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七章 ~28話 戦場7・劣勢

用語説明w

装具メメント・モリ:手甲型の装具で、手刀型のナイフ、指先に鉤爪、硬質のナックルと前腕の装甲が特徴。自在に物質化が可能

シグノイア純正陸戦銃:アサルトライフルと砲の二連装銃


フォウル:肩乗りサイズの雷竜。不可逆の竜呪を受けており、巨大化してサンダーブレスを一回だけ吐ける

リィ:霊属性である東洋型ドラゴンの式神。空中浮遊と霊体化、そして巻物の魔法を発動することが可能

ヤマト:龍神皇国騎士団の騎士、特別な獣化である神獣化、氣力を体に満たすトランスを使う近接攻撃のスペシャリスト



Bランクであった、ナオエ家の忍びであるナオヤを何とか倒すことが出来た


ダメージは無いが、トリガーを発動し続けた負荷で頭痛がする

体が発熱している


間違いなく、身体がオーバーヒート一歩手前だ



「ゴォォォォーーーーーー!!」


ジャックフロストが吠える



ナオエ家の裏切りの具現化、冷属性精霊の顕現だ

隊列が乱れているウルラ軍に対し、ナウカ・コクル連合軍が勢いづいている


奴を早急に倒してウルラ軍の隊列を戻さないと、このままでは戦線の維持が出来なくなる


…負ける


それは、この全面戦争の敗北

領境からのウルラ軍の撤退を意味する



「ラーズ!」

コウとルイが俺に駆け寄り、回復薬をかけてくれる


俺は受け取った回復薬をがぶ飲み

すぐに氷の化け物への攻撃を開始しなくては


「あっ…!」

コウが呟く


見ると、ジャックフロストに対し、二人の戦闘員が纏わりつくように攻撃している

五遁のジライヤと血風のマキ組長だ


ジライヤは闘氣(オーラ)を纏って攻撃しているから理解ができる


だが、いくら腕が立つとはいえ、Cランクの一般兵であるマキ組長に何であんな戦い方が出来るんだ?



キュンッッ!!



突然、一瞬の閃光がジャックフロストの体を通り過ぎる

膨張する光、発生する熱量



ドッッ-------…………!!


「グオォォォーーーーッ!」



ジャックフロストの霜の体が溶解、胸に大穴が空いた直後に崩れ落ちていった


「漆黒の戦姫の攻撃だ!」

「ナオエ家を殲滅しろ!」

「急げ! 連合軍が迫っているぞ!」


どうやら、ジャックフロストを貫いた光はフィーナのプラズマ魔法だったようだ


主力を失ったナオエ家の部隊は、あっという間にジライヤとマキ組長が蹂躙

ウルラ軍がなだれ込んで制圧していく



「うわあぁぁぁぁぁっ!?」

「き、来たぞーーー!」

「もうこんな近くまで!」


しかし、時すでに遅く、連合軍が怒涛の勢いで領境に侵攻してきていた

容赦なく、隊列が崩れていたウルラ軍を撃破していくのが俺達の所からも見えている



「ルイ、下がって塹壕に身を隠せ! コウ、ここで耐えるぞ!」


俺達は、領境近くに掘られた弾避けの塹壕の前に土属性土壁の魔石でバリケードを作って行く

他のウルラ軍も、必死に防衛線を構築している


領境を取られたら撤退を余儀なくされる

イコール、全面戦争の敗北だ



ドッガァァァァァン!

ガッガァァァァァァン!

ドガガガガガガッッ!


ロケットランチャーを発射され、戦車の砲身が火を噴く


一斉射撃と砲撃の合間に連合軍のパワードアーマーが接近、土壁を越えて塹壕への侵入を試みる



ボゥッ ズガァッッ!


1991のジェット斬りで頭を叩き割る



防御力を活かして、次々と突入してくるパワードアーマー


更に敵の範囲魔法が発動

躱しながら自己生成爆弾のノームを転がす


携帯用小型杖で軟化の魔法弾を当てる

そして、銃化した左手で柔らかくなった装甲を撃ち抜く



「死ね、ウルラのごみ共がぁぁぁっ!」


ドガガガガッ!



ダメだ、手が足りない!

竜牙兵、データ2を解禁だ


竜牙兵は、土壁を越えて来たパワードアーマーの足止

データ2は、土壁の向こう側にアサルトライフルと魔法弾による弾幕を張る



自己生成爆弾のジンを二発発射


一番近いパワードアーマーに肉薄して、ナイフで首筋を一突き



ボッ!


新たに超えて来た人型ゴーレムにエアジェットで突っ込む



装具で固めた拳で右ストレート

その後ろにいた、魔導士の杖を持つ兵士に流星錘を放つ



バチュッ!


「…っ!?」



魔導士の杖を持った兵士の頭蓋骨が弾ける

テレキネシスを圧縮したサイキック・ボムだ



ドッガァァァァァン!


