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閑話26 フィーナの追求

用語説明w

フィーナ:B+ランクの実力を持ち、漆黒の戦姫と呼ばれるウルラ最高戦力。仙人として覚醒、宇宙戦艦宵闇の城をオーバーラップ、更に複合遁術を習得した大魔導士。ラーズとの別れを選んだ

ドース:クレハナのウルラ領の領主で、第二位の王位継承権を持つ。フィーナの実父




内戦中ではあるが、平和になって来たウルラ領では第二成人式が行われていた


第二成人式とは、三十歳になった若人たちが正式な成人となったことを祝う会

各市町村が主催している


これに対して、通常の成人式、又は第一成人式と呼ばれる行事も存在する

それは、二十歳になって肉体的に大人になりましたという昔ながらの行事だ


第二成人式とは、第一成人式から十年の時が経ち精神的にも成熟して大人になる年

言うなれば、社会から本当の一人前と見なされる記念の式ということだ


ペアの人類の平均寿命は百五十歳前後

再生医療前提の寿命ではあるが、この寿命が人類の限界と言われており、実際に寿命は頭打ちになっている


どんなに寿命が延びても、小さかったころや学生時代、そして成人式の思い出は残っているもの


ミィとヤマトは去年、第二成人式を迎えた

そして、二歳年下のフィーナと、二年間宇宙に言っていたラーズは来年に第二成人式を迎える


内戦のため、簡素な式しかできない参加者のことをかわいそうだと思いながら、フィーナは先を急いでいた




ウルラ領 灰鳥(あすか)



フィーナは、ナウカ領の侵略から急遽戻って来た


「どうしたのだ、フィーナ。命令を無視して急に戻って来るなんて」


王の間にて、ドースがフィーナを待っていた

その横には五遁のジライヤも控えている


「お父さん、ジライヤ。聞きたいことがあるの」


「何だね?」


「全面戦争の時に吹いた神風。…あのスタンピートを起こしたのは誰なの?」


「………」


フィーナの言葉を聞いて、ドースとジライヤが押し黙る

その様子を見てフィーナが代わりに口を開いた


「…やっぱり、ラーズなのね?」


「…」


「どうして黙っていたの? たまたま発生したなんて嘘を、どうしてついたの!?」


フィーナは、ドースとジライヤに強い口調で言う



知らなかった

ラーズの活躍が、全面戦争を勝利に導いたことを


一般兵は簡単に死ぬ

だからこそ、ラーズを戦場に立たせたくなかった


だけど、全面戦争の結果を左右したのは、その死にやすい一般兵だった


ナオエ家の裏切りで崩れたのは一般兵の部隊

攻めて来たのもナウカの一般兵の部隊


少数のBランク以上の戦闘員だけでは、一般兵の大軍を止め切れなかった

そして、ピンチを救ったのもまた、一般兵であるラーズの機転だったのだ



「全面戦争は、ウルラとナウカ、そしてコクルの王家の威信を懸けた戦いだ。一般兵であるラーズ君がウルラを勝利に導いたなどとは発表できない」

ドースは静かに説明する


あくまでも、全面戦争の勝利は、ウルラの英雄であるフィーナやヤマトなどのBランク戦闘員でなければならない

その結果が、英雄を擁するウルラが王位を取るという正当性を補強してくれるからだ


「忍びが、その名を明かして活躍を公言するなどありえない。それはマキ組も了承済みだ」

ジライヤも言う


「…どうして私にまで黙っていたのかを聞いているの! いえ、どうして私にだけ黙っていたのよ!?」


ドースもジライヤも知っていた事実

そして、ヤマトさえもが知っていたこと


どうして、意図的にフィーナには知らされなかったのか?



ラーズは、誰にも知られずに国を救った

それはどんな気持ちだったのだろう


大崩壊の時もそうだ

黒幕の特定は、本当はラーズとシグノイアの防衛軍の手柄だった


私は、ラーズを一般兵だと言って軽んじた

そのラーズの活躍を知りもしなかったのだ



「どうして私に隠す必要があったの!? ラーズは最大の貢献者じゃない!」

フィーナが二人を問い詰める


「どうして、ラーズがウルラを助けてくれたことを黙ってたのよ!」


「…リスク管理じゃ」

ジライヤが、ようやく口を開いた


「どういう意味?」


「フィーナ姫。お主、どうしてあの小僧をクレハナから出したかったのだ?」


「…なんの関係があるの?」


「関係はある。心配だったからだろう?」


「…」

フィーナが無言で肯定する


「その小僧が、もし戦場で死んでしまっていたらどうなっていた?」


「え…」


「もし小僧が戦死した場合、フィーナ姫の心は間違いなく折れていたと、わしは思う」


「…っ!」


「内戦を戦い続ける気力が尽きる。それは、ウルラにとって大きな損害だ。だからこそ、余計な責任を感じないためにも、あの小僧が全面戦争の英雄だったなどということを知らせたくなかったのだ」


