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閑話25 証拠探し

用語説明w

ミィ:龍神皇国騎士団経済対策団のエース。戦闘能力はそこまで高くないが、経済的な観点で物事を考える。海の力を宿したオーシャンスライムのスーラが使役対象

フィーナ:B+ランクの実力を持ち、漆黒の戦姫と呼ばれるウルラ最高戦力。仙人として覚醒、宇宙戦艦宵闇の城をオーバーラップ、更に複合遁術を習得した大魔導士。ラーズとの別れを選んだ


ブロッサム


クレハナの公営企業であり、ドースが主導するウルラ領が誇る複合企業だ

貿易、原子力、魔石精製、そして農業や畜産など、多方面の業種を手掛けている


そんなブロッサムの本社ビルに、二人の女性が派遣された


クレジットクイーンのミィ、そしてサイバービーナスのオリハ

二人とも、龍神皇国の騎士である



「お茶を入れました。一息ついてください」


「リャンさん、すみません。取締役にお茶など入れさせてしまって」

ミィが頭を下げる


「いえいえ。ブロッサムが稼働しないことには、私の仕事もありませんから」


「頂きます」

オリハが湯呑を口に運んだ


ブロッサムは、その資金の大半を全面戦争に充てた

そのため、全ての事業が一時凍結、会社自体が一時休眠状態となっていた


そして、全面戦争後にフィーナがブロッサムの再稼働に着手、セフィリアが派遣したミィとオリハが引き継ぐ形となったのだ


このブロッサムは、国の内外で利益を上げている会社であり、ウルラ領のドースにとって大切な資金源となっている


その経済力によって、ウルラ領はナウカ領やコクル領と争って来た

ブロッサムは、ウルラにとっての燃料とも呼ぶべき存在のなのだ


しかし、その反面、ブロッサムはナウカとコクルの連合を作り上げる要因ともなった

具体的には、第二次シグノイア・ハカル戦争であり、大崩壊に関わってしまったからだ



神らしきものの教団と龍神皇国の貴族であるムタオロチ家が作り上げた、通称バックアップ組織

その目的は、シグノイアとハカルの二国間の戦争を誘発することであり、そのために暗躍していた


そして、その活動資金にブロッサムの資金が使われていたのだ


このことが発覚した段階で、ドースはバックアップ組織との関係を断った

そして、すぐにシグノイアへと謝罪に出向きお詫びの品を送った


しかし、時すでに遅く、他国のテロ組織に加担したとしてクレハナ内で批判に晒される

それこそが、ナウカとコクルが連合を組む遠因となったのだ


そして、ドースの謝罪を他所に、バックアップ組織の活動は続いた

ドースがハカルに謝罪に訪れた際に、あの大崩壊が起こったのだ



大崩壊とは、シグノイアとハカルを跨ぐ国土級魔法陣を使った人為的な大災害

六つの頂点を持つ六芒星であり、その内の五か所に巨大魔晶石が存在していた


そして六か所目、巨大魔晶石が無い唯一の頂点が、戦地となったカツシの町だ



魔法陣には、二つの作用がある


一つは、連鎖作用

一つの頂点に魔力が発生すると、図形を通して魔力が伝播し他の頂点にまで伝わるという作用だ


しかし、この作用には魔法陣の全ての頂点に魔力の起点となる存在が必要であり、国土級魔法陣で言えば巨大魔晶石が該当する

つまり、カツシの町に巨大魔晶石が存在すれば、連鎖作用が起きる条件が整うのだ


しかし、戦地となり激戦区となったカツシの町に巨大魔晶石を持ち込むことは、いくらバックアップ組織でも不可能だった


そこで使われたのが起動魔力爆弾


これは頂点の魔力起点を一つ省略できるという爆弾であり、爆弾の熱量で魔力を発生させる

起動魔力爆弾によって発生した魔力が、他の頂点に流れることで連鎖効果をスタートさせることが出来るのだ


そして、国土級魔法陣という、超大規模魔法陣に対して使われた起動魔力爆弾

それは、各頂点に存在する巨大魔晶石を暴走させるほどの魔力を発生させるものであり、原子爆弾を使った超大規模な起動魔力爆弾だった


その爆発は、戦地のシグノイアとハカルの戦力を吹き飛ばし、その他五つの巨大魔晶石を暴走させて五種類の大災害、パンデミック、洪水、噴火、大地震、台風を引き起こした


しかし、大崩壊とは、()()()()()()()()()()()()()()


