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七章 ~25話 戦場4・時間稼ぎ

用語説明w

自己生成爆弾:宇宙技術を使った四種類の爆弾の超小規模生産工場。材料とエネルギーを確保できれば、使用後に勝手に新しい爆弾を生成してくれる

ウンディーネ…粘着性のあるゲル状爆弾

サラマンダー…液体型焼夷弾

ジン…蜂のような羽根で跳ぶ小型ミサイル

ノーム…転がることである程度の追尾性を持つ球形手榴弾


ジョゼ:黒髪のエルフ男性。情報担当と事務を行う非戦闘員、整備などもこなす


冷たい殺気

そして、恐怖心を刺激する嫌な感覚


…間違いない、マサカドだ



「ラーズ! 戦線が崩れた!」

同時に、無線からジョゼの声


たった一人の敵の存在で、戦況が変化する

やはり、B+ランクの戦闘力は別格だ


「ジョゼ、俺がマサカド相手に時間稼ぎをする。コウとルイのサポートを頼む」


「…分かった、死ぬなよ!」



俺は倉デバイスからイズミFを取り出す


そして、トリガーを全開に発動、殺気を発しながら一発撃つ



ドォン!



これは、当てるためではない

()()()()()()()という合図だ


程なくして、強い殺気の塊が近づいてくる


「…挑戦的な殺気を感じて見れば、領境で震えていた小僧ではないか」


マサカドは、あの時と変わらない威圧感を纏っている

背後には鬼神の像を背負い、四本の腕を生やした巫女のような姿

そして、鼻から上を仮面で隠した女だ



「久しぶりだな、元気そうでなによりだ」


「…戦場で会った意味、そしてわざわざ私を呼んだ意味を理解しているのだな?」


「格下の俺やウルラ軍を攻撃して、私ツエー気分は楽しいか? 漆黒の戦姫を大人しく待ってろよ、 間もなく到着するぞ」


「待っている間、大人しくしている理由などない。ウルラ軍はどうせ皆殺しだ」


マサカドはすでに四本腕だ

二本の腕で一振りの大剣を、もう二本の腕にはそれぞれヴァジュラを握っている


「虎王ヤマトの部隊も出るらしいぞ? いい加減、弱い者いじめばかりしていないで強い奴の所に行けって」


俺は1991を倉デバイスから引き出して陸戦銃をしまう


アイテムの補充も終わった

あとは少しでも時間を稼ぎながら生き残るだけだ



マサカドの殺気が増大

聞く耳など当然持たずに、マサカドが戦闘態勢に入る

そもそも、俺のことなど相手にしていないのだから当然だ


だが、意外なことに、マサカドは会話に応じた


「…お前からは憤怒が伝わってくる。いったい何に怒っている?」


「な、何だって?」


そんな、哲学的なことを急に言われても困る


「…怒っていると言えば、お前達ナウカ・コクル連合がウルラを攻めていることだろ」


「…クレハナと関係のない部外者が何を言うか。ウルラのドースが、我々ナウカ領に対してどれほどの攻撃を加え、どれほどの領民の命を奪ったと思っている!」


俺の言葉を聞いて、マサカドの殺気が増大

まるで、スイッチが入ったかのような、修羅のような表情


…これは、マサカドのトリガーだ

マサカドも、失ったものがあるということか


実力差は天と地だが、俺は妙な親近感を覚えた



俺は1991を構える


殺気の錯綜

意識の集中



バリバリーーー!


二本の腕が持つヴァジュラから放電

俺は、殺気と挙動を感じてエアジェットで木の後ろに隠れる



雷属性投射魔法…、いや、特技(スキル)か?

だが、まるで実際の雷が発生したかのようだった


投射魔法は、魔法という現象を投げつける魔法だ

だが、魔法として雷という現象を発生させれば、それは物理法則に支配される

空気中を雷は直進せず、一気に放散してしまうのだ


そのため、魔力球という形で投射し、任意のタイミングで雷に変化させるという使い方が一般的だ



バチッバチバチッ!

ボボォッ!


「うおわっ!?」



だが、マサカドの雷は、ある程度の指向性を持って俺の方向に発動された

直撃した木が燃え上がるほどのエネルギーを持った、まさに雷だ



ドガガガッ!

ホワァッ…



俺は、銃化した左腕で射撃

同時に小型杖で拘束の魔法弾を狙う



「はぁっ!」


「くっ…!?」



マサカドの本気の動き

一瞬で俺との間合いを詰めて、風の道化師の霊体を叩き切った、あの霊属性の斬撃



ザシュッ…!

ズパッッ!


バッチュッッ!



