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八章 ~21話 潜入作戦1

用語説明w

ヤマト:龍神皇国騎士団の騎士、特別な獣化である神獣化、氣力を体に満たすトランスを使う近接攻撃のスペシャリスト

ゲイル:マキ組に移籍してきたフウマの里所属の下忍。対人暗殺の専門家で、隠れ、騙し、忍ぶ、忍者らしいスタイル


フィーナ姫と龍神皇国からの治安維持部隊がコクル領入り

このニュースが流れたことで、ナウカ領に動きがあった


…マサカドが動いたのだ


ナウカ領内において占領活動を行っていたウルラ軍の部隊が壊滅

ヤマトが所属する、全面戦争前から派遣されていた治安維持部隊が戦闘に加わった


そこはナウカ軍南第一基地


ナウカ領南部最大規模の戦力を擁し、北上してナウカ領に侵攻したいウルラ軍にとって最大の難所の一つと目されている場所だ


更に、そこにマサカドが現れたとあっては、そう簡単には落とせない

マキ組にも声がかかり、この拠点を落とすべく戦力を総動員しているというわけだ



「ヤマト!」


「おー、ラーズ。マキ組も出陣か」


「突然決まったんだよ」


「フィーナがコクル領に入るってニュースで、ナウカ軍が一気に動いたんだ。ここはかなり厄介だぞ」



遠距離高射砲を備えた基地

そして、近づけば範囲魔法(大)


近づくことさえも難しい、難攻不落の要塞だ



「…ヤマトたちも治安維持部隊ではあるわけだろ? 今更だけど、内戦に直接参加していいのか?」


治安維持部隊は、ナウカと戦うための部隊ではない

あくまでも、クレハナの治安を維持するための部隊


そのため、龍神皇国は内戦には干渉していないというスタンスであり、クレハナへの内政干渉と言う批判を退けている


「俺達は全面戦争前から派遣されて治安を維持していたんだ。そこに、ナウカが全面戦争を仕掛けて来た。そのため、治安を維持するためにやむなく戦っているんだ」


「…後発の治安維持部隊とは違うってことか」


戦争とは大義名分が必要

大人の事情と説明できるだけの材料、要は言い訳が出来なければ相手を攻撃などできないのだ



「ラーズ、ジライヤも出ました。前線が混乱するでしょうから、私達も出ますよ」

マキ組長が呼びに来た


「分かりました。ヤマト、死ぬなよ」


「こっちのセリフだ!」


俺は、ヤマトに手を挙げてマキ組と合流する



今回、俺達は混乱に乗じて基地内に潜入する


「私は単独で西側から侵入します。ラーズはゲイルと組んで東から侵入を」


「分かりました」


「ラーズ、よろしくな」


「ああ、よろしく」


そう言えば、マキ組に入ったゲイルと組むのはこれが始めてだ

ルイは潜入には不向きなため、普通にスナイパーとしてウルラ軍に合流した



ドッガァァァァァン!


ドォン!


ドォン!


ドォン!



衝撃音や爆撃音が響く

前方に、ジライヤとでっかいガマガエルの姿が見えた


すぐに敵部隊が混乱


まさか、同士討ちをしている?

更に、動きを止めてしまった部隊もある


その隙に、ウルラ軍が攻撃を開始して撃破していく

あの突然の乱心具合は、おそらく幻術だ


ジライヤが、周囲の部隊に術をかけて動きを止める

上手く行けば同士討ちにまでもっていくほどの集団催眠

とんでもない能力だ



そんなジライヤの姿を見つめる


五つの遁術と妖仙の蛙を引き連れる実力ナンバーワンの忍び

しかもBランクで、闘氣(オーラ)を使う戦闘員でもある


俺と同じ忍び、言うなれば暗殺者

…だが、俺は奴の足元にも及ばない


ジライヤも、そんな俺を歯牙にも掛けない

一般兵として軽んじ、獣と蔑む


いつか、俺のことを認めさせたい

そして、正面からぶっ飛ばしてやりたい


…あいつとフィーナとの関係を、結局まだ聞けていないな




ドォォ………!



遠くで戦闘音が響く中、俺達は戦場を走って基地に接近する


岩場を抜けて崖を降りる

俺とゲイルは高機動型の忍びのため、悪路は得意だ


「俺が先に入る」


「分かった」

ゲイルが頷く


基地はコンクリートの壁に囲まれている

俺は流星錘アームで錘を壁の上端に引っかける


そのまま、紐を巻き取りながらジャンプ

一気に壁の上に手をかける


データのアバターを差し入れて周囲を確認

外で戦闘中のため、敵影は無い


壁を乗り越えると、俺は錘を下に垂らす

それをゲイルが掴むと、俺は飛び降りながらゲイルを引き上げる


潜入成功だ



「ラーズ、出来る限り銃は使うな。サイレントキリングで行こう」


「了解」


ゲイルは、そう言いながらもサイレンサー付きのハンドガンを準備する



大きめのハンガー内を覗く


兵士が二人



「…」

俺とゲイルは頷きあいながら、静かに忍び寄る



ゴッ!