魔法陣のもう一つの作用である強化作用

魔法陣を通して魔法を発動することにより、魔法発動の効率化、そして魔法自体の威力を強化するという作用である


国土級魔法陣の強化作用が、ある魔法を発動するために使われた


その魔法とは、力学属性極大魔法

宇宙にある小惑星をマーキングしておき、地表へと引き付ける魔法

つまり、人為的なメテオを引き起こす魔法だ


数時間のうちに起きた、連鎖的大災害と隕石

これが大崩壊の正体であり、結果としてシグノイアとハカルで百万人にも及ぶ犠牲者を出すこととなった


そして、この大災害の直後、ハカルにてドースとラーズが出会い、バルキュリアのヒルデによって(そら)の恵みへと運ばれることとなったのだ



そして、この大崩壊の黒幕を断罪したのがセフィリアだった


龍神皇国の貴族であるムタオロチ家の壊滅、そして、惑星ウルにおいて神らしきものの教団を活動停止に追い込んだ

この功績で、セフィリアは龍神皇国騎士団長心得という地位にまで登り詰めている



「…分かっていたけど、果てしないわね」

ミィが呟く


「でも、再稼働の、目途は立ちましたね」

オリハが顔を上げる


「これでクレハナの内戦が終われば、またセフィ姉の大手柄になるわね」


「アイオーン・プロジェクトにも弾みが尽きそうですね」


「…でも、そう簡単に行くかしら? まだ、マサカドは倒せてないし、スンブ地方のナウカの兵力は多い。それに、シーベルの行方も掴めていないし」


「今頃、フィーナがコクル領で仕事をしています。上手く行けば、ナウカの正当性が無くなるかもしれません」


「そこは、フィーナとジライヤに任せるしかないものね」


「私もクレハナのために働いているんですし、ラーズにアプローチしてもいいですかね? 別れたって聞きましたし」


「…ラーズのことは、ナイーブな部分だからやめておきなさいよ。それより、さっさと私たちの仕事を終わらせましょ」


「そう言いながら、さっきからミィの手が止まっていますよ?」


たった二人の騎士は、尋常でない速度で作業を進めていった




・・・・・・




コクル領 萌黄(もえぎ)



フィーナは、ひたすら調査に没頭していた


ウルラ軍の再編も軌道に乗り、龍神皇国からの支援で治安回復も順調だ

ブロッサムの再稼働は、あの二人に任せておけば問題はないだろう


内戦を止めるための材料を見つける

それが、今のフィーナの仕事だ



萌黄(もえぎ)城は、クレハナの代々の王が居住して来た場所

ウルラ・ナウカ・コクルのそれぞれの領主の中から選ばれた王は、萌黄(もえぎ)城に移り住むのが習わしだった



「………」

フィーナは、執事室の記録を漁っている


「やはりあったな。パヴェル王の食事の記録だ」

ジライヤが資料を持ち上げる


「運んだのは?」


「ナウカ領出身の男のようだな。実家は……」

ジライヤが、使用人名簿を見ながら言う



フィーナとジライヤは、パヴェル王の死についての調査を行っている


検視結果、食事や体調を崩されてからの治療記録などが見つからない

明らかに抹消されていた


その代わり、メイドと執事室に類似する記録が残っていたのだ


ナウカ領出身の者が用意していた食事

この者を確保できれば、当時の状況を話させることが出来る


十中八九、パヴェル王はナウカ領のシーベルの指示によって毒殺された

推測だが、パヴェル王が、国の利益を上げていたドースに、王位継承権の順位を無視して王位を譲ろうとしていたことが理由だろう


この、食事を作っていた男を確保するように指示を出す



フィーナとジライヤは、当初からパヴェル王の死の調査を行っていた

それは、セフィリアから受けた指示の一つだ


シーベルを討つという大義名分は得られる

後は、内戦を終わらせるだけだ


食事を作っていた男は、コクル領に住んでいる

すぐに、ジライヤが確保に向った


「…」

「…」


フィーナとジライヤは、共通の目的のために頷きあったのだった



フィーナは調査に戻る


パニン父さんを攻撃したナウカ軍、そしてマサカド

パニン父さんの意識は、まだ回復してはいない


内戦を終わらせる

戦いを終わらせる


それが、武器を持たずにカメラを持った、パニン父さんの目的


フィーナはパニン父さんと同じ目的のため、作業に集中するのだった



ブロッサムの休止 閑話21 ブロッサムの資金

オリハ 閑話1 フィーナのお仕事

パニン父さん 六章 ~25話 重傷者

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