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八章 ~29話 紫苑城攻略2

用語説明w

フィーナ:B+ランクの実力を持ち、漆黒の戦姫と呼ばれるウルラ最高戦力。仙人として覚醒、宇宙戦艦宵闇の城をオーバーラップ、更に複合遁術を習得した大魔導士。ラーズとの別れを選んだ

ヤマト:龍神皇国騎士団の騎士、特別な獣化である神獣化、氣力を体に満たすトランスを使う近接攻撃のスペシャリスト


紫苑(しおん)城の至る所で戦闘音が響いている


陽動のために潜入した忍び達、そしてマサカド討伐を目的とするヤマト、フィーナ、ジライヤ達だ


更に、城外の戦闘音も近づいて来ている

場内が混乱したことと、ウルラ軍が猛攻を仕掛けたことの相乗効果でナウカ軍が崩れてきているのだ



俺は、ダクトから天井裏の通気スペースへと上がる

マサカドの詳細な場所を確認、同時に戦力の把握、陽動を行えるかを探り、データが情報を送信していく


マサカドは仙人としての人体強化を終えたB+ランク、そして強力な鬼神の鬼憑きを使う

情報は多いほどいい


だが、こちらの戦力も負けていない

フィーナとヤマトは共にB+ランクだ


フィーナも仙人としての人体強化、更に宇宙戦艦のオーバーラップを行っている漆黒の戦姫

そして、ヤマトは神獣化と呼ばれる特異な獣化をを操る近接特化の騎士


ウルラ軍は、この紫苑(しおん)城にてマサカドを討ち取り、シーベルを捕らえる

そして、この内戦に決着を付けようとしてるのだ



俺は自分のできることをする

内戦の終結に向けて、少しでも貢献すればいい


俺が屋根裏を進んでいくと…



ゴッガァッッ!

ドッガァァァァァン!



凄まじい破壊音が響く


どうやら、この屋根裏の下の階のようだ



「…っ!?」


そして、闘氣(オーラ)の気配



マサカドの、恐怖を巻き散らすプレッシャーの方向で何かが始まったのだ



「…」


俺は、更に屋根裏を進んでいく



答は、見なくても分かる

マサカドと対峙する闘氣(オーラ)が二つ


フィーナとヤマトの二人だろう


正に、魔王の間にたどり着いた勇者のごとく、B+ランク同士が撃突するのだ



俺は、広い部屋の屋根裏と思える場所に到着

鉄骨の梁から手を伸ばし、ナイフで小さな穴を空ける


「…」


データのアバターをその穴から下に垂らし、周囲の状況を観察する





紫苑(しおん)城 王の間



フィーナとヤマトは、ラーズが送って来た位置情報を目指して一直線に城内を駆け抜けた


たどり着いた王の間の扉をヤマトがパンチで粉砕

中に突入する



「…騒がしいな」


そこに立っていたのは、鼻から上を隠す仮面をつけた巫女姿の女

鬼神マサカドだった



「…一人で待っているとは余裕だな。ナウカの領主、シーベルはどうした?」

ヤマトが周囲を見回しながら言う


「お前達には関係のないことだ。ここで屍になるのだからな」


「お前一人で俺達を相手にするつもりか? 尻尾を巻いて逃げた飼い主の尻ぬぐいかよ」


「ふん。外国からわざわざ、売国奴であるドースに飼われにきた猫が偉そうな口をきくじゃないか」


「…誰が猫だって?」


ヤマトの顔つきが変わる

そして、神獣化して虎のような風貌に変わった


だが、マサカドはヤマトから目を離して、その後ろに立っていたフィーナに目を向ける



「…前回は、騒がしい戦場で話もできなかったな。漆黒の戦姫よ」


「鬼神マサカド。もう投降してください、これ以上の争いは無意味です」

フィーナが口を開く


「逆の状況なら、お前は投降するのか? 我らは最後まで殺し合う定め、投降などでこの内戦が終わるわけがなかろう」


「ウルラはナウカを滅ぼしたりはしない。鬼憑きの術者も保護をする用意がある。クレハナは、一つの国に戻るべきよ」


フィーナの言葉に、マサカドは少しだけ反応する

「そのクレハナが、なぜ三つに分かれたと思う?」


「…それは、前クレハナ国王であるパヴェルの死によって、王位継承者が……」


パヴェル王は、明確に王位継承者を決める前に亡くなった

しかし、ナウカ領のシーベルには王位を譲らないと明確な手記を残していたのだ


そのために、ウルラ領のドース、コクル領のツェルが王位継承を宣言

その事実を認めないシーベルと共に内戦が勃発した


「そんなことは分かっている。だが、そもそもなぜ王位継承者がそれぞれ争い出したのだと思うのだ?」


「どういう意味? ちゃんと決まっていなかったから…」


「決まっていなくても、その場合は、王位継承権は決められた者が受け継ぐことよう決まっている。シーベル様が除かれれば、次はドースが継承するべきだった」


「だから、それをナウカが…」


「内戦に加担したのはコクルも同じ、ドースが王位を継承することを納得しなかった。我らがナウカと同じようにな」


「…」


「もっとも、最近までクレハナから出て行っていた、自由奔放なお姫様には興味もないことかも知れぬがな」


「そんなこと、私だって…」


「お前はドースに呼ばれて戻って来ただけ。そして、クレハナの歴史も内戦の経緯も知らずに、ただ戦っているだけ。お前は大義も何もない、ナウカにとっての殺戮者だ」

マサカドが言い放つ


フィーナは、その言葉を静かに受け止める

だが、その態度は毅然としたものだった


「そんな言葉、内戦を肯定したい者の言い訳にしか聞こえないわ」


「何だと?」


「シーベルは王に対して謀反を行った。王の死に対して干渉した。あなたの雇い主は、クレハナを裏切ったのよ」


「否定はしない。だが…」


「父であるドースが、権力争いによって継承権一位のシーベルから王位を奪おうとしたことは事実でしょう。だからと言って、シーベルのパヴェル王に対する殺人を容認はしない」