「そ、そんなこと、理由に…」


「なる。お主はウルラの姫であり、領民の象徴だ。そして、今やクレハナの象徴ともなっている。あのマサカドを戦場で下し、ウルラ領を復興させてコクルを寝返らせた。間違いなくこの内戦の英雄はフィーナ姫だ」


「…」



…全面戦争での、鬼神マサカドとの一騎討ち


フィーナはダブルマジックでソラコア属性魔法を発動した

お互いの全力の一撃がぶつかり合う…、と思わせたのだ


お互いの一撃の刹那

マサカドの斬撃が一瞬早くフィーナを捉える



「なっ…!?」


マサカドが驚愕、目を見開く



勝利を確信したマサカドの斬撃

しかし、大剣が雲と化したフィーナの体をすり抜けた


その予想外の手応えによって、わずかにバランスを崩すマサカド

その瞬間に、フィーナのソラコア属性魔法がマサカドに直撃する


お互いの渾身の一撃の交錯

その刹那に、フィーナは自身の複合遁術、雲遁を発動した


それは、今まで一度も実戦で使わなかった正に切り札だ


霊属性によって霊体にダメージを受けながらも、攻撃を直撃させたフィーナとマサカドのダメージ差は歴然


フィーナは、花遁や爆遁による火力の増強よりも、雲遁という切り札を複合遁術に選んだ

そして、徹底した秘匿によって、フィーナは薄氷の上の勝利を掴んだのだった



「…だからこそ、フィーナ姫という象徴の心が折れるようなことがあってはならない。その可能性を少しでも減らすために、あの小僧に期待させたくはなかったのだ」

ジライヤが続ける


「フィーナ、分かってくれ。フィーナはもうただの騎士ではない、国の代表なのだ。もう間もなく、私はフィーナにクレハナという国を贈ることが出来る。それまで、余計なことは考えずに集中してほしい」

ドースは静かに、諭すように言う


「…ラーズのことが余計なことだって言うの!? 一般兵はウルラのために戦い、そしてたくさん死んでいっている! ラーズだって、ウルラのために命を懸けてくれたんでしょ!」


「フィーナ…」


「私を除け者にしないで! 私は自分で判断するわ!」


「…」


「ブルトニア家のこともそう。…もう、二度と私に情報を隠さないで。そうじゃないと、私がウルラを信じられなくなる」


「フィーナ姫…、ブルトニア家のことを?」


「…調べたわ。襲われたとき、どうして領境のあの場所に行ったのかも。そして、マキ組との関わりも」


「…」



フィーナは、静かに空を見上げる


ラーズは私を追ってクレハナに来てくれた

私のためにクレハナで戦ってくれていた

全面戦争でも貢献してくれた


私は、ずっと一般兵であるラーズに助けられていたんだ…



内戦の終結、そして、セフィ姉との約束

もう少しで全てが終わる


国を立て直す

そうしたら、私は自由になる


私には、この国の全てを解決することはできない


だからこそ、私は打算を持つ

この国を救うのは、 私が自由になるため


私自身がクレハナから離れられる、その自分勝手な願望のためだ



…そして、またラーズと会いたい


ラーズと話したい



ラーズと…、また……




※この世界の人類は、平均寿命が150歳前後と長いため、現実の年齢と差があります

換算には、以下が変換公式で直します


(年齢 - 20) ÷ 2 + 20 = 現実の年齢


作品の年齢を現実の年齢に変換すると、


作品での三十歳 → は、現実での二十五歳(ラーズ、フィーナ、ミィ、ヤマトはこの辺り)

(30-20)/2+20=25歳、第二成人式の年齢


作品での六十歳は、現実での四十歳

五十歳 (60-20)/2+20=40歳、一回目の定年


作品での百二十歳は現実での七十歳

百五十歳(120-20)/2+20=70歳、二回目の定年


となります


これは、二十歳までの成長過程は変わらず、寿命だけが劇的に延びているからです

話の中でこの年齢だと、現実では○歳くらいか…、とイメージして下さいませ

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― 新着の感想 ―
[一言] ......やべぇ、闇堕ちフィーナルート見え始めてね?
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