表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

276/394

七章 ~35話 望まぬ形での再会


その倉庫は酷いありさまだった

ハエがいたる所を飛び交っている


遺体袋からはとんでもない悪臭、人肉が傷んだ腐臭が漂っていた

ウルラ兵だけではなく、ナウカ兵やコクル兵も集められて来て、記録を取られて次々に火葬されている


ここには、尋常じゃない数の遺体が集められてた



「…この先の、身分を確認するための部屋に運んであります」


「分かりました」


係員について行くと、狭い部屋の中に遺体袋が一つ置かれていた

ウルラ軍に登録してある指紋とDNAを照合したため間違いはないが、一応確認をしてほしいとのことだった


「…」

マキ組長が、遺体袋のジッパーを降ろしていく


途端に腐臭が強くなり、小部屋に充満する



「ヤエ………!」


誰かが呟く



発見までに時間がかかり、腐敗が進み緑色がかった皮下組織が皮膚に透けていた

かわいらしい笑顔を作っていた顔が、土埃で汚れている


「胸を銃弾が貫通していました。どう見ても非戦闘員なのに、連合軍の奴らも酷いことをするもんですよ」

係員が言う


遺体を調べられた後のようで、ヤエの服は脱がされている

その胸には銃痕が二つ空いており、一つは心臓を貫通していた



「ヤエ…、一人でよく頑張りました。ゆっくり休んでください」

マキ組長が、ヤエ顔に張り付いた泥と髪を剥がしながら言う


「この倉庫の裏に火葬場を増設しています。確認が終われば予約を取れますよ」

係員が書類を持って来た


「いえ…、この娘は部下なので、私が面倒を見ます。火葬もこちらでしますから大丈夫です」


「そうですか? 遺体を自分で運ぶつもりで?」


「はい、そのつもりです」


「遺体袋から汁が染みてきていますので、車が汚れないように気を付けて下さいね」

そう言って、係員が書類を出してくる


マキ組長は、その書類にサインをしてヤエを引き取った




・・・・・・




俺達は、ヤエの遺体袋にドライアイスを詰める

そして、保護シートで遺体袋を包んで車に乗せた


「…」


ジョゼが運転し、マキ組長が助手席に乗る

俺とルイは後部座席でヤエを押さえる


窓を全開にして廃校へ


もはや臭いで鼻がバカになり、何も感じなくなってきた



廃校に着くと、一階にある使っていない教室にヤエを連れていって寝かせた


「マキ組長、ヤエをどうするんですか?」


ヤエを弔ってやるとしても、火葬してやらないといけない

ここは森の中なので、そのまま埋めれば猪や狼、モンスターに掘り起こされてしまうのだ


()()()()()()()()()、ヤエはコウと共にドミオール院に眠らせてあげるつもりです」


マキ組のメンバーは、全員が天涯孤独の身の上だ

だからこそマキ組の結束は強く、葬儀も自分達でやるのだ


「やること?」


マキ組長が頷く

「ヤエはスパイ能力、諜報活動に特化した忍びでした」


話術で懐に入り、性技で籠絡したりと、人たらしに特化した忍び、正にくノ一だ


「ヤエは情報をメモしたりはしません。相手に警戒されてしまいますから」

そう言って、マキ組長は棚から何かを取り出した


「それって…」


それは、メスや鉗子などの手術用具だった

ルイやジョゼは、既にゴム手袋やビニールエプロンを着けている


「ヤエは体内にボイスレコーダーを仕込むという、プチサイバネ手術を受けていました」


マキ組長が、ヤエの横腹にマジックで線を引く


「ボイスレコーダー…」


「送ってあげる前に、ヤエが死んだときの状況を確認しておきます。もしかしたら、殺した連合軍の相手が分かるかもしれませんから」


「…!?」



こうして、マキ組長はヤエの遺体からボイスレコーダーを取り出した

その小さな機器は、ヤエの肋骨に沿うように肋骨の内側に取り付けられていた    


