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七章 ~27話 戦場6・裏切り

用語説明w

真・大剣1991:ジェットの推進力、超震動装置の切れ味、パイルバンカー機構、ドラゴンキラー特性を持つ大剣、更に蒼い強化紋章で硬度を高められる


倉デバイス:仮想空間魔術を封入し、体積を無視して一定質量を収納できる

魔石装填型小型杖:使いきり魔石の魔法を発動できる


連発して放たれる冷属性範囲魔法


地面が凍り付いて行く



「ラーズ、ジライヤ!」


「マキ組長、あいつらを止めればいいですか!?」


「何かを狙っています、リスクは負いますが早急に潰します!」


マキ組長が、そう言って風遁風の道を発動

俺も、それに続く


「待て、マキと小僧! ナオエ家にはBランクの忍びがいる、気を付けろ!」

そんな俺達にジライヤが声をかけてくる


「この裏切りを許したのは、ウルラ王家とジライヤ…あなたの責任です」


「…言い訳はできん。だが、そんなことを言っている時間は無い。わしら三人のうち、Bランクの戦闘員を引いた者が相手をして、残りの二人はあの術を潰す。ナオエの制圧にこれ以上時間はかけるられん」


そう言うと、ジライヤは影を纏いながら高速で飛び出した


「あの影は…」

俺はジライヤの遁術と思われる技を見て呟く


あの影を纏った高速移動は、デモトス先生が使っていたものに似ている


「あれは空間属性の遁術、影の衣です。身体が進行方向に落ちるように、空間を歪めるのです」


「…理解するのが難しいですね」


空間をゆがめているために、光が屈折して帰ってこないため、真っ暗闇の衣のように見えることからついた名だ


いや、今はそんなことどうでもいいわ!



ズキン…


「…」



マサカドとの戦闘を含め、トリガーの連続発動の影響で頭痛が出始めた

まずいな、さっさと倒してトリガーを解除しなくては



俺とマキ組長も、それぞれ方向を変えて魔術師たちを強襲する


やっとのことでウルラ軍も攻撃の準備を初めて反撃に出始めた

援護射撃を受けて、ナオエ家の部隊を掃討する



「ゴオォォォォーーーーーッッ!」


突然、大きな雄叫びが響き渡る



魔術師たちの目の前に、巨大な氷の巨人が出現する


な、何だあれば!?



「精霊使いですか…! 珍しい術式ですね」

マキ組長が言う


どうやら、魔術師たちが冷属性範囲魔法を乱発して周囲の気温を下げ、人工的に冬の環境を作り出した

そこに、精霊使いが氷の精霊を呼び出したということらしい



ジャックフロスト


霜の精霊、寒さの具現化であり、冷気の塊

笑い声をあげて寒気をふりまく災害だ



俺とマキ組長は、それぞれ距離を取って対峙する



ガキィッ!


「…っ!?」



突然、恐ろしい速度で斬りつけられた


そして、咄嗟に装具で捌いたのだが、装具は切り裂かれ、その下のヴァヴェルの装甲にまで切り込みが入っていた



「…あんたは?」


「ナオエ家の忍び、ナオヤだ」


「何でナオエ家は裏切ったんだ?」


「ナオエ様は、ウルラでの扱いに不満を持っておられた。そんな時に、ナウカからの誘いがあったのだ。クレハナの未来のため、クレハナはナウカが統べるべきと決断されたということだ」


「あんたの主人ってクズだよな」


「な、何を言うか!」


「それでだまし討ちと裏切りの方法を探っていたという訳か。領民に行き渡るはずの物資をくすねて私腹を肥やしながらさ」


「大義のためには、多少犠牲もやむを得ないのだ!」


「お前らは、ウルラ家の采配を多少の犠牲とは思えなかったんだろ? アホなの? ガキなの? この行き当たりばったり野郎が」


「貴様、殺す…」



精霊魔法によって具現化されたジャックフロストには、すでにジライヤとマキ組長が向かった

それなら、俺のやることは一つ


こいつを叩き切ることだ


「おい、あんたはBランクの闘氣(オーラ)使いだろ? Cランクの俺相手に本気でかかってくるつもりか?」


「我が主君とナオエ家を愚弄した罪、万死に値する。そして、我はジャックフロストを守らねばならない、さっさと死ぬがいい!」



ナオヤが身を屈める



ドシュッ…!


「…!!」



凄まじい速度でナオヤが切り込んでくる


…凄まじいとかいうレベルではない、見えない!

何だ!?


風の道化師が使った、ソニックブームを生み出すほどの風遁とは違う

あれほど飛距離はない


だが、下手すると同じレベルの速さの突進だ

この推進力の正体はなんだ!?



「…若造が、よく避けたものだ」


「運だけはいいんでね!」



トリガーを発動、立体高速機動で不規則に軌道を変えながら、銃化した左腕でアサルトライフル弾を撃ちこむ


ドガガガッ!



引き寄せの魔石の効果からスライディング、水面蹴り!



スパァッ!


「ぐわっ!?」



ナオヤが足を払われて宙に浮く

俺はこの隙に小型杖を抜いて軟化の魔法弾を当てる


しまった、こいつの場合は拘束の魔法弾を当てて機動力を削ればよかった!

