表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

273/394

七章 ~32話 全面戦争終結

用語説明w

コウ:マキ組の下忍、青髪の魚人男性。補助魔法である防御魔法、そして銃を使う

ルイ:マキ組の下忍、赤髪の獣人男性。スナイパー技能に長けている

ヤエ:マキ組の下忍、ノーマンの女性。潜入に特化した忍びで戦闘力は低い。回復魔法を使うため医療担当も兼務

ジョゼ:黒髪のエルフ男性。情報担当と事務を行う非戦闘員、整備などもこなす


全面戦争が終結した


ウルラ軍に裏切りの部隊が出たために隊列が崩れ、ナウカ・コクル連合軍が有利となった


しかし、その後ナウカ領内が混乱、今度は連合軍が隊列を崩しウルラ軍が押し返した

ウルラ軍が怒涛の侵攻を行ったこと、その侵攻に対して反撃が出来なかったことで、連合軍は大きな被害を出し、結果として撤退を余儀なくされた


その後の調査で、ナウカ領内にて虫系モンスターの大規模なスタンピートが起こっていたことが判明した



「調子はどうですか?」


「…」


マキ組長が声をかける

俺は、ウルラ軍の軍病院で医療カプセルに入っている


Bランク戦闘員三人に囲まれ、一人に致命的な一撃を与えた


しかし、残りの二人に抗う術が残っていなかった

ただ、足掻くために決死の特攻をしようと覚悟をした


…その後の記憶がない

トリガーの暴走を起こしたようだ



マキ組長とヤマトが、ウルラ軍の侵攻に合わせて俺のGPSを追って来てくれたらしい

そして、茂みの中で意識を失っている俺を発見してくれたため、命が助かったのだ


その近くにBランク戦闘員が三人倒れていた


内一人の剣使いが毒によって死亡

斧使いと杖使いの鬼憑きは、1991であろう大きな切り傷を受けて倒れていたために捕虜とした


一命は取り留めたとのことだが、まだ意識は戻っていない



俺が意識を取り戻した時には、全面戦争終結から丸一日が経っていた


おかげで既に頭痛もない

完成変異体となってからトリガーに対して耐性が着いたのか、頭痛が治まるのも早くなった


かと言って、使いすぎには気を付けないとな

そもそも、意識しなくてもトリガーの強度が勝手に上がりすぎてしまうから困ったものなのだが



…全面戦争は、本当にギリギリの勝利だったらしい


ウルラが劣勢の際、スタンピートまで持ちこたえることが出来たのはフィーナの活躍が大きい

オーバーラップした宇宙戦艦・宵闇の城から、外部稼働ユニットやゴーレムを放出


連合軍に対して一斉に攻撃を仕掛けたことで、隊列の乱れを突かれた被害を最小限の抑えることができた

更に、自身の範囲魔法(大)、ナオエ家のジャックフロストを仕留めたプラズマ魔法…


これらを、マサカドとの一騎打ちの直後にやってのけたのだ

漆黒の戦姫の名は、全面戦争の英雄としてクレハナどころか世界に響き渡った


フィーナ、凄いな

B+ランク…、セフィ姉と同じランクというのは、もはや大量破壊兵器と同じだ


俺達が騎士学園時代に憧れた英雄ってやつに、フィーナはなったんだな



領境は現在、ウルラ軍が駐留している

本当ならすぐにでもナウカ領に攻め入りたいのだろうが、被害が大きすぎて一時保留となった


しかし、その侵攻も間もなくとのこと


ウルラ領内には、資金を持っていてもウルラ王家に協力していない者や企業がいくつもある

それは、ウルラが内戦で負けた時に、ウルラには協力していませんと連合軍に対して言い訳をするためだ


しかし、全面戦争はウルラが勝った

この勝利は、この内戦はウルラが勝つという事実とも取られる


様子見をしていた者たちも、この状況でウルラに協力しなければ反逆者としての汚名を被ることになる

今まで協力してこなかった分、ウルラ王家としても強気で資金を出させていくだろう


つまり、ウルラ軍の再編は急ピッチで進むということだ

そして、それは早ければ早い程いい




やっと、医療カプセルから出ることが出来た

そのまま退院を許される


病院のロビーには、マキ組長とヤマトが待っていてくれた


「あれ、ヤマトも来てくれたんだ?」


「そりゃ、今回の大功労者であるラーズ様のお迎えくらい来るさ」

ヤマトが笑いながら手を出す



パンッ


俺達のハイタッチは、小気味いい音が響いた



「お互い、良く生き残ったよな」


「おいおい、一般兵のラーズと俺を一緒にするなって。死ぬ確率はお前の方が圧倒的に上なんだぞ」


