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閑話24 ブルトニア家の抗議

用語説明w

ドース:クレハナのウルラ領の領主で、第二位の王位継承権を持つ。フィーナの実父

フィーナ:B+ランクの実力を持ち、漆黒の戦姫と呼ばれるウルラ最高戦力。仙人として覚醒、宇宙戦艦宵闇の城をオーバーラップ、更に複合遁術を習得した大魔導士。ラーズとの別れを選んだ

セフィリア:龍神皇国騎士団の団長心得。B+の戦闘力を持つ。ラーズの遠い親戚で、五歳年上の憧れの竜人女性。使役対象は、生きたアイテムであるヴィマナ


ウルラ領 灰鳥(あすか)



ウルラ領の領主、第二位王位継承権を持つドースが難しい顔をしている

フィーナは、それを見ていた


本日、急報が届いた


領境の山中で、小規模な山火事が起きた

そこで、龍神皇国から派遣されていた貴族であり、Bランクの騎士を擁するブルトニア家の部隊の全滅が確認されたのだ


実行者はナウカ軍とみられている


ブルトニア家の部隊には、当主の次男であり、騎士でもあるグロウス

そして、もう一人Bランクの騎士ジンドルがいた


その二人が殺されたことから、ナウカ軍にもBランクの戦闘員がいたことは間違いはない


グロウスが殺された場所は何もない山中

何もないからこそ、占領する価値もなく、全面戦争でも戦いの舞台とはならなかった森林地帯だ


いったい、グロウスの部隊はあの場所で何をしていたのか


ブルトニア家が動くときは、ウルラ王家に報告を入れる決まりになっている

しかし、ブルトニア家からの報告はなかった


もっとも、以前から彼らが無断で動くことは幾度となくあった

ブルトニア家の素行はお世辞にもいいとは言えず、いつの間にか確認もしなくなっていたのだ



龍神皇国の貴族が殺されたということは問題だ


ブルトニア家は戦闘要員として派遣されているため、戦闘で死傷する分にはいい

作戦を検証して、無理のない戦闘だったかを確認されるだけで済む


…だが、今回はグロウスと騎士の殺され方に問題がある


騎士は、生きたまま手足を切断されていた

そして、グロウスは生きたまま杭を刺され続け、最後に口に突っ込まれた杭が致命傷となったようだ


二人の遺体は、木に打ち付けられて晒されていた


…ブルトニア家は、龍神皇国からウルラに味方する憎むべき敵としてナウカ軍に認識されていた

その怒りによって、無残に殺されたのだ


ナウカ領では、龍神皇国の騎士を打ち取ったことで若干の盛り上がりを見せている

ナウカ軍は、全面戦争の敗北を払拭しようと必死であり、そのためにブルトニア家への制裁を利用した


これは、ナウカ領に潜んでいる忍び達からの報告だ




数日前


ドースはブルトニア家のグロウスを呼び出した

理由は、全面戦争時の命令無視による撤退の理由


周囲の味方に甚大な被害が及ぶ、危険であり重大な違反行為

この弁解を聞くためだ


グロウスは答えた

「本当にギリギリの戦いだったんですよ? しかも、あれは撤退ではなく、一時的に後ろに下がっただけです」


「…私は、間もなくナウカ・コクル連合が崩れる。それまで耐えろと全軍に指示を出したはずだ」

ドースは言う


「もちろん聞いていました。でも、敵が崩れたのはスタンピートと言う自然現象、結果論でしょう? 戦闘は個人の判断が重要であり、私は、一度下がって体勢を立て直すことが必要だと判断しただけです」


