんだけど」

ミィが、そんな俺達に口を挟む


「五階層の中ボスまでは大丈夫です。ラーズはマキ組の忍びですから」


「なんか、かっこいい響き」

ピンクがのんきに感心する



俺達は、三階層に続く階段を降りて行った


バビロンさん 八章 ~24話 次の発掘地点

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