「…」


「権力争いは世の常、それを権力者が否定するなど愚の骨頂ね」


フィーナの意志は、言葉などでは崩れない

なぜなら、とことん悩んで来たから


クレハナに帰る前も、帰って来て姫に戻ってからも悩み続けた

そして、自分なりの答えを導き出した

確固たる信念が出来上がっているの


それは、ラーズをクレハナから追い出そうとしたほどに大きい

心のよりどころを手放せるほどに強い信念なのだ



ガチャン!


ずっと黙っていたヤマトが、両手にアダマンタイト製のナックルガードを握って打ち付ける

ヤマトの武器、白虎星拳だ



「今更、口喧嘩もないだろう。さっさとやろうぜ」

ヤマトが、虎の牙をむく


「…確かに、権力争いはナウカも同じだ。我が主、シーベル様の行為を正当化するつもりはない」


マサカドは、四本の腕を使って大剣とヴァジュラを構える




ゴギャァァァァァンッ!


「ぐっ…!?」「…っ!!」



マサカドの大剣とヤマトの白虎星拳がかち合う


マサカドの霊属性斬撃と、ヤマトの氣属性特技(スキル)

それぞれが、ヤマトの霊体とマサカドの肉体を直撃


お互いの膝が落ちる


だが、動き出しは近接戦闘特化のヤマトの方が早い



ジャブ


ワン・ツー



三連撃がマサカドを襲う


二発を大剣で防ぐも、最後の右ストレートがマサカドの顔を直撃

マサカドが下がりながらヴァジュラから雷撃を放つ



ドォォォォン!


「ぐっ…!」



直撃を避けたものの、ほとばしる雷が体を走る

体中から湯気を出し、それでもヤマトは動きを止めない


だが、ダメージが大きいと見たフィーナが動き出した



「手を出すな!」


それを見て、ヤマトが怒鳴る


「ヤマト、そのダメージじゃ…!」


「ダメージは向こうも同じだ! 一対一で条件は同じ、汚い真似をするんじゃねぇ!」



ヤマトは、あくまでも一対一に拘る


「ほぉ…、ウルラにも、武人の気概を持つ者がいるとはな」

マサカドが、ひしゃげた仮面を投げ捨てる


マサカドとヤマトは、お互いに闘氣(オーラ)を練る


…決着の時は近い




・・・・・・




俺は、ヤマトとマサカドの戦いを見ていた


「…あの馬鹿野郎……」

俺は、1991を倉デバイスから取り出す



…状況が分かっていやがるのか?


俺の脳裏には、戦場で命を落としたコウとヤエの顔が浮かぶ


今まさに、一般兵が命を懸けて戦っている

この状況で何を言ってるんだ?



湧き上がる怒り


俺は、静かにトリガーを発動する



静観を決め込もうと思っていたのだが止めた

たった今、決めた


俺は奇襲を行う


ヤマトの攻撃に集中したマサカドに、フル機構攻撃を叩き込む



「リィ、頼む」


「ヒャン」


絆の腕輪で、リィに魔力を出させる


1991の魔玉にインストールされた蒼い強化紋章で刃体を硬質化


超振動装置を始動、異世界イグドラシルで完成したドラゴンキラーの霊的特性を乗せる



そして、ここからが本番

俺は、体内の感覚を探る


奥底に感じる、真っ黒い衝動の片鱗

それに意識を向けて引き上げる



引き上げる方法は簡単だ

あの、くそったれな記憶を思い出せばいい


喪失感、無力感を呼び起こす

同時に、あの施設での理不尽に対する怒りもだ


嫌な体験ってものは、忘れないものだ



…体の中を暴れ回る衝動、今にも爆ぜそうになる激情をギリギリで抑え込む


この衝動の爆発が、いわゆる暴走

俺の理性が吹き飛ぶということ



B+ランク同士の戦いに割り込むという暴挙


巻き込まれたら、俺の体は容易に消し飛ぶであろう、超破壊力のぶつかり合い


極度の緊張感、うずく呪印の衝動



…逃げるな


このドス黒い衝動を怖がるな

目を背けるな、直視しろ



俺は、1991に精力(じんりょく)を込める

限界まで込めて、サイキックボムを形成


フル機構攻撃に呪印の力を上乗せする



B+ランクの闘氣(オーラ)をぶち抜く


少なくとも、致命的な隙を作り出す



「…?」


タイミングを見計らう、その時

ふと、気がつく



天井裏の暗がりに、仄かな明かり


何だ?


何が光っている?



「あ…」


仄かに光を発していたのは、フル機構攻撃の準備を終えた1991だった



内戦の経緯 閑話5 クレハナの実家

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― 新着の感想 ―
[一言] あー、腕輪と鎧と大剣ワンセットの例の光かな?
[一言] なんだなんだ⁉︎1991が光るなんて…‼︎ しかし光る要因なんて青い紋章くらいしか思い浮かばん…
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