表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

284/394

八章 ~7話 ニュース

用語説明w

装具メメント・モリ:手甲型の装具で、手刀型のナイフ、指先に鉤爪、硬質のナックルと前腕の装甲が特徴。自在に物質化が可能


ルイ:マキ組の下忍、赤髪の獣人男性。スナイパー技能に長けている

ジョゼ:黒髪のエルフ男性。情報担当と事務を行う非戦闘員、整備などもこなす


突然、大ニュースが飛び交う

このニュースは、クレハナを飛び出してペアの全世界で報道された


そのニュースとは…


『ナウカ・コクル連合解体、コクルがウルラと同盟を結ぶ!』



ナウカとコクル、両王家の合意で成り立っていた同盟を、コクル側が破棄

そして、ウルラ王家との停戦協定を結んだのだ


「ま、まさか…!」

ジョゼが、テレビの緊急報道番組を見て固まっている


「連合が解体だと? もう、コクルは敵じゃないってことか?」

ルイも朝食を落としそうになっている


俺は、マキ組長を見る


「…王家の動きが慌ただしいとは思っていましたが、まさか同盟を破棄させるとは。ドース様もなかなかやりますね」

どうやら、マキ組長も知らなかったようだ



報道によると、コクル王家の同盟破棄の理由は、前クレハナ王の死亡理由

ナウカの領主であるシーベルに対して、クレハナ王の暗殺疑惑が出たためとしている


コクル領内にある王宮や議会にて更なる調査が行われることとされ、コクル王家は全面的に協力するとの声明を出した


これに対して、ナウカ王家は事実無根だと否定

コクル王家に対して、全面戦争の敗戦を理由とした保身戦術だと非難している



「…これで、どうやらウルラの敵はナウカだけとなったようですね」

マキ組長が言う


「やっぱり、内戦自体はまだ続きますよね」


「ナウカには引く理由がないでしょう。コクルは実質、内戦からは手を引き、ウルラがナウカを追う詰めるという形で内戦が続いて行くのでしょう」



今回の連合破棄により、ウルラ軍は本格的にナウカ領への侵攻を開始した

ウルラ軍の再編も急ピッチで進めたようで、かなりの戦力が領境を越えて行っているとタルヤから連絡が来ていた


「コクルって、なんかずるいですね。全面戦争で勝っていたらナウカと共に勝者面してたんでしょ? それを、負けたらすぐに鞍替えして敗者にはなりませんって感じで」


「…コクルは、全面戦争で勝っていたとしてもクレハナの王にはなれなかったでしょう。ナウカの次の席に甘んじていたはずです。そして、今回のウルラとの停戦協定も苦渋の選択でしょう」