「…お…わ……ぁぁぁぁっ!」


高速立体機動での根性の全力回避!

トリガーを全開にして、全集中力を注ぎ込む



大学時代に気軽に始めたバイト


そこで、ビアンカさんに習ったホバーブーツ


この技能は俺の命を何度も繋ぎ、挙句にこの立体機動を生み出した



思考を止めるな

緩慢になるな


目的は生き残ること


勢いに飲まれるな

選択肢を常に持て


デモトス先生の教えだ



ブォッ!


「…っ!!」



大振りの大剣を潜り、敢えての近接戦闘


装具で固めた拳でのストレート


装具の名はメメント・モリ

シグノイア防衛軍の大先輩である老兵から教わった教訓…



「死を想像しろ、だ!」


ガッ!



マサカドの顔面を拳が捉える

すぐに拳を引き、マサカドの挙動に集中


武の呼吸、ヘルマンから教わった武の境地だ



ゾクリ…!


マサカドの殺気が俺に集中する


顔面を殴るという行為はプライドを傷つける

これは、一般兵を格下に見ているBランクの特徴だ



マサカドが大剣を振るう


踏み込みが、今までとは段違いに速い



「…っ!?」


バックステップでマサカドの剣を避ける



その時、いやにゆっくりと剣の軌道が見えた


俺の動きよりも圧倒的に速いスピードで、装具で固めた俺の右の手首を通り過ぎる



ズルっ…


「あっ…!」



着地と同時に右手首がぱっくりと裂ける


あの一瞬で、装具の装甲の隙間、手首の関節を正確に切り裂かれた

骨まで切断、肉と皮でかろうじて繋がっている状態だ



驚愕


攻撃を見切れなかった


失敗だ



殺されるという事実


「!!」


反射的に反応

トリガー全開、命の危機が潜在意識のリミッターを解除する



ボッ!


エアジェットで突っ込み、左手での順突き



ここで引いたら負ける

次に一度でも攻撃されたら、躱せないし受けられない


それなら、マサカドよりも早く攻撃を叩き込む



左の拳をマサカドの顔に当て、直後に手を大きく広げる

視界を一瞬だけ奪う、ブラインドと言う技術だ



マサカドの反応と同時に飛行能力

データが自己生成爆弾を射出、それをサードハンドで掴む


真上へ飛んで跳び蹴り、離れ際にマサカドの視界の外、上方向に放り投げる



はぁー…はぁー…


この一瞬の攻防で、俺の精神力が一気に削り取られた


だが、生き残った


ざまぁみろ



マサカドは、もう一度俺の拳を受けたという事実に青筋を立てる

そして、そのために一瞬、動きを止めていた


ブラインドの効果によって、俺が投げ上げた自己生成爆弾はマサカドの視界に入っていない

落ちてきた爆弾の中に入っていた液体をもろにかぶった


手品を応用した、俺の忍術、高速アイテム術だ



ボオォォォーーーーーー!


「なっ…!?」



突然、マサカドの上半身が激しく燃え上がる

俺が投げつけた自己生成爆弾はサラマンダー


空気と触れることで激しい燃焼を起こす液体タイプの焼夷弾だ



Bランクの闘氣(オーラ)に対してはダメージが無いかもしれない


しかし、燃焼とは酸化という現象

燃焼には周囲の酸素を使うのだ



「ーーーっ!!」


マサカドが暴れる

マサカドの上半身が激しく燃えているため、酸素が入って来なくなる


しかも、無理に吸えば高熱の空気を吸い込むことになり、気管支にダメージを与えることになる



俺は深呼吸を一回して、トリガーの深度を抑える

ここからは思考力と冷静さを重視する


トリガーとはただの特性

制御しなければ意味がない



くそっ…、右腕が痛ぇ


俺は手で無理やり千切れた場所を抑えつけ、カプセルワームを貼り付ける

回復薬をかけ、ナノマシン群の回復を促進


ヴァヴェルで加圧してわきの下の動脈を抑え、止血は済んでいる



「ラーズ! 無事か!?」

無線でジョゼが呼ぶ


「あぁ…なんとかな。負傷したから一旦離れる」


逃げ切れればだけどな


「すぐに離れてくれ、ルイとコウのいる方向に誘導する! 漆黒の戦姫が到着したぞ!」


「…了解」



そうか、フィーナが到着したか


それなら俺の出番は終わりだ

もうできることは何もない


もう一度斬り合ったら、間違いなく殺される

俺はこの隙にさっさと退散する



「お前の相手が着いたってよ。じゃあな」


俺は、悶えているマサカドに声をかけて、エアジェットで全力で逃げ出した




マサカド 六章 ~38話 発掘作戦3

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