だが、防御力を削ることも大切だ



「小癪な!」


飛び込みから忍者刀を振るうナオヤ

Bランクは、闘氣(オーラ)で纏うことが出来る近接武器を好んで使う



避ける


避ける


カウンターで左フック


飛びついて、蟹ばさみで倒し、自己生成爆弾のウンディーネを貼り付けて脱出



「なっ!?」


ドッガァァァァン!



こいつの動きは見える、戦える


後は忍者特有の隠し玉だけだ


あの高速移動の正体はいったいなんだ!?



パリリ…



「…っ!!」


ガッ!



ラウンドシールドごと、装具とヴァヴェルの前腕装甲を切断


くそっ、闘氣(オーラ)の攻撃力で高速移動とか反則だろ!



「雷属性の…、遁術か?」


「ほぉ…、なかなか目が肥えているようだな」

ナオヤが感心したように頷く



電磁飛翔体加速装置


レールガンの根本原理であり、磁界方向と垂直に置かれた物体に電流を流すことで発生するローレンツ力を利用して加速する装置だ

強力な磁界と大電流によって、弾丸を高速に加速することができる


つまり、こいつの遁術は自身の周囲に磁界を発生させ、電流を使って自分の体を加速する

自分の体を弾丸とする遁術版レールガンってことだ



だが、急激な加速は人体に影響がある

だからこそ、こいつの遁術は短距離限定の移動方法なのだろう



「雷遁縮地の術、とくと味わがいい!」


「…っ!!」


俺は、1991をサードハンドで浮かしたまま、左半身を前にした半身になる

そして、左手にナイフを構えた


「ナイフごときで受けきれると思うな! 時間稼ぎが目的だろうが、無駄だ!」



意識を集中



スキン…


「…」



時間稼ぎだって?

逆だ、俺には時間がない


頭痛がだんだんと酷くなってきている


この戦闘のおかげで、トリガーの継続時間が伸びすぎた

このままだと、また体と脳がオーバーヒートする


だが、こいつの見えないほど速い突進には、トリガーの集中力が必要だ

()()()()()()()()()()()()



パリリッ…


ナオヤの体に電気が満ちる



その瞬間、俺は半身になって隠していた右腕で三つのマキビシを放り投げる



「なっ…!?」


ドガガガガガッ!



激しい衝突音が響く

俺の高速立体機動もそうだが、衝突という現象は高速機動の天敵だ


高速で飛ぶジャンボジェットの分厚いコックピットのガラスに、渡り鳥の柔らかい体が衝突してヒビが入るのと同じだ



次は、ナオヤの動きをシミュレーションして後ろを取る

エアジェットで右へ、飛行能力で左へ、鋭角のターンで背後を取りながら1991を構えれば準備は終わり


対Bランク用の必殺攻撃、フル機構突きだ!



ゴゥッ… ズッガァァァァァン!


「ごふっ……!」



身体の前面のマキビシに衝突し、砕きながらの突進

衝撃により、闘氣(オーラ)は前面が無意識に厚くなったはずだ


つまり、その分後方の闘氣(オーラ)は薄くなった

そこをフル機構攻撃でぶち抜く


俺の対Bランク戦闘のセオリーだ



威力が乗り、ナオヤの体は背中から千切れた

だが、まだ生きている


普通はしばらくしたら死ぬが、風の道化師のような強化手術を受けている可能性もある


「ご主人!」


「ああ、分かってる」


俺は、データが倉デバイスからロードしてくれた液体をナイフに塗りたくる

そして、ナオヤの傷口から体内に差し入れた


「ぐはっ…、貴様…」


すぐに闘氣(オーラ)で傷口を包まれるが、すでにナイフを刺すことができた

塗った液体は猛毒のバジリスクの毒だ


「悪いが時間がない。すぐに死んでくれ」


「ぐはっ…、く…こんな……」

ナオヤが苦悶の表情を見せる



俺の忍術、高速アイテム術とは、必要な時に必要なアイテムを使える、ただそれだけの術だ


だが、必要な時に必要なアイテムを取り出すことは、簡単な事ではない

特に、俺のように多くの種類のアイテムを使っていれば尚更だ


こいつも強かった

だが、アイテム術を練習してきたおかげでギリギリで打ち勝ってやった



「ぐ……」


ナオヤの動きが止まる



ナオヤ、死んだのか…?

俺は警戒しながらナオヤを調べる


脈拍は止まった

闘氣(オーラ)も消失



ドン!


俺は念のため銃弾を打ち込み、ジャックフロストの方へと向かう



…俺は生き残った

まだ、生きていていいみたいだ



ズキン…


頭痛がまた酷くなっている



目の前にはナオエ軍とジャックフロスト

その向こうには、迫るナウカ・コクルの連合軍



全面戦争は正に佳境だ




想定外の休載、申し訳ありませんでした

本編を再開します

※閑話を二つ投稿しております


七章 ~5話の後ろ

閑話20 フィーナの強制執行

七章 ~15話の後ろ

閑話21 ブロッサムの資金


未読の方はご確認お願いします

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― 新着の感想 ―
[一言] 戦って生き残った事を 神かなんかにまだ生きていていいと言われたからだと考えてんのなぁ…
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