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九章 ~5話 装具の調整

用語説明w

装具メメント・モリ:手甲型の装具で、手刀型のナイフ、指先に鉤爪、硬質のナックルと前腕の装甲が特徴。自在に物質化が可能


フィーナ:B+ランクの実力を持ち、漆黒の戦姫と呼ばれるウルラ最高戦力。仙人として覚醒、宇宙戦艦宵闇の城をオーバーラップ、更に複合遁術を習得した大魔導士。ラーズとの別れを選んだ

ヤマト:龍神皇国騎士団の騎士、特別な獣化である神獣化、氣力を体に満たすトランスを使う近接攻撃のスペシャリスト

スサノヲ:見た目は赤ずきんをかぶった女の子。正体は、怪力の腕利き鍛冶職人でジャンク屋


ナウカ領 紫苑(しおん)



「おう、フィーナ」

城下町を眺めていたフィーナが、呼びかけられて振り返る


そこには、ヤマトが立っていた


「ヤマト、遅い到着ね」


「一日遅れたくらいで固いこと言うなよ」


「まだクレハナの統一は終わってないんだし、シーベルの居所も分かってない。油断できないんだよ?」


「分かってるって。スンブ地方の制圧には俺が出る。フィーナは少しゆっくりしろよ」


「…急に、どうして来るのが遅れたの?」


「ああ、ラーズ達に会いに行ってきたんだ。しばらく帰れないだろうからよ」


「…」


「旧ナオエ家の領地にあるドミオール院に顔を出したら、ラーズもいたからちょうどよかったんだ」


「………ヤマト」


「ん?」


ヤマトの言葉を聞いて、フィーナが悩むような素振りをする

それでも、フィーナは意を決して口を開いた


「………マサカドの言葉を覚えてる?」


「マサカドの言葉? この紫苑(しおん)城でのことか?」


「そう。あの時に行った言葉…」



あの時、マサカドは吐血しながら言った


()()()()()()()()()()()()()()()()()……」、と



「ああ…、そうだったっけか?」

ヤマトが腕を組みながら思い出そうとする


「うん、確かに言った。スタンピートを起こしたって…」


「ラーズが起こした奴だろ? ナウカ軍でも、ウルラが起こしたことを知っていたんだな」


「え…!?」

フィーナが目を見開く


「あ?」


「ラ、ラーズが…、起こした?」


「…まさか、知らなかったのか? ドースさんもジライヤも知っているはずだぞ。なんたって、あの全面戦争の決定打になったんだから」


「…私は、偶然起きたって聞いてた」


「偶然? どんなタイミングだよ。神風じゃあるまいし」


「だから、その神風が吹いたって言われてたの!」


「…!」


フィーナは、ヤマトを睨みつけると歩き出す


「お、おい! どこに行くんだよ!?」


「私、一度、灰鳥(あすか)城に戻る!」


「は!?」


「お父さんとジライヤに聞きに行ってくる! 侵攻は任せたわ!」


そう言って、フィーナはヤマトを置いて部屋を出て行った




・・・・・・




マキ組の拠点 廃校



「うへ…うへへ……」


スサノヲが、気持ちの悪い笑顔で1991を撫でまわしている


「おい」


「えへ…へ……」


「おいっ!」


「うわっ!?」

スサノヲが、ハッとして顔を上げる



「な、何だ、脅かすな!」


「いや、ここ俺の部屋! いつまで1991を眺めてやがるんだ」


スサノヲは、かれこれ一時間近く1991を眺めている


「何を言ってるんだ。1991が、ついに真のスピリッツ装備になったんだぞ?」


「それは聞いたけどさ。別に今までもスピリッツ化はしていたんだし、そんなに変わってないだろ」


「ば、馬鹿野郎! 真のスピリッツ装備と言えば、伝説級の装備だぞ!? 精力(じんりょく)を溜め込める高価な素材と、膨大な時間をかける必要がある装備なんだ!」


「そういや、伝説級とか言ってたな」


全然、実感はないけども

だって、大剣よりも銃の方が使用頻度は高いし


「例えるなら、セフィリアさんの純白の双剣とかが伝説級の装備だな」


「…まさか、俺の1991はセフィ姉の武器に匹敵するということか?」


「そのまさかだよ。生命体の体を包み、身体の一部ともなる機能。それは、真のスピリッツ化無しには得られないからな」


うーん、そう考えると凄いな


お貴族様がどれだけ金を出しても得られない、オンリーワンの俺だけの武器

それが手に入ったのは素直に嬉しい



「だけど、何でそれをスサノヲが眺めて喜んでるんだよ?」


「あたしが作って、あたしが育てて来た武器だぞ!? 職人の夢は真のスピリッツ装備を作り出すこと。それがこんなに早く叶うなんて…。あたしはいいコンビに巡り合えたもんだ」