コクルは、おそらくウルラにとってかなり有利な条件を付けられたはずだ

当然、ウルラがナウカを倒した後は、コクルはウルラがクレハナの王となることを支持することになる


結局、コクルがクレハナの王となることはないのだろう



「…そんl辺の話は内戦が終わってからです。私達はヤエのことに集中しましょう」


「分かりました」



俺達は、情報を得るためにそれぞれの場所に飛んだ


マキ組長はウルラ軍本部

ジョゼは軍病院での聞き込み

そして、俺とルイはドミオール院の集落での聞き込みだ


どうでもいいが、ドミオール院の集落は小さすぎて名前が無い

~村、とか名前くらい付けてくれないと呼びにくいんだよな




ドミオール院に着くとマリアさんとウィリン、子供たちが出迎えてくれた


「ラーズさん、ルイさん、よく来てくれました。さ、どうぞ」

マリアさんが笑顔で招き入れてくれる


「タルヤは集落の商店に買い物に行っています」

ウィリンが言う


「ルイ。俺はタルヤを迎えに行くついでに、集落に聞き込みに行ってくるよ」


「分かった。俺はマリアさんとウィリンから聞いておく」


「え?」

マリアさんとウィリンの顔に?マークが浮いているが、説明をルイに任せて俺は集落に歩き出した



「少しは、全面戦争の時の戦いを見ている人がいればいいんだけどな…」


少し歩くと、集落の入口に着いた

入口と言っても、集落の民家が並び始めた程度で、ちゃんとした門があるわけではない


そして、集落の中に入るとすぐに商店に着く

この集落は本当に小さいのだ



「…ん?」


タルヤが、三人の男たちと話していた


だが、穏便なようには見えない

何かを言い争っているように見える


「いいじゃんかよー、ちょっとだけ遊ぼうぜ」


「嫌って言ってるでしょ! 仕事があるんだから放してよ」


「あそこの孤児院だろ? 付き合ってくれないなら、攫っちまうぞ?」


「は…?」


「俺達、街で仕事をしてたんだけどさ、全面戦争のせいで仕事が無くなっちゃったんだ。かわいそうだろ?」


「…この集落の人達は、直近まで連合軍が攻めて来て殺される所だったのよ!? 生きているだけましじゃない!」


タルヤは強引に腕を振りほどく

だが、男たちは諦めない


また、タルヤの腕を取ろうと迫る



あ…、まずい

タルヤに精力(じんりょく)が集まって行く

テレキネシスを使うつもりだ


俺はすぐに走って近づく



ゴガッ!


「ぐほぉっ!!」



直近にいた痩せた男を思いっきりぶん殴る


「なっ…、何だお前は!」


「ラーズっ!?」


男二人とタルヤが同時に俺を見る


「こいつらは何?」


「この商店の息子よ。田舎を嫌って街に出たんだけど、戻って来たの。それからは働きもせずにずっと…」


「俺達は内戦の犠牲者なんだよ! そのせいで仕事が無くなったんだ。お前らに何が分かる!」


「おらぁっ!」

連れの男が、立てかけてあった鉄パイプを掴んで殴りかかって来た


俺は腕で鉄パイプを受ける



ガッ…!


「なっ…、こいつの腕、どうなってるんだ!?」



俺は装具を物質化

装甲で受ける


そして、拳でボディを一発



ドボッ…


「コヒュッ…」



横隔膜が痙攣した音がして、男が倒れる

防具にも武器にもなる手甲型の装具、こういう時は便利だな


「ひっ…!」


商店の息子が、倒れた男を見て後ずさりする


「…この集落はな、俺達兵士が必死になって守った場所なんだ」


「え?」


「この集落を守るために、何人もの兵士が死んだ。俺の仲間も含まれている」


「…」


「安全な都市でヌクヌクしていた野郎が、この集落で文句を垂れるだと? お前、舐めてんのか!」


「ひぃっ!?」


「このクソガキが! これ以上、ここで遊び惚けるつもりなら、ナウカの戦場に叩き込むぞ!? 仕事なら嫌と言うほどある、試してみるか?」


「い、いや、すみません! は、働きます! 俺達が悪かったです!」


「次、仕事を見つけてなかったら戦場に連れて行ってやるからな。…行け!」


「は、はいぃぃっ!」


商店の息子は、男二人を連れて逃げて行った


それを見て、俺はため息をつく

こんな奴らを守るために、俺達は死に物狂いで戦ったわけじゃないはずなんだが…



「ラーズ、ありがとう。助かったわ、あいつらしつこくて…。この集落には若い女が少ないから」

タルヤが笑顔を見せる


「タルヤが変異体って知らないから調子に乗ってたんだよな。危なく、タルヤがぶっ飛ばしちゃうところだった」


「どうしてここに?」


「ドミオール院に来たから、ついでにタルヤを探しに来たんだよ。集落で聞き込みもしたかったから」


「聞き込み?」


「うん。全面戦争の時に、この集落に部隊の動きとか、戦っていた兵士が誰とか見てた人いないかなって」


「え? うーん、どうだろう。みんな、家に籠りながらも外の様子は気にしていたと思うけど…」

タルヤが首を捻る


ま、地道に聞き込みをするしかないか


そんな時、PITが震える

ジョゼからの連絡だった


「もしもし。ジョゼ、どうした?」


「ああ、ラーズ。軍病院でゲイルが見つかったんだ」


「ゲイルが!? 良かった、無事だったんだな?」


「ああ、無事だ。そして、それだけじゃない、コウやヤエと一緒に戦っていたんだよ!」


「え…!」


そう言えば、ゲイルは全面戦争中にドミオール院の様子を見に来てくれたとタルヤが言っていた


「ブルトニア家とも一緒に戦っていた。これから話を聞くからすぐに来てくれ」


「えっ!? 分かった、すぐに向かうよ」


俺は、急いでタルヤとドミオール院に戻った



ゲイル 八章 ~1話 戦後

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