「周囲のウルラ軍の兵達は命を懸けて戦い続けていた。後方の集落のため、体勢を立て直すこともしないでな」


「それは一般兵と我々騎士の戦い方の違いです。実際に、連合軍が崩れた時には、私達が攻め込めたでしょう?」


「ふぅ…」

ドースはため息をつく


話にならないため、それ以上聞くことを止めてしまった



そして、グロウスの死が発覚した次の日、ドースはグロウスに貸し与えていた屋敷を調べた


すると、どこから集めたのかクレハナの美術品など、価値ある物が大量に出て来たのだ


判明した持ち主に確認すると、ブルトニア家から戦いのお礼にという名目で、半ば脅されて持って行かれた物だということが判明した



ブルトニア家にとって、クレハナの戦いは小遣い稼ぎの場所だったようだ

全てを軽んじ、好き勝手、やりたい放題、傍若無人に振舞って来た


それが判明し、ドースは眉間にしわを寄せる

そんな父の姿をフィーナは見ているのだ



悪い噂は聞いていた


しかし、ブルトニア家を受け入れることは龍神皇国との絆を作ること

そして、援助を貰う手段でもあった


しかして、その実態はこれだ

ドースは、これからある決断をする



「ドース様、準備が整いました」


「繋げてくれ」


「3・2・1…、繋がりました」



モニターに金髪の美しい女性が映し出される

それは、金髪の龍神王セフィリアだ



「ドース様、ご無沙汰しております。改めて、全面戦争の勝利、おめでとうございます」

セフィリアがモニターで頭を下げる


「セフィリア殿のご支援のおかげ、感謝しております」


「フィーナ、コクルの引き入れご苦労様」


「セフィ姉、ありがとう。上手く行って良かったよ」

フィーナが微笑む



「では、本題に移りましょう。ドース様、報告してくださったブルトニア家のグロウスの件ですが…」


「はい。ブルトニア家の部隊全員の遺体を回収しました」


「では、龍神皇国に送って頂きますようお願いできますか? ブルトニア家が引き受けるとのことです」


「もちろん、すぐに手配します」



少しの沈黙


そして、本題へと入って行く



「…ドース様。ブルトニア家がナウカ王家に対して、報復を希望しております。グロウスの兄であるガレウスが、ウルラ王家への派遣を願い出ているのですが…」


「…」

ドースが押し黙る


「…受け入れて下さいますか?」


「セフィリア殿、大変申し訳ないのですが…」


「…」


セフィリアは、静かにドースの次の言葉を待つ


「ブルトニア家の派遣はお断りさせていただきます」


「…理由をお聞きしてもよろしいですか?」


「ええ、もちろんです」


ドースは、ブルトニア家の命令違反、及び素行の悪さを説明した


ブルトニア家という戦力は、龍神皇国の看板を背負って戦場で活躍する広告塔だ


内戦の終結に龍神皇国が関与するという事実を作るための部隊であり、以前から派遣されていたヤマト達治安維持部隊とは違う目的を持っている


内政干渉とならない程度の小規模な、しかし関与の事実を作るための派遣

これを受け入れる代わりに、ウルラ領は多額の支援を受けていたのだ


しかし、ドースはブルトニア家を受け入れるリスクを考え、そのメリットを捨てる決断をした


ウルラの勝利のためには、龍神皇国にも毅然と意見を言う

その強さをドースは持っている



「…分かりました。それでは、ブルトニア家にはウルラ王家が拒否した理由を説明しておきます。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

セフィリアが頭を下げる


「おやめください。セフィリア様の支援と治安維持部隊の活躍によって、全面戦争での勝利を掴むことが出来たのです。今後も、ウルラの勝利とクレハナの平和のためにお力をお貸しください」


「はい。内戦終結まで、まだ気は抜けません。治安維持部隊と復興部隊の増員準備は出来ております」


「ありがとうござます、今後ともよろしくお願いします」


「はい。それじゃあ、フィーナ。またね」


「うん。セフィ姉、また」



こうして、ウルラ王家とドルグネル家の通信会談が終わった


ウルラ王家は、龍神皇国の傀儡とはならないことをドースは示した



ウルラの勝利に向けて、ドースとフィーナはまた内戦に臨んでいく



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