後頭部を装具のナックルで殴りつけ、気を失わせる



ゲイルは、もう一人の兵士の喉をナイフで掻っ切っていた



基地となっているビル内に潜入する

慌ただしく動きまわっているナウカ軍から隠れながら、徐々に奥へと進む


「ラーズ、ナウカ兵の軍服を手に入れよう」


「分かった」



ちょうど通りかかったナウカ兵に後ろから近づき、錘の紐を首に巻き付けて引き倒す

そして、そのまま近くにあった倉庫に引き込んだ


「ラーズ、殺すな。気を失う程度にしないと失禁する」


「分かった」


声を出させず、そのまま締め続けると男の体が弛緩した

同じ要領で、もう一着の軍服を手に入れる


ゲイルは、かなり場数を踏んでいるようだ

潜入後も的確に判断していく


純粋な戦闘力よりも状況判断に優れたタイプだな



ドガァッ!


「ぐっ…!」



突然、ゲイルが何者かに襲われた

体当たりで体勢を崩され、ハンドガンを向けられる



「この侵入者め! この場で…ぐあぁっ!!」


その瞬間、ゲイルが右腕を振るう

兵士が銃を持つ右手首の頸動脈をザックリと斬り裂いた


いつの間にかゲイルが握っていたナイフは、カランビットと呼ばれるナイフだ

爪のように湾曲した刃体と、親指を通せるリングが付いたグリップが特徴の、下手持ちタイプのナイフ


刺突よりも、急所を斬り裂く近接格闘用の武器だ


ゲイルは落ち着いて、ハンドガンを左手で押さえる

そして、踏み込みながら肘を水月に突き込み、右ひじを極めながら引き倒す



「ひっ…!」


そして、兵士の口を押えながら喉を斬り裂いた



ゲイルの動きは、完全に暗殺者や兵士のそれ

武器術を前提とした武術の動きだ


そして、仕留めるまでの躊躇の無い動作

忍びとしてのプロの姿だ



「…ゲイル、人が来る! 逃げよう!」


「くそっ、死体を隠したかったんだがな」



俺達はすぐにその場を離れる

目的は攪乱、そして電気系統や設備の破壊だ


途中で、送電室に爆弾を仕掛ける


監視カメラのモニター部屋の兵士を射殺

モニターの破壊


破壊工作を繰り返していく



正に基地の外が戦闘中であり、基地の中はやはり手薄だ

俺達が出来る限り陽動できれば、それだけナウカ軍の足を引っ張れるのだ


何度目かの戦闘



ドガガガガガッ!


「くそっ、ダメだ! 逃げよう!」



銃で追い立てられ、まがった先で範囲魔法が発動

魔導士の兵士と交戦した



プシュッ!


プシュッ!



ゲイルが、サイレンサー付きのハンドガンで銃弾を撃ち込む


しかし、魔導士は防御魔法を使っていた

パラパラと銃弾が運動エネルギーを失って落ちる


今度は魔導士が銃を抜く


ゲイルがカランビットを握った拳で殴りつける

同時に、左手で銃を持った右腕を掴む


一瞬の硬直


魔導士は、もう一方の手で持つ杖から投射魔法を発動



投射魔法は、耐魔力魔法を使っていない場合、直撃すればほぼ即死だ

位置的にナイフも間に合わず、ゲイルに魔法が発動すると思われた



ガゥン!



だが、攻撃したのはゲイルだった

ゲイルはカランビットを手放し、前腕に仕込んでいた飛び出すタイプの小型の銃で魔導士の頭を撃ち抜いたのだ



スリーブガン


前腕に仕込んだ小型銃を、スプリングの力で銃が手の位置まで射出される装置

手をフリーにでき、更に仕込み武器として隙を突けるというメリットがある

しかし、小型銃のため装弾数は少ない



…ゲイルは、体中に武器を仕込んでいる


暗器、仕込み武器

やはり、咄嗟に使える武器はいい


俺も仕込み武器が欲しいな

ゲイルを参考にして何か考えて見るか



ズズン……!


「………!?」



ゲイルと俺の動きが止まる

いや、止められた


凄まじいプレッシャー


恐怖と言う本能が警鐘を鳴らす



「ラ、ラーズ!?」

ゲイルが俺を振り返る


俺は頷きを返す


なぜなら、このプレッシャーの正体を知っているからだ



「ゲイル、逃げる用意をしろ。マサカドが来る…」


「な、何だと!?」



恐怖を巻き散らすかのような、巨大な存在感が近づいて来ていた



ガマ仙人 八章 ~16話 マキ組長とジライヤ

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― 新着の感想 ―
[一言] マサカド来ちゃったかぁ…よーし逃げよう‼︎あんまり逃げれる気せんけども‼︎逃ても全然追いかけて来そうな気がするけど‼︎
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