ヤエの遺体は内臓が傷んでおり、凄まじい腐臭、血の臭い、排せつ物の臭いが立ち込める



ヤエ…


非戦闘員のヤエをこんな姿にした野郎が許せない

俺の戦友を殺しやがった野郎が許せない


「ヤエ、仇は取ってやるからな…」

ルイが呟く


「あの辺りはナウカ兵が攻めてきていた。奴ら、絶対に許さねぇ…」

ジョゼがその呟きに頷く


俺も、そのつもりだ

ヤエとコウを殺した奴らは皆殺しにしてやる


俺は、俺達マキ組は、奴らに引き金を引く権利があるはずだ



1991小隊の光景が思い起こされる


全てを失った喪失感


渦巻く怒りを叩きつけるべく進み続けて、また大切な者を失ってしまった



「…」


ヤエの姿を目に刻み付けるべく、俺はマキ組長の作業を見守る



ヤエの体には、ボイスレコーダーが一つ、隠しカメラが一つ仕込まれていた


「…右手の指先に仕込まれた超小型カメラには気づかれたようですね。ヤエのPITが破壊されていて、データの復旧は厳しいでしょう」


ヤエの右手は散弾のようなもので撃たれ、無くなっていた


「気づかれた?」


ヤエは、戦闘に巻き込まれて殺された

そんな証拠隠滅みたいなことを連合軍がやるだろうか?


「ボイスレコーダーは無事です。おそらく音声は取れているでしょう」


「散弾で女を撃つなんて、なんて酷いことを…」


散弾は複数の弾が詰め込まれており、顔も体もグチャグチャになった酷い死に方をする


「ヤエの致命傷は散弾ではなく、この胸の二発の銃弾です。ヤエは、致命傷となる顔や胸よりも肋骨のボイスレコーダーを庇ったような形跡があります」


「命よりもボイスレコーダーを?」


「つまり、何かを私達に残したかった。ヤエの忍術を使ったダイイングメッセージと言うことでしょう」


「…っ!?」



マキ組長が、最後にヤエの体をきれいに拭く

俺達は、きれいな真っ白い布でヤエを包んでやる


せめて、最後に綺麗な格好をさせてやりたかったからだ


…そして、ヤエがこれ以上傷む前に火葬場に連れて行く

全面戦争の結果、火葬場は大混雑だった




数日後


ヤエのボイスレコーダーは、俺達にその真相を教えてくれた



そして、ウルラ軍によるナウカ領への本格的な侵攻の開始


仲間を失った失意と、内戦の終わりに向けた希望



…終戦に向けた戦いの幕が開けた






ドルグネル家独自雇用者リスト


氏名 ラーズ・オーティル

人種 竜人

二つ名 トリッガードラゴン

戦闘ランク C+

適正職種 斥候→忍者 ←new!

固有特性

・ナノマシン統合集積システム2.1

・高速立体機動戦闘

・近接火力、フル機構攻撃

・サイキック:圧縮ボム

・忍術:高速アイテム術 ←new!

・完成変異体ドラゴンタイプ

・装具:メメント・モリ ←new!

(ニーベルングの腕輪使用)

固有装備

・真・大剣1991

・ヴァヴェル(魔属性装備)

・絆の腕輪

備考

・使役対象四体

(外部稼働ユニット、小竜、式神、アンデッド)

懸念事項

・トリガーが引かれることでの暴走

・呪印の所有


※高速立体機動戦闘

ホバーブーツによる高機動戦闘+飛行能力+流星錘アームや引き寄せの魔石の駆使


※忍術:高速アイテム術

サイキック:サードハンドとAI制御倉デバイス術による宇宙産を含む複数のアイテムの高速使い分け

サードハンド、宇宙産兵器所持は同項目に統合


ボイスレコーダー 六章 ~24話 取り戻した力


七章終了となります!

一日空けて明後日から八章を投稿します

よろしくお願いします


読んで頂きありがとうございます


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ウルラ家というかウルラの上層部はラーズが3人のBランクと接敵して勝ったことを知ってるのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