「ぐあっ!?」



俺の直近にロケットランチャーが着弾

爆風で吹き飛ばされる


土壁の防衛線を越えられ始めたことで、塹壕からの弾幕が薄くなり、結果としてナウカ兵の達が肉薄してくる数が増えている



更に、グレネードが土壁を破壊

次々とナウカ兵たちが突入



「ぐわっ……!」

「ぎゃっ!」


ウルラ兵たちが銃弾と魔法で次々とやられていく



「うおぉぉぉぉっ!」


コウが火遁熱源デコイの術でミサイルの侵攻方向を逸らし、アサルトライフルでナウカ兵を掃射



「リィ、巻物を撃ちまくれ! 可能な限りだ!」


「ヒャン!」



混戦の中、範囲魔法は有利だ

リィが、俺が持つ勾玉から姿を現し、巻物の範囲魔法(小)を発動させていく


火属性、風属性、雷属性…、リィは、モ魔で発動するよりも格段に速く魔法を発動、しかも連発もできる


リィの範囲魔法(小)が、侵入して来たナウカ兵を巻き込んでいく



俺は、土壁を越えた兵士に無言で接近

装具の手刀で喉を裂く


また、土壁の魔法弾でバリケードを修復

そして、高速立体機動を発動


スピードを止めないように、コンパクトな動きでナウカ兵たちを攻撃

装具で固めた拳は、高速立体機動の速度が乗ることで容易に体にめり込んでいく



ズキン…!


「う…!?」



トリガーの影響か、また頭痛が酷くなってきた


…戦闘時間が長く、トリガーが発動してしまうような窮地の連続

トリガーの継続時間が伸びすぎた


だが、解除できる余裕がない!



「うおぉぉぉっ! ウルラの外道共が、地獄に落ちろ!」

「仲間の仇だ、全員殺してやる!」

「殺戮者共が、あの世で詫びを入れてきやがれ!」


この全面戦争で改めて感じる


…ナウカ軍の殺意は大きい

過去のウルラとの内戦で蓄積されてきた恨みの念を感じる



「死ね! ウルラの領地を狙うハイエナが! ここは絶対に通さん!」

「根絶やしだ! 貴様らが殺して来たウルラの民に会わせてやる!」

「魔人の手先共が! お前らは人間じゃねーー!」


そして、ウルラにとってもナウカは怨嗟の対象だ

お互いに罵り合い、殺し合う



ドッガァァァァァァン!


爆発、巨大な砲弾の直撃音が響く



「MEBだ! そして、力学属性の魔法使いが砲弾を……」


ゴッガァァァァン!



叩きつけられる爆風

このままじゃ戦線を突破される!



「フォウル!」


俺は、切り札を切ることに決めた

たった一枚しかない、貴重な大火力だ



肩乗りサイズの小型の竜が、一気に巨大化

比例して大きくなった口を、迫って来たナウカ軍に向ける



バリバリバリーーーーーーー!


凄まじい雷が直線にほとばしる



俺の切り札、フォウルのサンダーブレス

ナウカのMEBや魔導士の火力部隊を吹き飛ばす


「撃てーー!」

俺は叫ぶ


押し戻すためには、火力が必要だ

攻撃の手が足りない



五遁のジライヤが、忍者らしからぬ戦闘力で連合軍を蹴散らしている

Bランクの闘氣(オーラ)、そして複数の遁術

もはや兵器にように見える


だが、兵器を持つのはウルラだけではない

ナウカもまた、Bランクや魔人という兵器を持っている


ジライヤが相手にしているのは、おそらくBランクの魔人だ


「ほぉ、若造、まだ生きておったのか!」

戦闘の最中、ジライヤが俺を見つける


「…さっさと、あのBランクを倒して戦線を押し戻せ! Bランクの仕事だろうが!」


「ふん、お前に言われるまでもないわ!」


既に土壁の魔石は尽きた

もう弾避けは作れない


俺は倉デバイスから陸戦銃を取り出す

ロケットランチャーやハンドグレネードは品切れ

自己生成爆弾も使い切ったため、しばらくは打ち止めだ


だが、陸戦銃にはグレネードがある!



ボヒュッ ドッガァァァァン!


爆発と同時に、エアジェットと飛行能力のダブル推進力



パァン!


勢いを拳に乗せた正拳突きで、ナウカ兵の首が折れる



更にハイキック、装具の肘、流星錘

近接戦闘で仕留めてすぐに離脱

止まらずに移動することで、弾の回避と攻撃を兼ねる



…だが、ナウカ兵が次から次に迫っていた

くそっ、数が多すぎる!



銃弾に倒れるウルラ兵

ロケットランチャーでバリケードを破壊、無慈悲にも範囲魔法が塹壕内で発動する



「ぎゃあぁぁぁぁっ!」


次々と味方が死んでいく



軽い絶望感


このままじゃ、撤退しか方法がない

なにか、起死回生の一手が必要だ



俺は、森の中で何かの動きを発見

すぐに移動する


気付きを見逃してはダメだ

何かいる、それは危険な要素に間違いない


死を想像しろ、メメント・モリだ



ゴッパァァァン!


「うおぉぉぉっ!?」



突然、何かが弾ける


モ、モンスターか!?



「待て! お前、ラーズじゃねーか!」


そこにいたのは大柄の兵士と、その部隊だった

たった今、虫系のモンスターを倒したようだった


「え!? ヤマト!」


「このエリアが崩れそうってんで転戦して来た! ナオエが裏切ったんだって!?」


「ナオエは殲滅したが、ウルラの混乱に乗じて連合軍に攻め込まれている! このままじゃまずいぞ!」


それを聞いて、たった今蹴散らした虫系モンスターの死骸を踏みしめて、ヤマトが前に出る


「くそっ、森の中を通ったら繁殖期の虫どもに時間を喰った! おい、すぐに参戦するぞ!」


「サー、イェッサー!」

ヤマトの言葉に、部下たちが銃を構える



「…」


その時、俺の頭に浮かんだイメージ



…これ、起死回生の一手にならないか?



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