スサノヲが屈託のない笑顔を見せる


こいつ、作品への情熱については素直すぎるな

眩しすぎて目が潰れそうだ



ヤマトはナウカ領の最後の抵抗地域であるスンブ地方の攻略に向った

フィーナと共に侵攻していくようだ


そのため、真実の眼の遺跡の発掘のためのダンジョン攻略のメンバーにはヤマトもフィーナも使えない


…タルヤの参戦は保留にしている


俺では判断できない

マキ組長に委ねようと思う



今日、スサノヲが来た理由は、俺の装具の新機能で、おそらく最後の機能である仕込み武器の設計図を持って来たのだ


「よし、ラーズ。そろそろ、装具の練習を始めようぜ」


「いや、お前がずっとニヤついてたんだけど!?」


スサノヲが完成させてきた設計図の通りに、装具を再現する

まずは、未完成である仕込み武器からだ


スサノヲの設計図を頭の中で再現してイメージ

それを、装具を物質化する時に反映させるのだ



「…」


「お、出来たのか?」


「やっと、飛び出せるようになったんだ」


俺は装具を物質化して腕を伸ばす


「使ってみろよ」


「行くぞ」



バシュッ!


「おー、いいじゃないか」



俺の装具、メメント・モリの手首を曲げると、前腕の装甲からニードルが飛び出した


前腕から飛び出す、仕込みニードル

腕を向けた方向への突然の刺突、そして前腕よりも長い距離の攻撃、二つの隙を突ける仕込み武器だ



「指先のグリッパーのように微細構造じゃないから、再現は意外と早かったよ」


「そうなのか?」


「イメージが出来れば物質化は難しくないからさ。反復練習は必要だけどな」


「なるほどな。それじゃあ、はやく武器として完成させようぜ」


「え? 武器としてって、これ武器だぞ」


「ラーズの装具は、まだ武器の形をした手袋だ。武器にはなっていない」


「どういうことだよ?」


「まだ、改善の余地がありすぎるってことだ。最初に、仕込みニードルから作り直そう」


「あ、ああ…」


俺は、言われた通りに装具を一度消し、再度物質化する


「まずは、ただのニードルじゃなくて指のホルダーを作ろう。人差し指と中指で支えられるようにだ」


「分かった」



「…」


「大きさがおかしいし、位置もダメだ」


「…」


「ほら、位置がずれてる。やり直しだ」


「…」


「さっきの方が良かったんじゃないか? ダメダメだ」


くそっ…

スサノヲは、作品に対しては一切容赦がない


妥協を許さずに指示が飛んで来る

俺は、何度も物質化を繰り返して理想の形に近づけていく



格闘技やスポーツ、芸術などで大切なのは、客観的な目だ

客観的な目とは、効果的なのか、妥協が入っていないか、変な癖がついていないかなど、様々な方面からの検証だ


俺の装具は俺専用の武器であり、俺だけが使い勝手を知っている

だからこそ、客観性が欠けていた


無意識に無理だと決めつけていた箇所、妥協してしまっていたところが多々あった

それを、スサノヲが職人の目で厳しく指摘してくれたのだ



「装甲の重ね方が雑だろ。これじゃ、衝撃を受けたら砕けるぞ?」


「…」


「ここがずれてるんだって。これは癖になってるから気を付けろ」


「…」


「手刀、鉤爪、ナックル、グリッパー、そして仕込み武器…。やっぱり、この仕込みニードルだけ練度が低いな」


「ちょっ…、ちょっと休憩させてくれ…。集中力が切れた」


「何だよ、情けねーな。やっと良くなって来たのに」


「そうやって、最後に褒めるのずるくない?」


「あたしは、職人の目で冷静に評価しているだけだ」



そう言えば、あのダンジョンを一緒に制覇したハンクが言っていた

確か、装具の物質化に一年、調整を続けて完成までに七、八年かかったと


あいつも装具使いで、俺と同じように手甲型だった

あいつに比べれば、俺が装具にかけた時間はニーベルングの腕輪がある分かなり短いんだろうな


俺は、一休みした後、ひたすら装具の形の調整を続けたのだった



ハンクの装具 三章 ~28話 ダンジョンアタック五回目1

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― 新着の感想 ―
[一言] そっか、装具は本人が作るものだから職人とかでもないとどう言う構造が一番いいのかとか普通は分かんないよね。その点ラーズは表で有名になっていないだけで1級レベルの職人が付いてるから効率良く作れる…
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