「そりゃそうだな。俺、ヤマトやマキ組長に助けられたことさえも覚えてないんだ」


「そうそう、それだよ。お前、どうやってBランクを三人も倒したんだよ?」


「だから、覚えてないんだって。俺が覚えているのは剣使いの一人を倒したときだけだよ」


「なんなんだよ、それは…」


いや、俺が聞きたいんだってば


「先に食事を済ませてしまいましょう」

マキ組長が言う


「…そうだな、分かった」

ヤマトが微妙な顔して頷いた



病院の食堂に行くと、軍人たちが笑顔で食事を取っていた

みんな楽しそうだ


「勝ったって顔をしているな」


「ここに陰の功労者がいるんだけどな」

ヤマトが言う


ドースさんから、俺がスタンピートを起こしたことは内緒にしてほしいと頼まれたらしい


今回の全面戦争の英雄はフィーナである必要がある

その英雄が、ウルラを鼓舞して連合軍の士気を挫く

一般兵の英雄では、敵にとっては驚異とはならない


要は、王家の威光と発言力を強めるために手柄をくれと頼んできたのだ



「その分、マキ組には資金面や待遇が優遇されることが決まっています。ラーズのおかげですよ」


「俺は英雄なんて柄じゃないし、有名になりすぎると今後の活動がしにくくなりますから。うまくやってもらって助かります」


俺も忍びの端くれ

忍びは存在を消してこそ

名声を求める忍びなんかいるわけないだろ


「本当にフィーナ姫に連絡を取らなくていいんですか?」

マキ組長が尋ねる


「…俺は帰れって言われている立場ですからね。ウルラに貢献できただけで充分ですよ」


「ま、ジライヤが言っているだろうし、フィーナの方から連絡が来るんじゃないか?」


俺達はそれぞれ注文した昼食を食べる


「私達はナウカ領に入りましたが、凄まじいありさまでした。虫系モンスターとの戦闘の痕、犠牲になった者も多数、今回の連合軍を仕留めた数は、ラーズが断トツかもしれませんね」


「ああ、凄かったぞ。突然、スタンピートに横腹突かれれば、ああなるのも分かる気もするけどよ」

ヤマトも頷く


「…なんか、何とも言えない気分です」


「ラーズがやったスタンピートは、究極の忍術ですね」


「究極?」


「究極の忍術とは環境操作を使ったものです。土砂崩れや雪崩、川の氾濫、津波などを利用して敵を一掃するような…」


「あー…教わりましたね」


「今回は、いわば虫遁スタンピートの術と言ったところですね。自分の輪力さえ使わずに、環境操作によってスタンピートを引き起こした。そうそう出来ることではありません」


「はい…」


奇しくも、究極の忍術が成功してしまった


だが、同時にイコール大量虐殺者ともなってしまった

いや、あのままだとウルラ軍が大量に殺されていたからな…



食事が終わると、マキ組長とヤマトの顔が真剣な表情となる

「………」


「ど、どうしたんですか、急に?」

俺は二人の顔を見る


「まず、ドミオール院についてです」


「あ、無事だったんですか!?」


「ええ、無事です。コウとヤエが従事したブルトニア家のエリアは激戦になったようですが、集落までは戦火が及びませんでした」


「俺もウルラ軍に確認を取ったから間違いない。裏切ったナオエ家の代わりに代理の小領主がついているし、領境はウルラ軍が駐留しているからもう安心だ」


「そうか、良かった…」


「そして、お前から預かったフォウルや他の使役対象達も無事だぜ」


「外部稼働ユニットはジョゼがメーカーに依頼してパーツを取り寄せています」


「ジョゼも無事だったんですね、ありがとうございます」



「…」「…」


そして、二人が言い淀む



あれ、まだ何かあるの?


「ラーズ、落ち着いて聞いてください」


「え、はい…」


「実は、コウなんですが…」


「は、はい」


「…戦死しました」


「え…?」


「そして、ヤエが行方不明となっています」


「なっ…!?」



マキ組長が、ここまで言うとため息をつく


「ルイは無事です。ジョゼと共に廃校で待っていますので」


「あ…、あ、はい…」


な、何を言っている?


俺は、返事をするので精いっぱいだった





究極の忍術 六章 ~21話 忍術の修行

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 身内は全員無事なんてそんな都合のいい事は起こらんなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